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無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第二章 邪悪な神々
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いつもと違う

第二十七話。いつもと違う展開に。

「くそっ……誰か、誰かいないのか」

「誰でもいいんだ……」

「城にあの人より強い人! なんて……」

「強い人、強い人、強い人……」

 狼刀(ろうと)が目を覚ましたのは、眠りについた場所ではなかった。あえて言うならば、宴の会場。けれど、忙しなく行き交う人々の動きは、宴の後片付けなどではない。

「なんで……」

 こんな形で戻ってくるのは初めてだ。

 神官は倒した。だから、ここで死ぬはずはない。狼刀はそう思っていたし、今までもそうだった。

 だが、狼刀は死んだ。

「どうして、死んだんだ……」

 狼刀は考える。前回までは死ななかったのに今回は死んだ理由を。今までと違うことは何かと。

「神官に降伏を促したこと……なのか?」

 自然と声が漏れる。

「でも、交渉は失敗してるし、……なんで死ななきゃならないんだ? 神官の仲間だと思われた? それとも、降伏を促したこと自体が悪いことだった……?」

 思考がまとまらず、声に出していることにも気がつかない。

「誰かにとっては都合の悪いことだった? 誰にとって? 神官が寝返ると困る人……スパイ……? 内通者?」

 狼刀は周りを気にする余裕もなく、考え続けていた。

「それなら、神官が死んだのなら殺す意味は……? 復讐? それだと……今回だけってのは、不自然……だよな? 一体、なぜ……」

「少しよろしいだろうか、旅の者」

 背後からかけられた声に、狼刀の意識は現実に引き戻される。

「私は兵士長リヴァル。腕に覚えがあるなら、この城を守るために」

「案内してください!」

 この城の現状を思い出した狼刀は、リヴァルの言葉を遮って返事をした。台詞も違うし、もしかしたら話しかけていたのに気がつかなかったのかもしれない。

「お、おう。では、王の間へ」

「行きましょう!」

 であれば、急がねばならない。

 狼刀はリヴァルに先行するように走り出した。


 ◇


「なぁ? まぁだ、かかんのかぁ?」

 玉座の前に胡座をかいて座るのは、邪神教(じゃしんきょう)の神官ブラスト。彼が王にこの問いかけをするのは、すでに四度目のことだった。

「しばし、お待ち願います。今兵士――」

「そぉのセリフはぁ、聞ぃき飽きたんだぁよ?」

 王の言葉を遮って、ブラストが立ち上がる。

「いねぇんなら、無条件降伏だぁ。いいかぁ?」

「お、お待ちくだされ。すぐに、すぐに兵士が」

 王は玉座から降り、地面に頭を擦りつけた。恥も外聞も捨て、城のために頭を下げる。彼の行動は王に相応しいものだ。

 けれど、その痛ましい光景を直視出来る兵士はいなかった。

「そぉじゃねぇんだよぉ!」

 ブラストが声を荒げる。

 ずかずかと王の目の前まで行くと、錫杖を振り下ろした。

「お、王様!」

 兵士の一人が思わず声を上げる。

 錫杖は王の頭に突き刺ささていた。

「殺しちまったぁなぁ。さぁ、次はぁ、誰がぁ相手してくれるんだぁ?」

 ブラストは乱暴に錫杖を引き抜くと、血の滴る錫杖を兵士達に向けて言い放つ。

「さぁ、誰がぁ、相手をぉしてくれんだぁ?」


「俺が相手だ! 神官!」


 狼刀は王の間に入ってすぐに声を荒げた。

「なんだぁ? てめぇはぁ?」

 ブラストは値踏みするような視線を狼刀に向ける。

「俺は結城(ゆうき)狼刀。お前を倒す男だ」

 狼刀は竹刀を構えて戦闘態勢をとった。

 余計な言葉はいらない。

「上等ぅ!」

 ブラストは錫杖をバットのように振りかぶった。

減速魔法(ネギア)

 ブラストが魔法を発動させる。

 狼刀はゆっくりとした動きに変えた。

 前回のループでなんとなくで試した作戦だったが、予想以上にうまくいったため、今回も決行することにしたのだ。

「勝負あり、だなぁ」

 狼刀の前に到達したブラストが、悠々と錫杖を振り上げる。

「そうだな」

「なぁ……!?」

 演技を止め、素早く動いた狼刀が、錫杖を巻き上げる。錫杖が宙を舞い、狼刀の後方――王の間の入口近くに突き刺さった。

「くっ」

 ブラストは武器の回収を諦めたのか、拳を握り締める。

 完全に狼刀が予想した通りの動きだ。

 狼刀は振り上げた竹刀を両手で掴み、勢いよく振り下ろした。面だ。手加減のない一撃を頭に叩き込まれ、ブラストが倒れる。

 殺傷能力はなくとも、しばらく気絶させておくためには有効な一撃だ。

「生け捕りでお願いします。リヴァル兵士長」

「わ、わかりました」

 リヴァルは驚きつつも、兵士達に指示を出して神官を捕らえさせる。どこからか運ばれてきた十字架に磔にされた姿は、どことなく神様っぽい。

「地下闘技場へ運んでください。私が一人で交渉にあたります」

 狼刀はブラストが動かないことを確認してから、次の動きを提案した。もし、この中にスパイがいるのなら動くだろうと。

「わかりました。では、私がご案内いたしましょう」

 だが、リヴァルがすぐに同意したために、他の兵士は動く暇さえなかった。動かなかったという可能性もないとはいえないが、結論は変わらない。

「お願いします」

 スパイの炙り出しには失敗した。

 そもそも、戦っている途中で思いついたような作戦で捕まるくらいなら、ループを繰り返す中で尻尾を出しているはずか。

 だとしたら、見つけ出すのは至難の業かもしれない。

 裏切り者が油断するとすれば、それはどのような状況か。

 狼刀は移動しながら、次の作戦を考えていた。

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