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無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第二章 邪悪な神々
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準備を整えて

三十一話。戦いの前には準備が必要。

「くそっ……誰か、誰かいないのか」

「誰でもいいんだ……」

「城にあの人より強い人! なんて……」

「強い人、強い人、強い人……」

 城の大広間で目を覚ました狼刀(ろうと)は、王の間へ向けて走り出した。

 リヴァルに会わないように、人にぶつからないように、周りに注意を払いながらも、走る。王の間の手前まで到着すると、狼刀は横から走ってくるだろう人物を待った。

 やがて、こちらに向けて走ってくる青年――スクラヴォスを見つけ、声をかける。

「すいません。ちょっといいですか?」

「え?」

 スクラヴォスは驚いたように周りを見回して、こけた。彼が転ぶのは避けられない展開なのだろうか。もしかしたら、狼刀がいなくても転ぶのかもしれない。

「大丈夫ですか?」

 狼刀がスクラヴォスに手を差し伸べる。前回とはちょうど逆になる形だ。

「あ、ありがとうございます」

「いえ。それよりも、一つご相談したいことが」

 スクラヴォスがその手を取って立ち上がると、狼刀は不敵に笑いかけた。

「相談ですか」

「ええ。実は、兵士長のリヴァル・ジャドレイに裏切り疑惑があるんですよ」

「まさか……いや、それよりあなたは?」

「この城を救いに来た勇者だ」

「勇者……?」

「信じなくてもいい。ただ、チャンスをくれないか?」

「聞いてから考えます」

 スクラヴォスは狼刀を見据える。真っ直ぐな瞳は、リヴァルよりよっぽど信頼が置けそうだ。

「俺は神官を倒して地下で情報を聞き出します。そこに兵士長が来た時の行動を見て判断してください」

 少し考えてから、スクラヴォスは小さく笑った。

「いいでしょう。一度だけあなたを信じます」

 迷いながらでも頷くということは、心当たりのようなものがあるのだろうか。と、確認するのは後回しだ。


「そのセリフはぁ、聞き飽きた――」

「俺が相手だ! 神官!」


 王の間に飛び込み、ブラストの言葉を遮るように狼刀が叫んだ。ブラストは狼刀を睨みつけ、王や兵士達は驚いたような表情を浮かべている。

「なんだぁ? てめぇはぁ?」

「俺は結城(ゆうき)狼刀。お前を倒す男だ」

 竹刀と刀の変則二刀流。攻略法は確立済みだ。

「上等ぅ!」

 ブラストの初動は変わらない。

減速魔法(ネギア)

 魔法を発動することも、狼刀がゆっくりと動けば魔法が効いたと思って、肉食獣のような笑みを浮かべることも。

「勝負あり、だなぁ」

 悠々と錫杖を振り上げるその動作も、全く同じだ。

「ああ、その通りだ」

「なぁ……!?」

 演技を止め、素早く錫杖を巻き上げる。飛んでいった錫杖の行方など、気にする必要はない。

「ぐっ」

 ブラストは武器の回収することなく、狼刀に殴りかか――る前に狼刀が、両手に持ち替えた竹刀を振り下ろした。

 ブラストは気を失い、倒れる。

「生け捕りでお願いします。王様」

「わ、わかった」

 王は驚きつつも、兵士達に指示を出して神官を捕らえさせた。

「地下闘技場へ運んでください。あ、イソリさんもお願いします」

「はい?」

 知り合いを見つけて、狼刀は声をかける。

 イソリは何が何だかわからないといった表情だが、説明は後回し。

「それから、リヴァル兵士長殿と、回復なされたらセイント近衛兵長に来てもらってください」

「わかった。誰か、リヴァルを呼んでまいれ。それと、ミソロギ先生に」

 王は狼刀のいうことに従った。狼刀のことは全く疑ってないようだ。

「お願いします」

 やれることは何でもやる。死なないためには、やるしかないのだ。


 地下闘技場。

 裏切り者のリヴァルによって二度、殺された場所だ。次、殺されれば狼刀は死ぬ。そんな、ある意味当たり前のことを考えながら、狼刀はブラストと対峙していた。

 二人きりというわけではない。今は何もしないが、待機している人がいる。彼らの動きは今後の展開次第だが、狼刀の目的はブラストに降伏を促すことではなかった。

「リヴァル・ジャドレイについて教えてくれ」

 尋問だ。とはいえ、磔にしているだけで刀を突きつけたりはしていない。

「リヴァル・ジャドレイかぁ。そいつぁ大神官のぉ弟だぁ。兄弟喧嘩のぉ末、出てったぁらしいなぁ。どっかでぇ、野垂れ死んでぇんだろぉよ」

 意外と言うべきか、ブラストはつらつらと話し出した。

「でぇ? それがぁどぉした?」

「気にするな。もう一つ。お前の使える魔法、分裂魔法(ディジョン)について教えてくれ」

「何故ぇ知ってぇやがるぅ?」

 ブラストが顔をしかめる。見せていないはずの魔法なのだから、当然といえば当然の反応か。

「俺の力だ」

 全くの嘘ではない。

「それで、生物の複製は出来るのか答えてもらおうか」

「はっ、出来ねぇよ。外見(がわ)ぁ出来てもぉ中身のねぇ人形(にんぎょぉ)にしかならねぇからなぁ」

 吐き捨てるように、ブラストは呟く。

「いや、十分だ」

 狼刀は不敵な笑みを浮かべた。

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