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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
二章

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242/383

233・二百年前からずっと──

()()がなにも語らぬからだ!」



 王城に響き渡るような大きな声。


 天まで突き抜けんばかりの叫びに、ファーヴの動きが止まります。


「どうして! 我に相談しなかった! 二百年前も喋れば良かったではないか! 恋人のこと──そして長命竜との対立のこと! そうすれば、我だって汝を助けていた!」

「俺の想いなど、お前には分からぬ!」


 ファーヴが地面を蹴り上げます。


 一瞬姿が消失したかと思うと、次の瞬間にはドグラスの前に現れ、再び激しい剣戟が始まりました。


「俺の方こそ問う! どうして、俺の想いを分かってくれないのだ! お前は大事な友だ! だからこそ、友を巻き込みたくなかった! お前と一緒でも、アルターには敵わなかった! 俺一人で解決するしかなかったんだ!」

「この自信過剰め! その傲慢さのせいで、二百年前にも汝はアルターの前で膝を突いたのだ!」


 今までの洗練された二人の動きは、まるで子どもの喧嘩のように変わっていました。


 お互い、剣に感情を乗せ、本音を吐露しながら力いっぱいに振るいます。


「そして二百年の時を挟み、結局我らを巻き込んだ!」

「そのことは、すまなく思っている! だからこれが終わったら、どんな償いでも……」

「違う違う違う! 我が汝に言ってほしい言葉は、そうではない! 感情をぶつけろ! 汝が言うべき言葉は謝罪ではない! 心から叫べ!」


 ドグラスの言葉に呼応し、ファーヴは表情を引き締めます。


 一旦、二人の間の距離が空く。


「ならば言う!」


 ファーヴは一度すーっと大きく息を吸い、ドグラスに向かって駆け出す──っ!



「俺を助けてくれっ! ドグラス!」



 その懇願の一言とは裏腹に。

 今まで見た中で最高の一撃が、ドグラスに放たれます。


 叩き上げられた一撃をドグラスは受け止めますが、勢いに負け、その右手から剣が離れました。

 クルクルと宙を回転し、地面に突き刺さる剣。


「……負けか」


 ドグラスは自分の敗北を認め、地面で大の字になりました。


「ようやく言いおったではないか。その言葉を待っていた」

「……ドグラス。あらためて言う。俺を助けてくれ。俺一人ではシルヴィを救えなかった。俺にはお前の力が必要だ」

「任せろ」


 少年のような笑みを浮かべるドグラス。

 一方、泣きそうなファーヴの顔。


 表情だけを一見すると、どちらが勝者なのか分かりません。


「もしかしたら、二百年前からファーヴは心の中で、ずっと叫び続けていたのかもしれないね。ドグラスに、助けてくれ──って」

「そうですね」


 ナイジェルの言葉に、私は頷きます。

 

「ファフニール、我は弱くなっているか?」


 ドグラスがファーヴにそう問いかけます。


「……そうだな。動きは昔と比べて洗練されていたが、ドラゴンとしての力強さがない。しかし再度、お前と剣を交えて、分かったことが一つある」

「それはなんだ?」


 ドグラスが続けて教えを請うと、ファーヴは意味深な表情をして語り始めました。


「これは仮定なんだが──この国に来てから、お前は人間の姿でいることが多いのではないか?」

「正解だ。市街でドラゴンの姿になっては、無用な騒ぎを生むからな。最初は嫌々だったが……今では、この姿の方が好ましいとすら思っているよ」

「それがお前の弱くなった理由だ。人の姿でいる時間が長すぎて、ドラゴンの血が薄まっている。ドラゴンにとって、己が血は力の源だ。おそらく、一度目のアルターがお前を見て『半人』と言ったのも、それが理由だと思う」


 聞こえてくる言葉に、私とナイジェルもお互いに顔を見合わせて、言葉を失います。

 私達では思い至らないことでした。


 ですが、ドグラスの本来の姿はドラゴン。

 それを魔力で無理やり変えるわけですから、なんのリスクもないと考える方が不自然だったかもしれません。


「なら、我はどうすればいい?」


 ドグラスが問いを飛ばします。


「そうだな……強力なドラゴンの血を直接体内に取り込む必要がある。ドラゴンの血は芳醇な魔力で満たされているからな。俺のもので事足りればそれでよかったのだが、まだ足りない。もっと強いドラゴンの血を摂取するのが必須だ」

「しかしそれをしているだけの時間はない……ということだな」

「ああ」

「…………」


 ファーヴの言葉に、ドグラスは考え込みます。


 ドグラスが弱くなった理由については判明しましたが、根本的な解決にはなりませんでした。


 だけど──それ以上の収穫がありました。


 ドグラスのすっきりした顔を見ていると、私はそう感じます。


「……分かった。助かる。では──行くとするか。エリアーヌとナイジェルにも、無駄な時間を取らせてしまったな」

「大丈夫だよ」

「そんなことよりお怪我はありませんか?」

「怪我? このような児戯で、我が怪我をするはずがないだろう! ガハハ!」


 勢いよく立ち上がり、豪快に笑うドグラス。

 私は彼の元気そうな姿を見て、ほっと安堵の息を吐きます。


「ファフニール──いや、ファーヴ、頼りにしているぞ」

「それは俺も同じだ」


 そう言って、ドグラスとファーヴは拳を突き合わせました。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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