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155・彼女のことは嫌いだった。

 その頃、ベルカイム王国では……。


「そうだったのね。エリアーヌとナイジェルの妹が……」


 クロードから話を聞き、レティシアは表情に影を落とす。


「ああ……どこを探しても見つからないらしい。ドグラスの話だと、《白の蛇》という邪神の仕業のようだが……どうやって《白の蛇》のところに行けばいいのかも、分からないみたいで……」


 と語るクロードの顔も辛そうだった。


 エリアーヌとセシリー消失の一報を、クロードはドグラスから聞いていた。

 なにか知っていることがあれば──ということだったらしい。しかしクロードではその助けになれなかった。

 ちなみに……ベルカイムの上空にドラゴンが現れたことによって、王都はちょっとした騒ぎにはなったが──それはまた別の話だ。


「エリアーヌが張った結界はまだあるのよね?」

「うん。だからドグラスは、まだ彼女が死んでいるわけではないと判断しているみたいだが……」

「いつ彼女の身になにかあるのか分からない。そういうことね」

「…………」


 クロードはなにも言わないが、その表情を見ているだけで答えは分かりきっていた。


(ほんと、あの子は世話が焼けるわね)


 レティシアは心の中で悪態を吐く。


 エリアーヌのことは大嫌いだった。

 ちょっと天然ですぐに人を助けようとする。そして気付けば、彼女の周りには人がいる。

 それはレティシアにはない才能だった。


 レティシアは根本的なところで、人を遠ざける傾向がある。

 仮面を被ってぶりっ子していた時期も、無理をしていただけだ。元来のわたしはひどく人見知り──ということをレティシアは自覚していた。


(だけどエリアーヌはそんなわたしに、笑顔で接してくれた)


 最初は戸惑った。

 魔王騒ぎの時にちょっと力を貸してあげたとはいえ、それで今までレティシアが彼女にしてきた仕打ちが帳消しになるわけではない。


 だからこれで縁が切れるものだと思っていたが──違った。


 定期的に開いているエリアーヌとのお茶会。

 これは元々、エリアーヌから言い出したものだった。

 けれどいつの間にか、エリアーヌとやるお茶会を楽しみにしている自分に気付いた。彼女と他愛もない話をするのが楽しかった。


(わたしみたいな女が、こんな普通の幸せを得られるだなんてね。昔のわたしからでは想像出来ないわ。だから──)


 とレティシアは目の力を強いものとし、クロードを見る。


「わたし達も力になりましょう。エリアーヌとナイジェル殿下の妹を、なんとしてでも探し出すのよ」

「もちろんだ! しかし今頃、ドグラスやナイジェルは血眼になって彼女達を探しているだろう。それでも見つからない。だったらボク達はなにをすれば……」


 クロードが不安を吐露する。


「そうね……ドグラスから聞いた話を、もう少し詳しく聞かせてくれる? 彼女達が消えた時、なにがあったのかを」

「あ、ああ!」



 クロードはレティシアに詳しく説明する。



「…………」

「どうだ? なにか分かったか?」


 とクロードが期待を込めて、レティシアの顔を見つめる。


「……いえ、分からないわ。今のところはね」

「そうか……しかし! 諦めるわけにはいかない! ボクは他の者にも話を聞いてくる。彼女達が見つかる手がかりを得られるかもしれないからな」


 そう言って、クロードが部屋を後にした。


「……けど、望みは薄いでしょうね。ドグラス達にも分かんないんだから」


 しかしああして諦めず、悩む前にまず行動出来るところが、彼の良いところだと思った。


(だから、あいつのことが好きになったんだけどね……って惚気てる場合じゃないか)


 レティシアは自分の部屋に帰り、とあるぬいぐるみを手に取った。

 それはレティシアの姿をしたぬいぐるみだ。


「やっぱり……このぬいぐるみが気になるのよね」


 このぬいぐるみのモデルとなった二人が、示し合わせたかのように消えてしまった。

 なにか関係しているように思えるのだ。


「うーん、なんか嫌な感じはするんだけど……専門外だから分からな──えっ!?」


 その時。

 レティシアのぬいぐるみが光を放った。

 その光を見ていると、意識が引っ張られていく感覚があった。


「な、なによこれ!?」


 すぐさまレティシアはぬいぐるみを手放す。


 しかし──遅かった。


 ぬいぐるみから放たれる光はさらに強くなっていき、目の前が真っ白になったかと思えば──意識が途絶えた。

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