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舞い踊り散る桜  作者: 紅夜 真斗
十一章
115/142

違え稽古

 本格的に刀稽古を始める初となった日。夕七つからの一刻の稽古。

 道場に入ったばかりの日と同様に、紀代隆様の隣に着き座っていた。

 何故か、本当に何故なんだと問い掛けたいくらいだが、頭領が他の門下生に混じって正面に座っている。

 正直、床を叩きながら「何で、あんたがそこに座っているんだ!」と声を荒げたかったが、どうせ、無駄なので止めた。

 時川殿と紀代隆様の師範代も、当然、頭領に向かい「何故そこに座る」のか疑問を呈した視線を送ったが、二人とも早々に見なかった事にしたようで、淡々と刀稽古に至るまでの説明を、それらしく紀代隆様がしてくれていた。

 護身術の一環として、対刀の技もあるが……紀代隆様の、例の一件以降、刀は他で習う人の方が多いらしく、一部の人間が技の一通りを教える一環で振るう程度になっていた。

 そんな中で参加して頂けるのは――

 オレを含めて、時川殿、大和、和一殿、長谷川はとり、今は勤めで居ないが東雲殿。影担いの同僚方からも参加者がおり、鹿角雲雀(かづのひばり)殿、辻森多々良殿、都竹哉重(つづきやえ)殿、江川斗也(とうや)殿。年少組から上遠久弥、柳瀬大地、藤沢蘭、不定期参加の頭領を合わせて十四名。

 その内の女性は、時川殿、東雲殿、都竹哉重殿、藤沢蘭の四名ともあり、分けて組ませるにも問題は少なさそうだ。

 ちなみに紀代隆様は、お役目があるので稽古開始の見届け人として挨拶を頂戴しただけなので、人数からは除外する。

 一応、后守護身術道場としては門下生総勢四十数名居る中での十四名だ。多いか少ないかはさておき、鹿角殿は稽古指導員として参加して頂ける。実に有りがたいことだ。

「では、師範、冬臥。後をよろしくお願いします」

 道場を退出する紀代隆様に礼を交わし、頭領に向かっては、良い加減に同じ席に着くように睨んで訴えた。ついでに言えば不満気な声が上がったが無視した。

 頭領は渋々と上座に移動して来て、空いたその席には時川殿が滑り込むように座り直したのを見届けて、佇まいを直した。

「本日より僭越ながら、皆様の指導に当たらせて頂く后守冬臥です。師範、曉と共に鹿角雲雀殿のご助力を頂きつつ、稽古を執り行う予定でおります。よろしくお願い致します」

 そう、挨拶を終えて頭領へ挨拶の場を譲る。

「俺からは特に無い。面倒を見るのも基本は若ぐらいだしな。いつも通りに皆、頼む」

「鹿角雲雀だ。手が空いている限り、お前たちの要望には応じるつもりだ」

 鹿角殿は、頭領よりは若いが、紀代隆様よりは年上。この場に居る殆どの人間が年下になる。

 ぶっきらぼうな物言いだが面倒見は良く、普段は近所の子供達に文字の読み書きを教えていると聞いた。

 紀代隆様の推挙で、鹿角殿に指導員の願いを出せば、考える間もなく了承を返してくださった。

 付け加えるなら、鹿角殿は幽借の件でオレ達を助けに来て頂いた班の班長でもある。腕前はそう云う意味でも折紙付きだ。

 早速ですが、と加えて時川殿、和一殿、久弥に昨日のうちに指示して置いた場所に立ってもらい、大雑把に、初級、中級、上級までを組み分ける。


 上級、師範、大和、はとり、時川殿。

 中級、オレ、江川斗也殿、都竹哉重殿、和一殿、辻森多々良、東雲殿。

 初級、鹿角殿、久弥、柳瀬大地、藤沢蘭。

 

「遠慮の要らない面子揃いで助かりそうです」

 和一殿以外は影担いに関わりある人たちばかり。簡単な自己紹介だけ終えたところで、都竹殿の手が大きく上がって振られた。

「冬臥くん? 冬臥先生? うちにも遠慮は禁止だからね」

「呼び方は自由にして頂いて構いません。稽古に関しては、有り難くお受けいたします」

 都竹殿は影担いの一人でありながら、御剣に次ぐ程の上位武家の姫だと聞いている。しかしながら、この砕けた物言いと態度からは正直、想像できない。 

「じゃあ、冬臥先生と呼ぼう。うちは気軽に哉重(やえ)ちゃんって呼んでね」

「え、あ、いや……それは」

「哉重さん。二十歳過ぎてんのに年下に“ちゃん”呼びは問題。流石に」

 オレが返事に困ったところで、江川殿が呆れた口振りで首を横に振った。

「えー、良いじゃない。教えてもらう側なんだし、先生に畏まられすぎるのは問題よ?」

「確かにそうだな。俺も刀稽古の間だけは冬臥先生って呼ぶことにするわー」

「和一殿、そう面白がって言うだけなら止めてください」

 ニヤニヤと笑いながら言って来たので、釘を刺せば「けじめってヤツだから」と返されてしまった。

「ねぇ、ぼく達は話してるだけぇ? 他はもう始めてるよぉ」

 少し退屈そうに間延びした声は、辻森多々良殿。この面子の中では一番オレと年が近く、鹿角班の影担いだ。

「ああ、すみません。では始めましょう」

 先ずは体を解してから、素振りに移行する。

 とりあえず簡単に百本振った頃には、不慣れな和一殿が早々に息を乱していた。

「うへぇ、みんな体力ありすぎじゃね……」

 座り込みはしなかったが、和一殿は、両手を膝についたままだ。

「和くんは、基礎体力付ける意味でもちょうど良いかもね」

「哉重さんの、お姫様らしからぬ体力も、含めてだよ」

「あらやだ、誉めないでよ。そんな事言うならカナデちゃんだって、うちと同じよね~」

「カナデさんは別。哉重さんみたいな体力バカと一緒に……イタタタタタタ、いってぇ! マジ、いてぇってば!」

「体力バカって言った口はどの口かしらね~」

 瞳は全然笑っていない都竹殿の掌が、和一殿の顔を見事に鷲掴みにしている。

「えー……向こうは放っておいて、打ち込みを始めましょうか。元立ちは全員で回します」

 立つ位置をそれぞれに変えて、始めに見本打ち込みをしてから一人ずつ、オレが元立ちになって受ける。

 江川殿は重たい一打をきっちりと打ち込む。

 辻森殿は軽く当てるだけかと思ったが、最後の一打は早く鋭く切り込んできた。

 いつの間にか並んでいた都竹殿は、女性にしてはかなりの背丈があり、その分、上から振り下ろされるため、受けた芯まで響く。

 和一殿は前の三人とは違い経験が浅い分、打ち込むときに力が入りすぎて、振り上げにバラつきが見えた。

「次、江川殿お願いします。和一殿は一度、横で見て居てください」

「俺だけ除け者?」

「そんな訳ありませんよ。他の皆さんは打ち込みを揃えて下さい」

「えぇ~、それ、めんどぉ」

 速さで打ち込みを見せる辻森殿には、その速度を落とさせる事になるが、人の技を見ることも大事だ。

 道場に通うようになってから、気がついた事だがな。

 自分自身で気がつかない破られやすい癖、相手の癖を見つけ出す。そう言う事はよく見なければ分からない。

「お願いします」

 そう声を掛けて、先程と同じ速度と場所を江川殿に打ち込む。その後は和一殿の隣に着き、順に打ち込んでいく姿を見る。

 速度を落とす羽目になった辻森殿は目に見えて流れが崩れたが、都竹殿は変わらず安定した打ち込みを見せた。

「和一殿はこのまま、振り上げと打ち込みの流れを見てて下さい。辻森殿、元立ちを」

 そう願えば、辻森殿は木刀を弄びながら唸ってこちらを見た。

「ん~。先生さぁ、そんな殿とか付けられても、ぼく困るんだけどさぁ」

「ほらぁ、うちの言った通りでしょ。冬臥くんも教える側なんだし、ビシッとしてもらわないとやっぱりダメよ」

 そう云うものなのだろうかと思いながら、周囲に目を向ければ何故か頷かれていた。

「稽古は、強くなりたいからだ。気弱に見える相手に教わっても、実感は無い」

「気分の問題って、意外と大事なもんだぜ。平素は同門だとしてもー、今は冬臥が先生なんだしさ」

 何故か、和一殿に背中を思い切り叩かれながら言われてしまった。

 江川殿が言わんとした事は、朧気だが分かる。だが、和一殿の言うことには首を捻りたい。

「最初が肝心ってよく言うじゃない。うちだって、あんまり、なごなご~っとしてると、いざって時に、躊躇っちゃいそうでさぁ」

 そう柔らかく言いながら、向けてきた影担い達の瞳にようやく成程と思いながら頷いた。

「稽古の時間限りは有りがたく、そうさせて頂きます」

 人様に指図すると言うのはどうかとも思ってしまっていたが、それは思い違いと言う事だったらしい。

 久弥や灯里の時は元より年下と言うのもあって気にしていなかったが、考えれば頭領も古竹さんや十重殿を呼ばわる時も、呼び捨てていたのは、そういう事もあるのだろうな。

「では、元立ちに辻森。江川殿から打ち込み始め」

 ただ、やはり離れた目上の人を呼び捨てるのは抵抗があってしまう。

「冬臥先生。江斗(こうと)と呼んでくれれば良い。いらない、殿は」

「……江斗、ですか?」

 江川殿自身から願われた呼び名を返せば、頷いた。

 初日の稽古は、自分のやりたいこと、やって欲しい事を伝えるのに惑い、他の皆に凄く助けられた。

 特に、都竹殿と辻森の二人からは遠慮の無い声が上がってきた。

 都竹殿は人へ指図する立場から、辻森からは指図される立場からだ。時折二人の意見がぶつかり脱線しそうになれば、江斗か和一殿が間に入り、とりなし方を見せてくれた。

 そう考えれば、影担いの任につき道場に足を運ぶようになってから、年齢合わせて不特定多数の人と話しをする機会に恵まれている気がする。

 表役目だけに奉じていた頃は、こういった機会は殆ど無かったな。

 そんな事を思いながら、暮れ六つの鐘の音に刀稽古の終わりを告げ、一度その場を解散させた。

 時間外稽古。それを行う為に残るのは、オレとはとりだけ。後から東雲殿が合流し、頭領と大和の二人は屋敷に戻るはずだ。

「あれ、冬臥先生たちは帰らないんですか?」

 片付けも精力的に行って戻ってきた久弥が、まだ木刀を片付けていないオレ達を見つけて寄って来た。

「ああ。久弥、きちんと時川殿を送って行け」

「えっ、はい。でも、冬臥先生がまだ稽古するなら」

 帰り渋る声を上げていた久弥に向き直り、見下ろせば、不満そうな表情がありありと浮かんでいた。

「此処からはお役目稽古だ。それに、主である時川殿を一人で帰し、あまつさえ妹を放っておくのか?」

「そ、それは……でも、おれももっと稽古付けて欲しいです!」

 言われた言葉は予想通りなものだった。だから、返す言葉は決まっていた。

「お役目と言ったはずだ。関係のないお前の前で出来るわけが無い」

 キツイ言い方になったが仕方ない。明らかに肩を落として項垂れるように頷いた久弥を、時川殿が戻ってくる前に玄関前まで見送る。

「基礎を覚えて、もう少しオレに余裕が出来たら、幾らでも付き合ってやる」

「ホント!」

 元々、久弥の為に組んだものだ。嘘ではないと頷けば、喜び叫ぶので諌めてみたが久弥は悪びれた風も無く笑っていた。

 そんな折に戻って来た時川殿が、些か気味悪そうに喜びまわる久弥を眺めて、此方に目を向けてきた。

「暴れてないで、帰るわよ」

 時川殿から促された言葉に、久弥は応じて「ありがとうございました」とやたらでかい声で挨拶を置いていった。


「チビさん、ものっそい声やったな」

 わざとらしく耳を触りながら言って来るはとりを通り過ぎて、オレは頭領の前に戻った。

「頭領、若様。道中どうぞお気をつけてお戻り下さい」

 大和と言いかけ、流石にはとりの居る前で呼ぶのは、今のオレの立場からは相応しい物ではないと思い言い直して頭を下げた。

「まだ戻る気は無いよ。ねえ、曉さん構わないでしょう?」

 そう言われた言葉は、どこか冷たく感じた。

 久方ぶりに会えたあの時と同じ冷めたもので、何故か鳩尾辺りが痛く感じた。

「それは構わないですが、宜しいのですか」

「良いよ。流石に夕餉前には戻るけれど、影と后守の稽古なんてちょっと面白そうじゃない」

 変わらず、屈託無く放たれた大和の言葉に、一瞬目の前が眩んでしまった。

 今のオレは、確かに大和の守り手である后守ではなく、ただの影担いの一人だ。

 それに対して、はとりは――正しく、御剣に就く后守だ。

 どちらに心を砕くかなど、考えるまでも無い事だ。

 何も成せないオレを待つような男ではない。

「――い、おい。聞いているのか、冬臥?」

「あ、いえ……すみません。聞いておりませんでした」

 頭領の促す強い声に引き戻され、落ち込んでいたモノを追い払おうと深く息を吐き出した。

「東雲が来るまでの間、どうするつもりだ」

 頭領からおそらく二度目の問い掛けを貰い、掛稽古をするつもりだと答えた。

「宜しければ、頭領。相手を願います」

 答えて、そのまま続けていた言葉に、流石に訝しがる目を向けられた。

「さっきとは(えら)い違いだな」

 呟かれた言葉に、仕方ないだろうと、思わず言い返したくなった自分に、また溜息が出た。

 仕方無いって……なんだよ。

「まあ、良いがな。お前に稽古を付けるのも久し振りだし、受けよう」

「はい。ありがとうございます」

 先ずは滅多に稽古付けもして貰えない相手が居る事を、喜ぶべきだろう。

 江斗が言ったように、オレもまだまだ強くなりたい。

 その為の相手が、目の前に居るのだ。

 落ち込むのも後回しにしよう。

 そう今だけは思考を追いやって、時知火の香を短く用意し火を付けた。

「見学はどうか、怪我の無い様に離れてお願いします」

 告げて、頭領に向き直る。

 相対した間合いは遠い。それでも、礼を交わして直ぐに、互いに飛び込んでいた。

 ガッと木刀同士が打ち当たる鈍い音と、切迫した頭領の些か驚いた瞳が見えた。

 鍔迫り合いは互いにさっさと回避し、オレの方が一瞬早く、頭領の構えた左手を打ち据えに掛かっていた。

 剣先を振り上げるのは短く、振り落とすのは速く。

 そう頭で描けていても、振り上げも振り落としも前のようには行かず、オレが振り上げた木刀の横腹、文字通り鎬を削るように、真っ直ぐ頭領の突き出してきた木刀の剣先が喉もと目掛けて飛んできた。

「まずは一本」

 喉元にぴたりと突きつけられた切っ先が下げられるとともに、余計な事を考えているのかと、厳しい視線が向けられた。

 その視線には、そんなつもりは無いと睨み返したが、外した視線の先で、時知火を横にして座る大和と隣に立つはとりが何かを話していた。

 はとりが、空手で手を動かし、僅かに足を運んで見せるところからして、今の頭領の攻め手を再現して、大和に説明しているんだろうか……

「終わりにするのか?」

「いえ。二本目、お願いします」

 沈黙してしまっていた所を頭領から促され、二本目を願い出ると、その場から殆ど動く間もなく、オレから再び居合い抜きの要領で切り掛かった。

 ほぼ真横に薙いだ切っ先を、頭領は半歩下がり避ける。

 そこから普通なら、空いた頭に刀が落ちてくるところだが、頭領はそのまま更に二歩後ろに下がり距離を取った。

 振り下ろして来ていたのなら、左腕で弾いてやろうと思っていたが警戒されてたらしい。

 そして、下がったはずの頭領の剣先が再び目の前に迫り、今度はオレがそれを体捌きで躱し、隙となっていた右腕目掛けて木刀を振るうが、再び硬く打ち合った鈍い音が耳に届いた。

 数度打ち合うが、決して頭領からの攻撃を防いでいるわけではない。

 右肩、左手、突き、左胴、右手、それぞれ狙い、意識が逸れたはずの場所へ切っ先を当てに行きたいのに、隙を見つけて打ち抜こうとする傍から、素早く潰されていく。

 攻めあぐねた処で、頭領の木刀が左下から切り込んで来た。

「二本目――っとぉ!」

 取られる一瞬、深く思い切り頭領の懐に入り、体を押し崩すっ。

 一本取った。そう思い、後ろに重心を移しながら、木刀を振り下ろしたはずなのに、頭領の姿が視界から消えた。

「改めて、二本目っと」

「いてッ」

 軽い勢いだったが、完全に死角から木刀で頭を小突かれていた。

 なんだ、今の。一体どういう動きをしたんだ、この人は?

 考えるオレを横目に、先に二本取った頭領は木刀を肩に担ぎながら、視線をはとりへ向けた。

「時間はどうよ?」

 時知火の残り時間を問う頭領の声に、はとりが思い出したかのように確かめる。

「まだ、尽きちょりません」

「だとよ。どうする」

 もう一本やるかと聞かれたが、オレは完全に息が上がっていて直ぐには答えられなかった。

 出来るなら、もう一本やりたい。そう思っていたが、視界の端で立ち上がる大和の姿が見えた。

 横に置いていた木刀をはとりに預けて。

「曉さん、屋敷に帰ろう」

「宜しいのですか?」

 突然上がった大和の声に、意外そうに頭領が確かめた。

 面白そうだし残ると言ったはずだったのに、大和の興味は既に失せたようで、こちらにはその背を向けていた。

「構わないよ」

 そう残して大和が歩き出せば、頭領は木刀をオレに預けて、その後ろに付いていた。

 着替え終わった大和と頭領の二人を、はとりと並び見送る。

「はとり、稽古が終わったら報告に来て。曉さん行こう」

 呼ばれたはとりは了承を返し、促された頭領は、大和の着替えが収まっているだろう荷物を片手に、草履を揃えて差し出した。

 振り返ることも、視線が合うことも、呼び掛けられる事すらなく、大和は立ち去って行った。

 何も成せていない、オレを不甲斐ないと思ったのだろうか。

 それとも、やはり……秘密を有さずとも、傍に居る者の方へ信頼を寄せるのだろうか。

 そうだとしても、あの時に見せられた冷めた視線は、どういう事だったのだろう……

 流石に……あの刻に交わした約束を忘れていると、思われている訳ではないと思いたい。

 稽古場に戻れば、時知火の香は気が付けば燃え尽きて、灰の上で微かな煙を立ち上らせるだけだった。

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