ヒロイン再会
第十三話。ヒロイン再登場です。
柵に囲まれた荒野の一角にあるのは、天空民の町ワラフスだ。現在は魔王配下の魔物によって支配されているが、住民は一人しかいない。
とはいえ、その一人や入手アイテムは貴重であり、放っておくわけにはいかないイベントだ。
狼刀は三度この町を訪れ、エンペラーダイルと対峙する。
「狩りに時間はかけない主義でな。我が必殺技を見せてやろう」
一言一句違わぬセリフを言って、エンペラーダイルは両手を地面に突き刺した。攻撃方法も一切変化はない。狼刀はその攻撃を躱そうとは思わなかった。
城壁の盾を構え、エンペラーダイルを待ち受ける。
「そんな盾ごときで、我が必殺技を防げるものか」
そのセリフで狼刀は勝ちを確信した。
エンペラーダイルはその大きな顎で盾に噛みついた――否、噛みつこうとした。
狼刀が後ろに数歩下がったために、エンペラーダイルの牙は空振り。勢いを御しきれずに、盾に激突した。
エンペラーダイルが姿勢を立て直す前に、狼刀が一歩踏み込んだ。硬い盾を押しつけて、のしかかるように倒れ込む。
エンペラーダイルは、盾の下敷きになり、身動きが取れなくなった。
その隙を見逃さずに、狼刀は竹刀をその横腹に突き立てる。
「ぐあぁぁ……」
エンペラーダイルは短く悲鳴をあげて、消滅した。
町を探索すると、前回同様、住人が一人もいないのことが確認出来た。村の最奥――旱の祠にも、前回同様、旱の石が供えてある。狼刀は、石に触れることなく、空を見上げた。
天使にそっくりな少女――ドルフィンはそこにいた。
「あんた何よ」
「俺は結城狼刀、魔王討伐の旅をしてる。君は?」
狼刀は簡潔に自己紹介を行い、ドルフィンへと問いかける。狼刀は答えを知っているから、聞かなくても問題はないのだが、不自然にならないためには必要な手順だ。
ドルフィンは値踏みするように、狼刀の周りを飛び回ってから答えた。
「あたしはドルフィン。偉大なる天空民、最後の生き残りよ」
顔の造形はマナティと瓜二つ。初対面の時になぜ気が付かなったのか不思議なくらいだ。
「この町に巣くう魔物を倒してくれたことには感謝するわ。それで、この秘宝になんか用があるの?」
回りくどい説明は不要。
「協力してほしい。魔物に支配された町を救うためにその秘宝が必要なんだ」
狼刀はストレートに要件を告げた。
「わかったわ。でも、あたしがいないと使えないわよ」
その回答は予想の範囲内。狼刀にも断る理由はない。ドルフィンを仲間に加え、狼刀は町を出た。
誰もいない、無人の町を。
「さあ、行きましょう。ロート」
ドルフィンはどこか楽しそうに、笑顔で浮いていた。
てってけてー
天空民の最後の生き残り、ドルフィンが仲間になった。
所持アイテムは天空民族衣装、旱の杖、破魔の指輪。
技巧の町ネプトンは魔王配下の魔物によって支配されている。狼刀は三度その町を訪れていた。
ドルフィンにはひとまず隠れていてもらう。
狼刀が相対するのは、鎌を持った二体の骸骨――死霊騎士。手荒い歓迎だが、既に慣れたもので、狼刀に焦りはない。
隙が生まれれば、決着は一瞬だった。
「ほう。死霊騎士を倒せる人間がいるとは驚きましたねェ」
部下を倒せば親玉――鮫型の魔物が現れる。
「魔王軍では、カイザーシャークと呼ばれています。以後お見知りおきを」
丁寧に、聞きなれた自己紹介をするのは分身体。判断した基準は、両手に持った大剣だ。
「降伏する気は――」
狼刀は、分身体がそのセリフを言い終わるよりも早く、合図を出す。
「いまだ、ドルフィン!」
「りょーかい」
軽い調子で返事をすると、ドルフィンは旱の杖を天にかざした。
目の前にいた分身体が蒸発して消え、背後にあった池が干上がる。
「ほう。私の分身達を倒せる人間がいるとは驚きましたねェ」
民家の扉が開き、何度も見てきた分身体に酷似した魔物が、ゆっくりと現れた。両手で持つのは重量級の三叉槍型の武器で、体長は分身体よりも大きく、三メートルは優に超えている。
紛れもなく本体だ。
「魔王軍では、カイザーシャークと呼ばれています。以後お見知りおきを」
名乗りは相変わらず、分身体とさえ変わらないが。
トライデントを構えたその姿も、刺突の速度が分身体よりも遅いことも、前回と同じ。狼刀は余裕をもって攻撃を躱すと、背中に竹刀を突き刺した。
「ぐぅ……」
呻き声をあげカイザーシャークが消滅する
狼刀は開放された住人達から話しを聞き、眠りについた。
そして夜が明けた。
狼刀はドルフィンをおいて町を出たりしない。天空民の最後の生き残り、ドルフィンを仲間にして旅をつづけるため。より厳密に言うなら、その杖を役立てるために。
ドルフィンが目覚めると、狼刀は彼女をつれて洞窟に向かった。姫を助けるためではない。もちろん、後で助けはする。
ただ、優先順位が高いのは火の町に巣くう天軍師を倒すことだ。
一本道の明るい洞窟に、突如として分岐が現れる。狼刀はドルフィンより先に口を開いた。
「左に行くぞ。ドルフィン」
「み――」
先に行ってしまった狼刀を、ドルフィンが慌てて追いかける。
「もー、待ってよ」
一方的に結論を出して進んだ狼刀だが、ドルフィンがついてきたことを確認して、小さく安堵のため息を吐いた。




