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無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第二章 邪悪な神々
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天の神官

第七十二話。ついに、登場

 (つや)やかな金髪を風にたなびかせ、瞳は澄み切った碧。整った顔立ちの美青年が神官達を連行する行列の前に現れた。

「私は天の神官アンジュ」

 一行が立ち止まったのを確認すると、青年は静かに名乗りをあげる。

「フェシーをこちらに渡して頂けますか?」

 儚げな微笑みを浮かべ、アンジュは手を差し出した。

「そうはいきません」

 アンジュに向かい合うのは、一行の先頭にいたセイントだ。

 金髪の神官と純白の聖騎士が向かい合う。

 セイントは剣を手をかけ、その後ろでは兵士達が各々の武器を構えた。

 一方で天の神官アンジュは武器も構えずに、手を差し伸べたまま動かない。

 沈黙の中でセイントは距離を少しずつ縮めていき、兵士達もアンジュを囲むようににじり寄る。

 一触即発。高まった緊張感を壊すように、黒ローブが躍り出た。


「少し待って欲しいのだガ、良いかね?」


 アンジュとセイントの間に現れた黒ローブは、神官ではない。虫を模した仮面をつけたそれは、傭兵団のボスだ。

「何のようかな?」

 アンジュはセイントから視線を外し、ボスのほうに向き直った。それでも武器を構える気配はない。

「我々の仕事は護送の護衛だガ、敵ガ現れたのなら倒すのガ仕事だと思うのだよ」

「つまり、私の邪魔をすると」

「そういうことだガ」

「いいでしょう。あなたの相手をしてあげますよ」

 アンジュの微笑が、不敵な笑みに変わった。

「相手をするのはカイザスだ」

 ボスが一歩後ろに下がり、入れ替わるようにして甲冑の男が前に出る。

「我々は先に進むガ、構わないかね?」

「どうぞ。止めはしませんよ」

「カイザス。あとは任せるガ、負けはしないだろう?」

 カイザスは小さく頷いて、武器を構える。どこから取り出したのかわからないほどの、大きな鎌を。

「セイント殿。進みたいと思うのだガ、良いかね?」

「え? あぁ、そうですね」


 ボスに連れられて、セイント一行はエース城に向かう。

 その姿が見えなくなってから、カイザスは駆け出した。

 大鎌を真横に構え、加速。一瞬で間合いを詰めて、大鎌を薙ぎ払う。

「魔力での加速ですか」

 アンジュはその斬撃を紙一重で(かわ)した。

「変わった力を使いますね」

 回避はぎりぎりだったというのに、アンジュは落ち着いている。

「おっと」

 カイザスは大鎌の向きを変えて、踏み込みながら再び大鎌を薙ぎ払った。

 踏み込みも薙ぎ払いも魔力で加速させた高速の一撃だ。

 それを、アンジュは少し驚きながらもかわしてみせた。

「話をする気はないのですか?」

 困ったような苦笑いを浮かべて、アンジュは一言も発さないカイザスに問いかける。

 それに対するカイザスの答えは、無言で薙ぎ払われる大鎌だ。

 アンジュは今までと同じように(・・・・・・・・・)大鎌を紙一重で避ける。

「もしかし、って!」

 続けて話始めようとするアンジュに対して、カイザスは間髪をいれずに大鎌を薙ぎ払った。会話をする気がないという無言のアピールだ。

 ひと振り目は逃げられたが、勢いを殺さずに大鎌の向きを反転させ、さらに加速させて振り払う。

 それを三往復程したところでカイザスの動きが止まった。

 加速魔法(アクサ)ほどの加速ではないが、|魔力で加速をした攻撃を紙一重とはいえ、(かわ)し続けるのは普通の反射神経では不可能だ。

 しかも、加速し続ける大鎌の一撃を、同じくらいの間合いで避けている。

「どうかしましたか?」

 アンジュは大鎌を振り切ったまま動かないカイザスに攻撃は加えず、声をかけた。

 答えは、ない。

 それは決してカイザスに余裕があるからではなかった。

 攻撃が当たらない、攻めきれない、勝てない、どうしたらいいのか。カイザスは声に出さないながらも、大いに焦っていた。

「答えてはくれないんですね」

 カイザスの内心を知る由もなく、アンジュはため息をつく。

 それから、カイザスに向かって一歩踏み出した。

 思わず大鎌を薙ぎ払うカイザスだったが、向きを変えていない大鎌はただ後ろ向きに刃のついた太い棒でしかない。

「終わりにしましょうか」

 アンジュは棒と刃の境目を掴み、破壊した。

 さらに一歩で距離を詰めると、腹部に拳を叩き込む。が、

「あらら」

 負けたのはアンジュの拳だ。それも甲冑の硬さに弾かれたのではなく、拳に無数の切り傷をいれられた上で吹き戻されたのだ。

 風刃甲冑。風刃大魔法(ヴェリナーファ)の力を応用した甲冑型の魔法機(ギフト)だ。無計画に力を発動させているとすぐに魔力が枯渇してしまう代物だが、カイザスは必要な時に場所を絞って魔力を注ぐことでこの魔法機(ギフト)を使いこなしていた。

 ボスが負けないだろうと判断した理由。それは、使いこなせれば圧倒的な防御を誇る甲冑魔法機(ギフト)使いこなせるやつ(カイザス)が使っていたからに他ならない。

 しかし、負けないだけで満足出来るカイザスではなかった。カイザスは刃のなくなった大鎌を捨てて、アンジュへ殴り掛かる。

 その拳にも、風の刃を纏うことが出来れば、カイザスには勝てる可能性があったかもしれない。

「攻撃には使えないようですね」

 アンジュは無事な右手でカイザスの拳を受け止め、投げ飛ばした。

 緻密な魔力制御が必要となるがゆえに、カイザスは攻撃をしながら魔法機(ギフト)を発動させることは出来ないのだ。

 とはいえ、防御面だけでも出来るだけ桁外れの魔力制御能力だと作成者は評していたが。

 カイザスが立ち上がると、アンジュは錫杖を持って、にっこりと笑みを浮かべていた。

「お手本を見せてあげましょう」

 アンジュが錫杖を持った腕を真横に突き出してから、一歩の踏み込みで距離を詰める。

 そのまま錫杖を薙ぎ払う動作は、カイザスの最初の攻撃をそっくりそのまま真似た動きだ。

 違うのは攻守と、守り側が回避ではなく防御を選んだ点だ。

 カイザスは風刃を発動させて、錫杖を迎え撃つ。

相殺魔法(ルーロス)

 しかし、風刃は掻き消され、

常闇(ダーク)風切魔法(リーファ)

 風を帯びた錫杖により、甲冑が割れ、

魂倒(こんとう)

 割れ目に突き刺された指によって、勝負は決した。カイザスが倒れる。

 意識こそ失ってはいないが、動くことは出来そうにない。

「指では足りませんね」

 アンジュは、なぜかとどめを刺さずに立ち去った。

 敵に負けつつも生かされ、役目も果たせず、動けもしない。

 カイザスは無言で拳を握りしめた。

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