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無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第二章 邪悪な神々
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伝説と現実

第四話。伝説は想像通りとは限らない。

「くそっ……誰か、誰かいないのか」

「誰でもいいんだ。誰でも」

「城にはもう……」

「強い人、強い人、強い人……」

 意識を取り戻した狼刀(ろうと)の耳に四方八方から声が聞こえてきた。城の大広間のような場所には、せわしなく人々が行きかっている。

「そこの旅の者」

 聞き慣れてきた男の声は、真後ろから聞こえた。

「突然、すまない。私はリヴァル」

 リヴァルは左目につけた眼帯が特徴的な金髪赤眼の大男だ。隻眼ではあるが、目力だけならブラストに勝っているだろう。

「腕に覚えがあるなら、この城を守るために協力してほしい」

「わかりました。何をすればいいですか?」

 狼刀は即答した。対策は考えなければならないが、断っても事態が好転するとは思えない。

「おお、ありがたい。では、王の間へ」

 リヴァルに付き添うようにして、狼刀は王の間へと向かった。


「お待ちくだされ」


 王の頭めがけて振り下ろされていた錫杖は、持ち主が声のしたほうを振り向いたため、王の髪をかすめ床に突き刺ささる。

「約束の御仁をお連れした」

 リヴァルは後ろにいる狼刀が見えるように横へと移動した。

 ブラストは狼刀を値踏みするように見てから一言。

「なぁんかのぉ間違いだぁろぉ? こぉんな奴がぁ最強(さぁいきょぉ)?」

「その前に武器を貸してもらえませんか? 王様」

 狼刀はブラストではなく、その後ろ――床に倒れ伏す王へと声をかけた。

 リヴァルが素早く駆け寄り、王に耳打ちで状況を説明する。

「わかった。我が城に伝わる伝説の武器を、そなたに託そう」

「伝説かぁ」

 王の言葉に反応したのは、狼刀ではなくブラストだった。待ってましたと言わんばかりに、嬉しそうな笑みを浮かべている。

「いいぜぇ。待っててやっからぁ、さっさとぉ持ってきやがれぇ」

「リヴァル」

「はっ。ただいま」

 リヴァルは王を玉座に座らせてから、奥の階段へと消えていった。行先は宝物庫とでもいったところか。

「伝説の武器ぃ、ねぇ」

 ブラストは錫杖をなめながら、不気味な笑みを浮かべている。鉄の味がするのだろうか。狼刀は意味もなくそんなことを考えていた。

 数分後。

 リヴァルが持ってきた伝説の武器を見て、狼刀は愕然とした。

 巨大な戦斧だ。柄の長さから考えて、両手斧ではなく片手斧。リヴァルは片手で持ち上げているが、どう考えても狼刀が扱うには大きすぎる。

「頼むぞ。旅の者」

 リヴァルから狼刀へと渡された瞬間、戦斧は床に振り下ろされた。わざとではない。重たすぎて支えきれなかったのだ。

 先端が床に深くめり込んだ戦斧は、狼刀の力では全く持ち上がらない。なんとか持ち上げようと気張っているようだが、戦斧は微動だにしない。

 王の間にしばしの沈黙が訪れた。

「ちぃ。期待ぃ外れだぜぇ」

 その沈黙を破ったのはブラストだ。声からは隠しきれない苛立ちが滲み出していた。

減速魔法(ネギア)

 魔法を放ち、錫杖をバットのごとく振りかぶる。

 狼刀は斧から手を離し、竹刀を構えた。

 竹刀であれば、ブラストの攻撃を防ぐことは造作もない。振り下ろし、突きと攻撃パターンが変化しようとも、狼刀はしっかりと捌ききった。

「つまんねぇ。もぉ死んでいいぃぞぉ」

 ブラストは距離を取ると、高く錫杖を放り投げる。

分裂魔法(ディジョン)

 錫杖は数を増し、百をも超える数となって、空を覆い尽くした。

槍時雨(やりしぐれぇぇ)

 ブラストの声を合図に、錫杖はすべて、その尖った先端を狼刀の方に向けて飛んでくる。

 狼刀はとっさに巨大な戦斧の陰に隠れた。戦斧が盾となり錫杖の雨をはじいていく。だが、所詮は伝説の武器である。伝説の防具ではない。

 一筋の亀裂が走った直後に、粉々に砕け散った。

 身を守るものを失った狼刀の体に、錫杖が突き刺さる。躱すことは出来なかった。


 伝説の武器は使えない。


 狼刀はそんな結論に思い至った。

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