第十話 洗脳状態の国王
俺たちは、都市の入り口に向かった。そこからしか魔物も襲撃できないのだろう。
鳥型の魔物であれば空から来れるが、数は少ないみたいだ。
入り口近くの壁の上には兵士達が弓を構えたり、魔法を唱えたりして鳥型の魔物を倒していた。
入り口を出た付近では、恐らく国の騎士団であろう人達が魔物の侵攻を食い止めていた。
しかし、状況は良くない。騎士団の兵士は次々と倒れているのが見える。
兵士達に指示をしている、恐らくリーダーであろうドワーフもだいぶ傷ついているようだった。
そして、自分をしんがりにして兵士達を退却させ都市に戻ってきた。
「今だ、結界を張れ」
どうやら、魔術師達が結界を張る時間を稼いでいたようだ。それにしては犠牲が大きい。
結界の指示をだした先ほどのドワーフも片腕を失くし、血が大量に流れ出ていた。
名前:オルガ・ノートス
種族:ドワーフ(男性)
スキル:盾持ちLV20 高揚LV17 真空斬LV20 鍛冶LV23
称号:カーマ騎士団長
JOB:騎士LV25
ふむ、騎士団長のことはある。なかなか強そうだ。
そんな彼の元へ人間の女性が近づいて行った。
「オル、オル……」
彼女は泣きながら魔法で治癒を使っていたが、血を止めることしかできない。
俺なら腕も元通りにできる。騎士団長として片腕では困るだろう。
俺は彼に近づいた。
「ちょっと、スマン。治癒させてもらうよ」
そう言って、切断された方の腕を治癒する。
切れた腕は見事くっつき、普通に指とかも動かせるようになった。
「おぉ、凄いな。ありがとう少年。私はオルガという」
「ありがとうございます。貴方のそれ治癒LVⅢですよね。凄いですね」
オルガの近くにいた女性からも礼を言われた。
「俺は、マオと言います。アイリースというパーティの一員です。それにしても魔物凄い数ですね」
ほとんど、兎、狐、野犬、猪たまに豹ぐらいの大きさの魔物だが、数が半端ない。
今は結界で守っていられるが、徐々にひびが入っている。
「うむ。君たちは頑丈な建物に避難してくれ。後は私たちが何とか数を減らしていく。」
勇ましいドワーフだな。お言葉に甘えようと思ったが、結界は長くもちそうになかった。
俺はちょっと思いついたことがあったので、オルガに言った。
「あのぉ、一発魔法かましてもいいですか。結界壊れた直後に撃ちますので」
「君は魔法使いだったのか? 何の魔法だ」
「ちょっと変わったファイアでも撃ってみます」
騎士団長は、火球? という感じで固まっていた。
結界がもう壊れそうなので、俺は頭の中でイメージする。球ではなく、壁を。
そして結界が壊れたと同時に俺は叫んだ。
「ファイア」
俺の手のひらから放たれた魔法は、球という大きさではない。
カーマの入り口くらいの大きさの炎の壁がそのまま入り口を突き抜ける。
なかなか凄い威力の魔法が撃てた。
入口から入ってこようとした魔物達は無残にも黒コゲとなり絶命した。
ファイア1つで200匹以上を倒したことになる。
生き残った魔物は、数匹だったので、これならば騎士団で余裕だろう。
というか経験値がヤバイ。パーティメンバー全員がめちゃLVアップしている。
何かやっちゃった感があったので、その場を去ろうとしたのだがオルガに肩をがしっと掴まれた。
「マオ、話がある」
あぁ、捕まるよね。ファイアって呼べる代物ではなかったからね。
リンは、羨望の眼差しで俺を見ないように。そして抱きつかないように。
ミーナは「さすがマオくん」とか言っている。いいぞ、もっと言え。
しばらくして俺たちは、カーマ城に案内された。
城の中に入り、途中の広間でリンと別れることになった。
どうやら王様の前に亜人は出ることが出来ないらしい。
差別の激しいカーマ国の王なのだから、そんな事は当たり前なのだろう。
ちょとムカツク。
「リン、すまないがここで少し待っていてくれ。すぐ戻る。何かあったら声を出せ、すぐに駆け付けるからな」
そう言いながら俺は周りの衛兵を睨みつけた。
「うん、わかった。淋しくなったら御主人さまを呼ぶ」
「いや、それは我慢してくれ」
俺はリンの頭を軽く撫で、ミーナと一緒に王のいる部屋に向かった。
俺たちを案内しているのは、騎士団長のオルガと彼に付き添った人間の女性だ。
名前:カル・スメラ
種族:人間(女性)
スキル:治癒LVⅡ 身体強化LV5 結界LV12
称号:癒しの巫女
JOB:僧侶LV20
状態:平静
ふむ、癒しの巫女か。素晴らしい称号だ。
彼女は、少しふっくらしているが、太いというわけではない。
そして巨乳だ。男なら誰しも癒して欲しいと思うだろう。
俺の視線に気が付いたカルさんがにっこりと微笑んだ。俺も笑顔でそれを返す。
すると俺の隣でミーナが泣きそうな顔をしていた。
どうしたミーナ。何か悲しいことでもあったのか。
俺は握っているミーナの手に少し力を込めて、ミーナを見た。
ミーナは少しあわあわしていたが、俺が微笑むと安心したのか笑顔になった。
良かった元気になってくれたみたいだ。
そしてカーマ王のいる部屋に着いた。
さすが、王様。偉そうに椅子に座っているだけだが、威圧感はそれなりにある。
オルガとカルさんは王様の両側に立った。
俺とミーナは王様の前に立っていたが、ミーナが片足をつきながらお辞儀をしたので、俺もそれを真似た。
「ふむ、苦しゅうない。面を上げぇ」
何か時代劇のドラマで聞いたようなセリフが出てきて笑いそうになったが、何とかおさえた。
俺とミーナは、片足をついたまま、顔を上げた。
「お主らが、魔物を倒してくれたアイリースというパーティの者か。此度はご苦労であった」
さすが、王様、情報早いな。しかし、リンを含めてのパーティなんだぞ。
差別主義者に言っても無駄だろうが。
「其方の魔法の力が特に秀でていると聞いている。お主を我が魔法術師団の幹部に入れてやろう。光栄に思うが良い」
「だが断る」
このおっさん(王様)何言ってんの。俺は即座に返事してやったよ。
しかし、周りの様子は違ってたみたいだ。
ミーナは俺を見ながらあわあわしている。
このあわあわしているミーナが可愛い。見ているだけで凄く癒される。
オルガとカルさんは目を見開いたまま硬直しているし、王様も断られるとは思ってもいなかったのか目が点になっていた。
俺はこんな国の仲間(という名の奴隷)になるのは死んでも嫌だったので即答したが、何かしら理由は必要かと考え直した。
「カーマ王からのお誘いは嬉しいのですが、私は勇者と共に魔王を倒す旅の途中であるため、残念ながら1箇所に留まることは出来ないのです」
そう言いながらミーナを見る。少し頬を赤くして照れているミーナが可愛い。
王様も理由を聞いてようやく正気に戻った。
「ふむ、そう言えば女性の方は勇者(見習い)であったな。なるほど、勇者1人では魔王を倒せない。パーティとしての強化も必要なのだな」
カーマ王はそう言いながら、ふ~むと言いながら何か考えている。
俺は、こっそりカーマ王のステータスを確認してみた。
名前:フタタオ・カーマ
種族:人間(男性)
スキル:威圧LV40 聡明LV38 政治LV57
称号:民衆の総意
JOB:王様LV56
状態:洗脳(軽度)
あれ? 知らぬ間に状態が見れるようになっている。洗脳(軽度)って。
王様は誰かに操られているのか。
「洗脳(軽度)」・・・・・自身の欲望に忠実な状態。
俺の疑問に説明文が現れた。
特に操られているわけではなく、欲望に忠実になっているだけか。
つまり目の前にいるカーマ王は、嘘偽りのない王であると。
亜人差別主義者であるということが分かった。
しかし、誰かに洗脳されたという事実は問題だな。
洗脳が中度、重度となっていったらマズイ気がする。
「よし、我が騎士団のオルガとその婚約者のカルをアイリースに入隊させよう。早く勇者を育て、我が国に貢献するが良い」
えぇ、王様訳わからないよ。
一番わからないのは、カルさんがオルガの婚約者のところだけど、今は置いといて俺は尋ねた。
「騎士団長をパーティに入れてもらえるのは嬉しいのですが、この国の防衛は弱くなるのではないでしょうか」
「心配はない。我が騎士団の副団長もオルガに負けず劣らず優秀だ。それに、アイリースには今回の魔物の襲撃について調べてもらいたい。我が国北東にあるカーマ迷宮方面から魔物が流れてきたとの報告もある。まずは、迷宮を確認してもらおう」
相変わらず、偉そうだけど魔物の襲撃理由は気になるし、アークザリア迷宮以外の迷宮にも興味がある。
「わかりました。喜んでお話を受けましょう」
「わっはっは。さすが勇者に付き添う者だ。いい報告を期待しておるぞ」
王様の機嫌も良くなり、俺たちはようやく解放された。
そうそう今日の活躍が特別に認められてアイリースの冒険者ランクがCになった。
リンの部屋へ戻るときにオルガとカルさんも一緒についてきた。
このまま城の客室に俺とミーナは泊まることができるのだが、リンは野宿になるらしい。
そんな話は受け入れられないので、俺とミーナも野宿するつもりでいたが、オルガの家に招待された。
今は1人暮らしであるが、一軒家に住んでいるらしい。
近いうちにカルさんと住むための家なのだろう。
お風呂やベッドもあるということなので、みんなでオルガの家に行くことにした。
リンは俺と会えて嬉しいのか、腕につかまりながら「御主人さま~」と何度も言っている。
ここで、ステータスを今一度確認した。
名前:マオ・アーク・デモン
種族:D魔族
スキル:魔眼Lv10、魔淫Lv5、ファイアLv15、ライトスマッシュLv10
称号:助け人
JOB:魔槍師Lv22
状態:やや色ボケ
名前:ミーナ・セルジロ
種族:人間(女性)
スキル:鑑定Lv10、ハヤブサ斬りLv10、防御Lv13
称号:盾を持つ者
JOB:勇者(見習い)Lv19
状態:平静
名前:リン・イザル
種族:エルフ族(女性)
スキル:属性アローLv9、クイックショットLv9、魔力感知Lⅴ15
称号:マオの奴隷
JOB:弓魔師LV15
状態:御主人さま命
魔物を数百匹倒したおかげでJOBレベルがすごく上がって、それに合わせてスキルも結構上がっていた。
魔眼がレベル10になったおかげなのか、状態も見ることができる。
が、色々ヒドイ。
やや色ボケって、情けない。そして御主人さま命ってどんな状態なんだよ。




