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第九話 盗賊を瞬殺する者

朝食を終えた俺達は、どこか街へ向かい冒険者ギルドを探すことにした。


「あのね御主人さま。私は奴隷としてカーマ国の首都カーマに行く途中だったの。この道をまっすぐ進めば、首都カーマに着くと思う」


なるほど、俺たちはアークザリア王国の東側北部のカーマ国領土にいたのか。


「そうか、ありがとうリン」


俺がリンの頭を撫でてやるとリンは「えへへ」と言って嬉しそうにしていた。


なぜかミーナは俺の手を見つめていた。


冒険者ギルドへ行けば、魔物から剥ぎ取った素材を買ってもらえる。


少しでもお金に余裕を持たせたい。


良い武器や良い防具は必須なのだ。


俺たちは、カーマに向かって歩き始めた。しばらく進んだところでリンが何かに気付いた。


「御主人さま、待って」


「ん、どうしたの? リン」


「もう少し先、300mぐらいでしょうか、山賊が5人潜んでます」


なんと、リンは索敵も出来るのか。そう言えば感知スキルを持っていたのを思い出す。


俺たちは、注意しながら進んでいった。


すると、先ほどから300mぐらいのところで山賊が姿を現した。


さすがに殺気を放っていたから、俺でも20mぐらい前からなら気付いた。


人数までは分からないが。


「は~い嬢ちゃん達。持ち物全部置いて行ってね。そうすれば命までは獲らないから」


リーダ格らしき人物がいやらしい笑みを浮かべ、若い俺たちを馬鹿にしながらそう言った。


他のメンバーも下衆な笑いを浮かべている。俺は魔眼でリーダらしき人物のステータスを見る。


名前:サル・ガソー

種族:人間(男性)

スキル:抜刀LV17 盗みLV17 異常癖持ちLV15

称号:嘘が呼吸と同義になってる者

JOB:シーフLV19


なんだか色々問題のありそうな人だった。


JOBシーフと言うことは、素早い動きで攻撃してきそうだな。


LVも高いし、ヤバイ相手かもしれない。ここは、槍の出番か。


俺がそう考えていると、俺の後方から魔法で作られた矢が5本通り過ぎていった。


魔法の矢は凄いスピードで飛び、突然の攻撃に驚いて対処できなかった山賊達の額に突き刺さった。


山賊達を瞬殺である。


俺とミーナは後ろを振り返ってリンを見た。めちゃめちゃドヤ顔である。


「へへ~。クイックショットだよ。レベルが上がるごとに矢の本数も増やすことが出来るの。すごいでしょ」


確かに凄い。油断してたら躱せない速さの攻撃だ。


リンって思ってたより使えるのかもしれない。


これなら親父を倒す日も近いか、いや、現実を見よう。


山賊達から魂やら金目の物を取って、道を進むことにした。


その際、山賊の一人が着ていたフード付きローブをリンに着させてやった。


ミーナの話によると亜人は、アークザリアにおいて、人間から迫害を受けているらしい。


ドワーフ族だけは、鍛冶能力が高いので、唯一差別を受けていない。


通常、亜人の奴隷であれば、危害を受けることはないのだが、出来るだけ身なりは隠しておいた方がいいらしい。


特にカーマ国は亜人に対する差別が異常だからだ。


俺は、角、羽を収納しているから、見た目は人間と変わらない。


ステータスも偽装済みだし、問題ないだろう。リンにあまり嫌な気分を味わせたくない。


「俺がリンを守るからね」


思わず、声に出していた。ちょっと恥ずかしい。


リンは目を潤ませ、俺の腕に抱きついてくる。


「御主人さま、好きです。大好きです~」


「くっつき過ぎです」


ミーナがリンを俺から剥がした。ミーナ結構力あるんだね、少し驚いた。


ぶぅと頬を膨らましたリンの片手を握ってあげた。


リンは笑顔になって俺と手を繋いで歩いている。


もちろん、反対の手はミーナに差し出している。


ミーナはもじもじしながらも俺の手を握って一緒に3人で歩いていた。


何これ、兄弟姉妹が一緒に仲良くお使い行くみたいな感じになっているんですけど。


俺たちの手は、カーマの都市の入り口に着くまでそのままだった。


都市の入り口で貴族らしき男が奴隷を連れていた。


犬人族の男の子と猫人族の女の子の奴隷だ。


重そうな荷物を2人に持たせ、「遅い」とか言いながら2人を蹴ったりしている。


2人の奴隷の身体は傷だらけだった。


俺が、駆け出そうとすると、ミーナがキュっと手を強く握った。


そして首を横に振る。亜人は奴隷。何をしても許される。


カーマ国では、他人の奴隷を助けることが出来ないのだ。


奴隷の主人の許可を得れば暴力を奴隷にふるうことは許されている。


「人間って非道いよな」


つい声に出してしまってハッとした。ミーナが悲しそうに俯いている。


しまった、ミーナを悲しませるつもりなんかないんだ。


「ご、ごめんミーナ。言い方が悪かった。人間も魔族も中には非道い奴はいるんだなってこと。人間だけが、という意味じゃないから」


ミーナに俺の必死さが伝ったのか、クスッと笑って「わかってるよ」と笑顔を向けてくれた。


首都カーマは、大きな塀に囲まれている。高さ10m以上の分厚い壁だ。


これだけの壁を作るのは、すごく大変だっただろうな。亜人か……。


故に入り口は1箇所だけ、衛兵らしき人が2人立っているが、特に検査もなく普通に入れた。


ただ、何となくリンに対する視線がキツイように感じた。


俺たちは、近くの人にギルドの場所を聞き、まずは冒険者ギルドへ向かった。


冒険者ギルドに入ると、俺たちに視線が集まった。品定めをしているかのようだ。


やはり、リンに対する視線が厳しい。


少し緊張しているリンの頭を「大丈夫だよ」と言いながら撫でてあげた。


冒険者はパーティ毎に登録するらしい。


ミーナに俺たち3人パーティの登録をしてもらうことにした。


ミーナがリーダーだ。登録時にパーティ名も登録する。


俺は何となくパーティ名は「マリオカミ」で、とミーナに勧めたが、すぐ却下された。


前世の時好きなゲームキャラから名前をつけようとしたのだが、何か問題があったのだろうか。


結局「アイリース」とミーナが登録した。意味はなく、何となくだそうだ。


また、登録時にパーティメンバーの名前とJOBも登録するのだが、ギルドの受付は、ミーナのJOBを見て驚いた。


「え、勇者さま……」


その一声で周りの冒険者達がざわついた。


「いや、まだ見習いですよ。早く勇者になれるように頑張ります」


ミーナがニッコリと答える。


将来の勇者と一緒にいたいのか、男共がミーナの周りにきてパーティに入れて欲しいとお願いしてきた。


ミーナは、あわあわしている。


俺がミーナを見て、おいでおいですると、ミーナはパっと目を輝かせ俺のもとへ駆け出し、俺の腕にギュっと掴まった。


「すまんが、男は足りている」


俺は、そう言って周りの男共を黙らしてやった。くぅ~気持ちいい。


前世で社畜となっていた俺が可愛い女の子と両想いだなんて。転生万歳だ。


「御主人さま、顔にやけてる」


リンからの指摘にすぐ対応した俺は、ギルドの受付で素材の買い取りをしてもらうことにした。


魔物の皮や牙などだ。結構な量を捌いたので銀貨10枚ほどになった。


前の世界で言うと、銀貨1枚10,000円くらいだ。


ちなみに銅貨は、1枚100円、金貨は1枚100,000円らしい。


まあ、山賊達からいただいた金もあるので、生活には困らないだろう。


「リア充爆発しろ」とか「お前の母ちゃんデベソ」とか訳わからない暴言が出てきたので俺たちはギルドを出ることにした。


ギルドで冒険者登録をするとギルド証が貰える。そこにはパーティ名とランクが記されていた。


ランクは最低のGだSSランクまであるらしい。


ギルドのクエストをこなしたりするとランクが上がるらしいが、俺は別にそんなことには興味はない。


次は宿屋を探そうと歩いていると、妙に騒がしくなってきた。


「御主人さま」


リンが俺の服の裾を引っ張った。うん、これくらい殺気強ければ俺でも丸わかりだよ。


どうやら魔物の群れがカーマを襲いに来ている。


その数200匹以上いるね。大丈夫かこの都市?

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