表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第二章 邪悪な神々
115/132

不思議な話し合い

第九十三話。レッツトーキング

「なら、まず。その鎧は何と呼べばいいかな?」


 瓦礫に腰掛けたアンジュは、指を立てて、いつになく真剣な顔で問いかける。

「え……?」

 よくわからない質問だった。

「いや、秘剣(ひけん)が鎧に変わったから秘鎧(ひがい)かなとか考えてみたけど、語呂が悪いし。秘鎧(ひめよろい)とかシークレット・アーマーとかスクレ・アルミュールとか色々考えたけど、しっくり来なくてさ。その鎧って呼び方も芸がないし」

 狼刀の疑問符を質問の意味がわかってないと判断したのか、アンジュは饒舌に捲し立てる。

「何かないかい?」

 最後にそうつけ加えて、アンジュは狼刀の方を見た。

「鎧の呼び方……」

 狼刀は改めて隣に立つスペーディアの鎧を見る。

 銀の胸当て、背当て、肩当て、草摺など複数のパーツを網目状の金が繋いでるような形だ。鎧の下には純白のドレスを纏っており、どこか神秘的な雰囲気だった。

「ねぇ、あんまり見つめられると照れるんだけど」

「あ、ごめん」

 じっくり見ていると、スペーディアが頬を染める。狼刀は慌てて目を逸らした。

「その、さ。綺麗で神秘的だったから」

「ほ、褒めても何も出ないわよ」

「いや、純粋にそう思っただけで」

「そんな……」

 狼刀は鎧のことを表現したのだが、スペーディアは自分のことだと思ったらしい。だが、二人ともすれ違いに気づくほどの余裕がなかった。

「その言葉いいね!」

 突然、アンジュが指を鳴らした。

 狼刀とスペーディアが振り向くと、アンジュが得意げな笑みを浮かべている。二人が注目したのを確認して、スペーディアの鎧を指し、


「その鎧の名前は、神秘の鎧」


 そう命名した。


「異論はないですか?」

 アンジュは首を傾げ、二人に意見を求める。

「ありませんわ。それより、話し合いを続けましょう?」

 きっぱりと言い切るスペーディアに続いて、狼刀は首を縦に振った。その返事に満足したのか、アンジュは笑う。

「まずは……座りますか」

 指を鳴らし、どこからともなく椅子を召喚すると、アンジュはゆっくりと腰を下ろした。椅子は、二人の前にも現れる。

 スペーディアは躊躇うことなく座った。刀は下ろさず、体の前に構えつつ。一方、狼刀は戸惑いながらも、手に何も持たずに座った。

 面影すら残っていない荒城の一角で、椅子に座り向き合う三人。傍から見れば理解に苦しむであろうその光景を、狼刀は何の違和感もなく受け入れていた。

「さあ、質問をどうぞ?」

 アンジュはスペーディアの方を見て、問いかける。

「お前は異世界出身なのか?」

 狼刀が聞くと、アンジュは驚いたように目を丸くした。狼刀が質問したことに驚いたのか、質問の内容に驚いたのかはわからない。

「……連続してかけすぎましたか」

 ただ、目を伏せるようにして呟いた。

「ちょ、えっ? どういうこと?」

 スペーディアは狼刀の質問の意図すらわからなかったようだ。狼刀のことを知らなければ無理もない話だが。

「異世界出身かという質問でしたね。残念、生まれも育ちも死に場所も、全てこの世界ですよ」

 アンジュは至極冷静に答えた。

「さて、こちらも質問させてもらいます」

 アンジュは視線をスペーディアへと向ける。

「あなたにとってこの男はどのような存在ですか?」

「え?」

「な!?」

 予想外の質問にスペーディアが刀を捨てて、立ち上がった。耳まで赤く染め、手をバタバタとさせながら、なんとか声を絞り出す。

「……な、なんで、そんなこと。答えなきゃならないのよ……」

「答えたくないなら構いませんよ?」

 アンジュは目を細め、笑う。

「その反応が見れただけでも十分ですから」

 怪しげな笑みでもなく、悪巧みの笑みでもなく、純粋に楽しそうな笑みを浮かべていた。

「か、勝手に納得しないでくれるかしら」

 アンジュに笑われて冷静になったのか、スペーディアは咳払いをして、椅子に座り直す。

「……邪神教(じゃしんきょう)を倒すための仲間。それだけよ」

「そうですか」

 アンジュはにやにやとした笑みで頷いた。

 その態度が気に入らなかったのか、スペーディアは顔をそむける。その視線の先には、狼刀が座っていた。彼がスペーディアの返事を気にしていたこともあり、二人の視線が交錯する。

「……っ!」

 スペーディアは声にならない悲鳴をあげて、正面を向き、アンジュの視線から逃れるため、体ごと狼刀に背を向けるように動いた。

 スペーディアは自分を落ち着かせるように深呼吸。吸って、吐いて、吸って、深くゆっくり吐く。

「次は、わたくしから質問させていただきますわね」

 スペーディアは振り向かなかった。

 どうやら、質問された人が質問する流れらしい。

「あなたの目的は何なの?」

「目的ですか」

 アンジュは腕を組んで考える。そんな素振りを見せたのは、一瞬だった。

「この世で一番、大切な人の願いを叶えることですよ」

 アンジュは穏やかな笑みを浮かべる。

「そ。でも、それを叶えさせるわけにはいきませんわね」

 スペーディアは大切な人が邪神教に関わる人だと判断したのか、そう答える。普通に考えればそうだろう。

 ただ、狼刀はアンジュの顔を見て、そうではないような気がした。

「残念だね」

 言葉とは裏腹に、アンジュは楽しそうな表情だ。

「まあ、でも。障害があればあるほど燃えるタイプなんだよ、意外とね」

 アンジュは立ち上がり、スペーディアが落とした刀を拾う。

「さて、時間切れみたいだ」

「何を言ってる、とっ」

 椅子が消え、狼刀は最後まで言葉を続けることが出来なかった。とっさに立ち上がることも出来ず、狼刀はアンジュを見上げる。

「邪神教を滅ぼす君たちに一つ、アドバイスしておくよ」

 スペーディアはアンジュの方を向き、地面に手をついて、立ち上がった。

「マルティールは他の神官とは強さの次元が違う。殺す気でいかなきゃ勝て――」

 アンジュの姿が掻き消え、スペーディアが伸ばした手は宙を掴む。アンジュに拾われた刀を取り戻そうとしたのだろうが、届かなかった。

「スペーディア……」

「時間切れって、なんなのよっ!」

 スペーディアは不満をぶつけるように、足元に転がる瓦礫を蹴る。

「ロウト! スペーディア様!」

 時間切れ。その答えを示すかのように、ハーティルがやってきた。 


「神官達は?」

「全員、生け捕りにしたよ」

 ハーティルは得意げな顔を浮かべた。

「城まで連行は他の人に任せて、僕はお二人の様子を確認しに来ました」

「どういうこと?」

 スペーディアが首を捻る。彼女はハルマに連れ去られたため、ハーティルの一件を知らないのだ。

「あぁ、実は……」

 狼刀は状況を掻い摘んで説明する。それを聞いて、スペーディアは一応の理解を示した。

あの神官(アンジュ)を逃したことだけが心残りね……」

「そう、ですね……」

 スペーディアとハーティルはしみじみと項垂れる。


「それより、今後のことを考えませんか?」


 抑うつとした雰囲気を壊したのは、新たに現れた人物だった。

「また会いましたね、ロウトさん」

 くすんだ金髪の兵士。ウオトラが笑みを浮かべて、立っていた。

「ついて来たのか……」

 ハーティルは呆れたような表情でため息をこぼす。

「はい! ロウトさんのお役に立てればと」

「君はまず、命令通りに動くことを考えたほうがいいよ」

「……はい」

 二人のやり取りで、少しだけ場の雰囲気が明るくなった。

「いったん、デュース城に戻るか」

 狼刀の意見に反対する人はおらず、四人はデュース城へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ