表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

217/381

208・災厄の襲来

「これが……ドグラスが語ってくれた、ファーヴの真実です」


 語り終えた私は一息吐き、あらためてナイジェルの顔を正視しました。


「そんなことが……」


 予想だにしていなかった事実に、ナイジェルは驚いているよう。


「ファーヴの正体もだけど、大昔にそんな悲劇があったことにも驚きだよ。他者を黄金に変える……か。そんなすべは存在するのかな?」

「私は聞いたことがありません。それに仮にファーヴがその術を使えたとして、どうしてベルカイム王国で披露しなかったのでしょうか?」

「なにか力の制限があったとか……? それとも、ドグラスの見間違いでファーヴはそんな力を{使うことが出来なかった}とか。どちらにせよ、疑問は多いね」


 とナイジェルは難しそうな表情を作ります。


「とはいえ、ファーヴが私達を助けてくれたことは事実です」

「うん、その通りだ」

「敵意を抱いているものとは思えませんが──ドグラスはファーヴを、とても警戒していました。嫌な予感がします」


 ドグラスにしか分からないこともあるのでしょう。

 私達はもう一度ファーヴに会い、彼と話し合わなければならないかもしれません。


「僕もエリアーヌと同じだよ。ファーヴともう一度会いたいね。感謝も伝えきれていないんだし」

「あなたも交えて、ドグラスともう一度話をしてみましょう。ファーヴに会う手がかりが閃くかも──」


 と言葉を発しようとした時でした。



 ──ざわっ。



 周囲の空気が変わった。

 その微細な変化にナイジェルも気付いたのか、彼も身構えました。


「一体なにが……」


 疑問が浮かび、顔を上げます。



 ──月の光が何者かに遮られ、夜の闇が一段と濃くなっていました。



 あれは……。


「エリアーヌ!」


 考えていると、ドグラスがバルコニーに飛び込むように姿を現します


「ドグラス! これは一体──」

「ヤツだ」


 ドグラスは拳を強く握り、空を見上げてこう言います。


「──ファフニールだ」




 夜空を滑空する黒いドラゴン。

 その目は赤く光っており、見ているだけで体がすくんでしまいました。

 城内の人達は突如出現したドラゴンに対応するため、慌ただしく動いています。


 私とナイジェルは王城の屋上──王都で最も空が近い場所まで移動して、ドラゴンを見上げます。

 するとドラゴンは私達の前で止まり、目線を合わせました。



『聖女よ』



 鼓膜を震わせる声。

 私はそれを聞き、確信に至ります。


「やはり……ファーヴですね」

『そうだ』


 とファーヴからの返事。


 先日、ベルカイム王国で『まあお前には俺のことなど、分からないだろうな』と寂しい顔をして言った、彼の顔が頭に浮かびます。


「なんのつもりだ?」


 次にドグラスが問いを投げかけます。


『迎えにきた』

「誰をだ」

『決まっている。そこの女──聖女だ。お前は俺と一緒に来てもらう』


 一方的な通告。

 これにより、今まで抑えていたドグラスの怒りが一気に爆発する。


「ふざけるな! どうしてエリアーヌが──」

「ドグラス、私にもファーヴと話をさせてください」


 今にもドラゴンの姿になって飛び立ちそうなドグラスを、私は手で制します。


「随分勝手な申し出ですね。こんな遅い時間に……しかも場所も告げずに、レディーを誘うのは無謀すぎるのでは?」

『ふんっ。面白ことを言う聖女だ。そうだな、お前は──』


 ファーヴが言葉を続けようとしますが、ドグラスが私を守るように一歩前に出て、話を遮ります。


「エリアーヌ、これ以上こやつの言葉に耳を傾ける必要などない。どうせ、ろくでもないことを考えているに決まっている」

『俺も嫌われたものだな。まあ……言っても、信じてくれるとも思っていなかったさ。しかし俺にも{時間がない}。無理やりにでも連れていくだけだ!』


 そう言って、ファーヴはその口を開きます。


 口内に黒い魔力が集まっていく。

 そして──発射。一瞬、王都を覆い尽くす光が発せられたかと思うと、漆黒の炎の波動が私達に向けて放たれました。


 しかし。



「やはり、結界に防がれるか」



 ファーヴから放たれた炎は、王都に張られていた結界に阻まれます。

 私は始まりの聖女の力を得て、世界各国の街や村に結界を張っています。

 中には結界を張ることを拒んだ国もありましたが──もちろん、リンチギハムの王都も例外ではありません。


 邪悪なものを退ける完全な結界は、魔族ですら突破することが出来ない。

 未だにファーヴが強硬手段に出ず、王都の上空で滑空しているのは、結界を壊すことが出来ないからでしょう。


「偉そうなことを宣ったくせに、汝の力はこれしきか?」


 ドグラスが鼻で笑います。


「エリアーヌの結界は完璧だ。我とて、この結界を壊すことは出来ない。この結界がある限り、汝はエリアーヌに指一本触れることなど出来ぬぞ?」

『確かにそうかもしれないな。だが──』


 ファーヴは私達から視線を外し、郊外に顔を向けます。


『街の外なら? なにも国民全員が街の中に引きこもっているわけではないだろう。聖女が出てくるまで、そいつらを根絶やしにしようとしても面白いかもしれぬな。俺と聖女の我慢比べか』

「やはり……汝は昔の災厄を再現しようとしているのか。また二百年前の地獄を再現するつもりか?」

『…………』


 ドグラスの問いに対して、ファーヴは閉口します。


「いいだろう。我が汝の相手になってやる。汝が他の人間に手出しする前に、我の手でその命を終わらせてやる」


 ポキポキと拳を鳴らすドグラス。


『……聖女を連れ去る前に、まずはお前から始末しなければならないようだな』

「よく分かっているではないか。せっかく、二百年ぶりに戦うことになるんだ。ここでは街に被害が出るかもしれぬし……{いつもの場所}を戦いの舞台としよう」

『いつもの場所──か。くくく、なるほど。面白い。俺も横入りが入るのは本意ではない。お前の誘いに乗ってやろうじゃないか』


 そう言って、ファーヴは夜空に飛び立っていきました。

 あの様子だと、ドグラスの言う『いつもの場所』がどこなのか、分かっているみたい。


「エリアーヌ──少し待ってろ。すぐにヤツとの因縁にケリをつけて、こっちに戻ってくる」


 ドグラスもすぐさま彼の後を追いかけようとします。


 だけど。


「待ってください」


 そんなドグラスは私は呼び止めます。


「なんだ、エリアーヌ。止めるつもりか? 無駄だ。エリアーヌになにを言われようとも、我はファフニールと決着をつける」

「いいえ、違います」


 今にもドラゴンの姿になって飛んでいきそうなドグラスに、



「ドグラス、お願いします。私も連れていってください」



 覚悟を決めて、私はそう宣言します。


「なっ……! 正気か? エリアーヌがわざわざ出ていく必要など、どこにもない。ここは我に任せて──」

「あなた一人には任せられません。それに……あなたは必要ないと言っていましたが、やっぱりファーヴの話をもっと詳しく聞くべきだと思うんです」

「急に現れて、街に向かって炎を吐くようなヤツの言葉をか?」

「ええ。それに──」


 私は先ほど、ファーヴが手加減しているように感じました。

 仮に結界が壊れたとしても、街に被害が出ないような。


 普段のドグラスならそのことに気付けたと思いますが、彼はファーヴを前にして冷静さを失っています。

 頭に血が上っている彼とファーヴを二人きりにさせた方が、なにか起こりそうで心配です。


「エリアーヌ、僕も行くよ」


 ナイジェルも一歩前に出て、そう言ってくれます。


「汝らは二人揃ってバカか!? 愚策だ!」

「あなたの言う通り、私自らが危険に飛び込む必要はないかもしれません。だけど……私は知りたい」

「知りたい?」

「はい。ベルカイム王国でドグラスに出会った彼は、とても寂しい目をしていました」


 どうして、あんな顔をしたのか。

 先日からファーヴの表情が頭に焼きついて取れない。


「彼にもなにか事情があるのかもしれません」

「このままじゃ分からないことばかりで、なにも手の出しようがないからね」

「……ああ! くそっ!」


 ドグラスは頭を掻きむしり、こう続けます。


「また汝らのお人好しが発動したのか!」

「お人好し、上等です。ならば、こうなった私達を止めるのは不可能だってことを、ドグラスも知っているでしょう?」

「今まで散々、似たような場面を見てきたからな。ここで我が汝らを置いていっても、勝手に付いてくるだろう」

「その通りです」

「強かな聖女だ。だが、そういうところに我は惚れ──」

「え?」

「な、なんでもない」


 ぷいっと視線を逸らすドグラス。彼がなにを言いかけたのか分からず、私は首をかしげます。


「まあ汝ら二人の戦力は、我にとっても心強いことは事実だ。付いてこい。我がファフニールまで汝らを導こう」


 そう言ったドグラスの体から光が放たれます。

 光が消えた頃には、ドグラスはドラゴンの姿になっていました。

 私とナイジェルはお互いに顔を見合って頷き、ドグラスの背に乗ります。


 私達を乗せたドグラスは両翼を広げ、ファーヴを追いかけて飛び立ちました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆☆2027年アニメ化決定!☆☆

☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

シリーズ累計145万部御礼
Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1103
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000355043

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新7巻が発売中!
hev6jo2ce3m4aq8zfepv45hzc22d_b10_1d1_200_pfej.jpg

☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ