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無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第二章 邪悪な神々
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生き残るために

第五話。打倒神官を目指して。

「くそっ……誰か! 腕に覚えのあるもの」

「誰でもいいんだ。誰か」

「城にあの人より強い人なんて……」

「強い人、強い人、強い……」

 城の大広間のような場所をせわしなく行き交う人々。四方八方から聞こえてくる慌てたような蝉騒(せんそう)も変わりない。

「そこの旅の者」

 声をかけられる流れも、変わらなかった。

「突然、すまない」

 声の主は兵士長リヴァルである。筋肉質で屈強な肉体を持ちながらも、腰には剣を携えた大男。重たい戦斧を軽々と持ち上げていたことから、相当な力を持っていると思われる。

「私は兵士長リヴァル。腕に覚えがあるなら、この城を守るために協力してほしい」

「わかりました。何をすればいいですか?」

 狼刀(ろうと)は即答した。一つだけの解決策を見出して。

「おお、ありがたい。では、王の間へ」

 リヴァルと共に、狼刀(ろうと)は王の間へと向かった。


「お待ちくだされ」


 振り下ろされていた錫杖は、王の頭のすぐ横に突き刺ささていた。何度繰り返してもギリギリの光景である。

 リヴァルの後ろにいる狼刀には見えていなかったが。

「約束の御仁をお連れした」

 リヴァルが横へ移動すると、狼刀の視界に倒れた王が映るのだ。

「なぁんかのぉ間違いだぁろぉ? こぉんな奴がぁ最強(さぁいきょぉ)?」

 ブラストは乱暴に錫杖を引き抜くと、錫杖を狼刀に向けて言い放つ。

「怪我じゃぁすまないぜぇ? おうちにぃ帰んなぁ」

「剣を貸してもらえますか?」

 狼刀はブラストを無視し兵士長へと声をかけた。

「無視してんじゃぁねぇよ!」

 思わず叫ぶブラスト。

 狼刀はリヴァルから剣を受け取ると、重さを確認するように軽く振る。リヴァルの持ち物だからという不安はあったが、特別重いということはない。

「俺は結城(ゆうき)狼刀。かかってこいよ、兄ちゃん」

 狼刀は挑発するように笑う。

「あぁ? いいぃ度胸じゃぁねぇかぁ!」

 言うが早いか、ブラストは錫杖をバットのように振りかぶった。

減速魔法(ネギア)

 魔法を伴っての薙ぎ払いを、狼刀は剣で受け止める。ブラストは押し切らんと力を込めた。狼刀は錫杖を滑らせるように受け流し、ブラストの体勢を崩す。

「そこだっ!」

「ちぃ!」

 斬撃はブラストの腕を掠めるだけに留まった。

 ブラストは逃げるように距離をとり、傷口から滴る血を舐める。その顔は苦痛ではなく、愉悦に歪んでいた。

「いってぇなぁ。だぁが、次ぁこうはいかねぇぜ!」

 錫杖を突き出して、魔法を発動。

減速魔法(ネギア)

 助走をつけて高く跳び上がると、落下の勢いを活かして錫杖を振り下ろす。

 狼刀は柄と刀の背を持って、その一撃を受け止めた。重たい一撃だ。だが、防がれたあとは大きな隙ができる。

 狼刀は錫杖の下を滑らせるようにして、剣で腹部を斬り裂いた。

「て、てめぇ。やぁじゃぁねぇか……」

 ブラストは腹部を押さえながら、錫杖を狼刀に向けてくる。瞳に宿る闘志の色は未だ健在。

 だが傷は決して浅くない。

「くっ、そがぁ……」

 ブラストは前のめりに崩れ落ちた。


 ブラストが倒れた。まだ呼吸はしているが、腹部からは血が出し続けているし、息絶えるのも時間の問題だろう。

 狼刀の勝利は誰の目にも明らかだった。


「すげーよ、兄ちゃん!」

「ありがとう、この城を救ってくれて」

「ちっ……」

「感謝しますぞ」

「悔しいけど、さすがだよ」

「近衛兵長の仇を取ってくれてありがとう」


 兵士達から賛美の声が浴びせられる。賛美以外もあるが、気にする人はいなかった。

「旅のお方よ」

 リヴァルに付き添われながら、王が狼刀のもとへやってくる。歓声を上げていた兵士達も一瞬で沈黙した。

「この城を救ってくださったこと。心より感謝しますぞ」

「近衛兵長を失ったのは痛手ですが、あなたのおかげで王が救われたことに感謝を申し上げます」

 王が頭を下げる。寄り添うリヴァルは、お礼を述べると、倒れるブラストに視線を移した。

「しかし、甘いですね」

 リヴァルは、狼刀から剣を返してもらうと、倒れるブラストの背中へと突き立てる。ブラストはうめき声をあげ、ピクリとも動かなくなった。

「この勝利を祝い、今宵は宴を開きます。ぜひ、旅のお方も御参加ください」

「……わかりました」

 狼刀は王からの誘いを了承すると、足早に王の間を後にする。誰も止めようとはしなかった。

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