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無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第二章 邪悪な神々
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覚悟を決めて

第三十話。成し遂げるには覚悟が必要。

 狼刀(ろうと)が目覚めた場所は城の大広間――ではなかった。どこまでも続く白い部屋と、その中を漂う天使。

 転生の間。そう呼ばれる空間だ。

 狼刀が確認し終えるのを待っていたように、天使――マナティが声をかける。

「生き返れるからって、簡単に死にすぎじゃない?」

 狼刀は言い返そうとするが、言葉が出ない。

「無制限に生き返れるわけじゃないんだからね?」

「わかってる」

 マナティは小さくため息をついた。

「起点は更新しておくから、今度こそちゃんとやってよね」

「待ってくれ」

 腕を動かし何かを始めようとするマナティを、狼刀が止める。マナティは訝しげな視線を狼刀に向けた。

「色々と説明してくれないか。俺はこの世界についてわからいことが多すぎる」

 マナティは何も言わない。

「説明してもらえないなら、俺はもう何もしない。生き返らせもらわなくて結構だ」

 半分は嘘だが、これくらい言わなければ説明してもらえないだろうと狼刀は思った。

 マナティは答えない。

 目を閉じて、何かを考えるように頭に手を当てている。

 長い沈黙。

 狼刀は耐えきれなくなって何かを言おうとするが、言葉が出てこない。いまさら前言を撤回したところでどうなるというのだ。下手をすれば、何も教えてもらえず、生き返らせてももらえないかもしれない。

 狼刀はマナティという存在についても、ほとんど何も知らなかった。

「三つだけ」

 マナティが呟く。

「え?」

「だから、三つだけ質問に答えてあげるって言ってるの」

 マナティは指を三本立てて、突き出した。

「でも、答えれないときはノーカンだから。スリーサイズとかもダメだから!」

 三回しかない質問のチャンスをスリーサイズの確認に使う気はなかったが、狼刀には一つだけ確認しなければならないことがある。

「嘘はつかないよな?」

「もちのロンですよ」

 得意げな顔で無い胸を張る姿は、いつも以上に子供っぽく見えた。その言葉を鵜呑みにするつもりはないが、これであからさまな嘘はつかないはずだ。

「じゃあ、まず一つ目の質問だ」

 さっきのは質問じゃない。というのを強調するように狼刀は言った。

「どうぞ」

 マナティがそのことに気付いた様子はない。

「この世界のこと。生き物、道具、魔法。教えてくれ」

 一つと言いながら、狼刀は複数のことについて聞いた。

「この世界は、あんたの元の世界で例えるなら、ファンタジー世界ってところね。生き物は、魔族と人間? あと、細かいのは知らない。道具って、魔法機(ギフト)のこと? それとも、宝具(ほうぐ)とか神器(じんき)? 魔法は魔法でしょ。ファンタジー小説とかゲームとかで見たことあるでしょ」

 マナティは動き回りながら、律儀に全部答えた。

「じゃあ、二つ目の質問だ」

 狼刀は考えるのを後回しにして、次の質問をする。ゆっくりと時間をかけていては、マナティが気づきかねない。

「俺は今どういう状態なんだ? どうして生き返れる」

「あんたは人形に入った魂的なものよ。細かい原理は知らないわ。戻ってやり直せるのは、時の(くい)を使ってるからで、生き返ってるわけじゃないわ」

「時の杭?」

 聞きなれない単語に狼刀は思わず聞き返した。

「あたしの使える力の一つ。条件を満たすと発動して、対象者の記憶以外の全てを打ち付けた時まで戻すの。回数制限があるから、使い切ったら転生の間(ここ)に呼び戻して杭を更新するの」

「三つ目の質問だ」

 時の杭についての質問が三つ目のような気もするが、狼刀は強引に話を進めた。

「どうぞ」

 マナティはそのことについて追及してこない。気づいてないのか、許容しているのか。きっと前者だろうとは思ったが、正解はわからない。

「時の杭はいつでも更新できるのか?」

「まあ、やろうと思えば」

「やり方は?」

「何か、合言葉を決めれば、かな」

 どこか歯切れの悪いマナティ。

「合言葉か。何でもいいのか?」

「何でもどうぞ」

 少し考えて、狼刀は合言葉を決めた。

「セーブポイント更新。で」

 単純で忘れない。それでいながら普段は使わない言葉。普段使う言葉を避けるのは、誤って言ってしまう可能性があるからだ。

 マナティは頷くと、手を振り上げた。

「じゃあ、起点更新するから頑張って」

「いや、待ってくれ」

 狼刀は手を開いて、前に出した。要するに、ちょっと待ってのポーズである。

「今は更新しなくていい」

「え、なんで?」

「死ぬ気はない。だからこそ、死ねない戦いがしたくなったんだ」

「ほえ?」

 頭に疑問符を浮かべるマナティに背を向けて、狼刀は歩き出した。床を踏み締めているという感覚はないが、マナティとの距離は確実に開いている。

「それくらいでやらなきゃ、リヴァル・ジャドレイ(あいつ)には勝てない」

 決意を込めて一歩を踏み出すと、地面に足が着いたような感覚があった。白一色の世界が、僅かに色を帯び始める。

 細かい理屈はわからないが、行けると、狼刀は思った。

 さらに踏み出した足が、地面を掴む。

「勝ってくる」

 三歩目を踏み出した瞬間、世界は色を取り戻す――


 ◇


「あれ? あたし三つ以上答えてない!?」

 

 狼刀のいなくなった空間で、マナティはようやく事実に気が付いた。

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