第四十三話 迷宮の秘密
モッハトルテ国の王様は仕事が早いらしい。
先に攻め入ったドラゴン達の全滅、昨日のドラゴンの全滅の話を早速国民に知らせてくれたようだ。
そして人族との交流についても通達していた。
当然、人族と仲良くなんか出来るかと思っている(ほとんどの)国民は納得していなかったが、勇者の強さは理解したようだった。
俺たちは次の日モッハトルテ国内を馬車に揺られながら案内してもらっていた。
国民からの視線が痛いほど突き刺さる。
相変わらず首輪を隠した服装のリンが笑顔を振りまいていたおかげなのか、罵倒などはされなかった。
この国は魔法文化が発達しているためか、建物自体も他の国とは雰囲気が異なり、魔法塔というものが幾つも存在し、そこで魔法の実験が行われているらしい。
国の南部には少しばかりであるが森がある。
その森で採れる果物は魔力を有しており、魔力回復にも使えるらしい。
「そう言えば、この国の迷宮はどこにあるのかしら?」
ミーナが言った迷宮は、各国に1つずつ存在するらしい。
モッハトルテ国の迷宮の深さは10階層らしい。
つまり小さな迷宮なのだが、この小さな国を案内されていて、その迷宮が見当たらない。
「め、迷宮は現在封鎖中です」
案内してくれているホビット族という小人が答えた。
なんで、閉鎖しているんだろう。というか迷宮って閉鎖できるものなのか。
「あちらから魔力を感じます」
リンが森の奥を指さした。
「そうです。迷宮はあちらの方角です」
「そう、一度迷宮も見てみたいから案内お願いします」
「……はい」
何か気乗りのしない返事をするな。封鎖しているから入れないから行くだけ無駄とか考えているのか。
俺たちを乗せた馬車は森の奥の方へと進んで行った。
今日はここまで一度も魔物と出会っていないが、もしかしてモッハトルテ国には魔物が存在しないのか。
馬車が進むと魔力がだんだん強くなっているのを感じた。
途中で馬が進まなくなった。
「すみません、ここからは歩きでお願いします」
ホビット族はそう言うと馬車から降りて歩き始めた。
なるほど魔力を感じて馬がこれ以上前へ進めないのだな。俺たちも馬車から降りて後をついていった。
そして迷宮の入り口に案内された。
というか迷宮どこ? 目の前には10メートル四方の大きな壁があった。
「御主人さま、この壁の向こうに空間があります」
俺の心を読んだのかリンが説明してくれた。なぜ、こんな壁のような結界を張っているのか。
というか物理的な壁…ではないか、魔力も込められていそうだ。
壁越しにもなかなか強い魔力を感じる。これでは野生の動物達は近づこうとしないだろう。
「なんで迷宮を壁(結界)で塞いでいるのかな」
ミーナが疑問を口にした。
「それは、この迷宮の魔力が凄すぎて、街の方まで凄い魔力が溢れてしまうからなんです。それに迷宮内の魔物も強くて以前モッハトルテ国でも最高と呼ばれた魔術師に封印をしてもらったのです」
「魔力が溢れていると何かマズイのか」
今度は俺が聞いてみた。
「強い魔力は魔物をおびき寄せますし、種族によっては強い魔力が体に害をなすことがあるからです」
なるほど、魔族なら魔力大歓迎だが、人族系だと結構ツライのかもしれないな。
まあ、うちのパーティは大丈夫だろうが。
「でも、これだと迷宮内の魔物がどうなっているかわかりませんよね。中で増殖したり、強化されていたりしたらこの壁も壊されてしまって大変なことになりそうですけど」
カルさんがこの壁(結界)について問題点を述べた。
むぅ、だからといって何か良い案でもあるのだろうか。
「私が結界を張り直しましょうか。魔力だけを抑え込む結界なら中にも入れますし、魔物も退治できますよ」
そんな結界も張ることができるとは、さすがカルさんだ。
ホビット族の案内人は、そんな大事な事を決めるわけにはいかないと答えていた。
それもそうか、こんな強力な結界を張り替えるのだから国王の意見も聞かねばならまい。
俺はミーナの方をみて目配せをした。ミーナも俺の考えを読み取ってくれたみたいだ。
さすが、ミーナ、可愛い奴だ。
ミーナは転移でこの場から姿を消すと、数分でまた姿を現した。目を丸くした国王を連れて。
「結界を張り替えるだと、そんなことが可能なのか。失敗すれば数多の魔物が出てくる恐れがあるぞ」
「国王様、大丈夫です。万が一にも失敗はありませんが、もし失敗しても魔物は全て私たちで狩りますからご安心を」
ミーナの言葉にまだ半信半疑の国王だが、ミーナに逆らうことは出来なかった。
カルさんと俺以外は少し壁から離れてもらった。
「マオさん、この壁消滅するくらいの攻撃をお願いします。すかさず、私が結界を張りますので」
消滅するくらいの攻撃って、この壁は魔力で覆われた結界だから物理的破壊で問題ないと思うけど、他の人では壊せないだろうね。
ちょっとミーナにもイイトコ見せておかないとな。
俺は槍に魔力を込めて壁を破壊するつもりで槍を突いた。
俺の一撃を当てられた壁はドゴォォンという音と煙をまき散らして見事に破壊された。
壁の破壊と同時にそれこそ恐ろしい魔力が迷宮外へ出たがすぐにカルさんが結界を張ったおかげで魔力の漏れは以前より少なくなっていた。
煙がはれて辺りが見えるようになると国王は、壁が破壊されたのに驚いていたのか、以前より魔力が漏れていないことに驚いていたのかわからないが、口を開けてポカーンとしていた。
壁のあった所には迷宮の入り口がはっきり現れていた。もちろん中に入ることが出来る。
カルさん、凄いな魔力だけを抑える結界だなんて、本当凄い。
「カルさん、凄いな」
思わず口から言葉が出てしまった。
「まあ、マオさんに褒められるのっていいわね。ミーナさんは、いつもこんな感じなのかしら」
「カルさんっっ」
ミーナが顔を真っ赤にしてカルさんに抗議している。
あれ? ミーナもしかして俺に褒められたくて色々頑張っているのか。何かそんな感じがした。
「結界の張り替え見事である。だが、ここは何十年も結界を張っていた場所。迷宮内の魔物がどうなっているのか探索しなければならん」
国王は少し気難しそうな顔をしていたがミーナが即答した。
「国王様、私たちで魔物の討伐に行ってきます。倒し終えたら報告しますね」
ミーナ、討伐って何匹いるかわからない魔物だそ、全て倒すのか。
まあ、広さは分からないけど10階層ぐらいなら大丈夫かな。
とりあえず、国王は転移で城へ戻し、案内人は馬に乗って帰ってもらった。
それから俺たちはモッハトルテ国の迷宮に挑戦することにした。
迷宮に入ると魔力の濃度を感じた。結界の中と外では濃度が全然違う。
俺は魔族のせいか何か力がモリモリ沸いてくるように感じた。
カルさんは自分の周りに薄く結界を張っていた。
直に魔力に当たると体がしんどく感じるらしい。ミーナは勇者のせいか魔力が強くても全然平気だった。
他の2人も言うまでもなく気にしていなかった。
入り口を50mくらい下ったところから、なにやら敵意を感じた。そこは真っ暗な空間であった。
おかしい、いくらなんでも暗すぎる。そして感じる強力な魔力と敵意。
その暗闇の中に無数の赤い光が現れた。目の光だ。
無数の赤い目をした魔物はコウモリ族であろう。魔眼で見た。
名前:レドアイ・バット
種族:コウモリ族
スキル:超音波Lv99
称号:暗闇に眠る者
JOB:吸血蝙蝠Lv99
状態:警戒
うは、Lv99のコウモリだった。他にも何匹か見たがどれも吸血蝙蝠Lv96以上だった。
コウモリとは言え高レベル。楽な相手ではないだろう。
何しろ数が半端ない気がする。ミーナもレベルの高さに気付いたか、緊張している状態だ。
「気をつけろ、敵はほとんどLv99のコウモリだ。油断するなよ」
パーティのみんなに声をかけておく。俺の言葉に反応したのか、一斉にコウモリが動き始めた。
俺はまず苦手と思われる火の(巨大)魔法で敵を攻撃した。
「くらえ、ファイアー」
一撃で百匹は倒せただろう。だが、百匹だけなのだ。
ミーナは剣で倒そうとしているが、相手は避けるのが上手い。
ミーナでも一振りで4匹ほどしか倒せない。
リンは炎の矢で攻撃していた。
相手の急所に当たれば1本の矢で1匹倒せるが、そうでなければ3本ぐらい当てなければ倒れなかった。
リンも数十匹といったところか。オルガは片手斧で暴れまくっている。
まあ、ミーナと同じくらいの討伐数だ。
さすがにLv99となると体力が増えているのか、1発では死なないで生き残る個体もあった。
スキルの超音波の効力は俺には分からなかった。
後から聞いた話では、三半器官を破壊して、バランスがとれないようになるらしい。
恐ろしい技だった。
カルさんは立方体のような結界を張って中から支援してくれる予定であったが、結界の周りにコウモリが集まり、真っ黒な四角形が存在していた。
あれではカルさんも何も見えないだろう。
たまにその黒い四角形に向かってファイアを撃ち込み、カルさんの視界が確保できるようにした。
「ちょっ思ったのと違って、魔物の数も多くて、レベル高いんですけど」
ミーナが討伐するって言ったのに、思ったのと違うって……。
まあ、コウモリならLv99でもいけるけどな。
あれだな、これだけ数いると絶対ドラゴン6体より強いわ。ドラゴンよりレベルも10以上高いしな。
ともかく、次から次へと沸いて出てくるコウモリを俺たちは相手にした。
これって終わりがあるのだろうか。これ、普通の冒険者が迷宮に入ったら瞬殺されるな。
俺たちでないとマズイわ。
時間が経つとミーナもオルガも慣れてきたのか一度に倒す魔物の数が増えていった。
どれぐらい戦いっぱなしだっただろう。1時間以上は戦っていた。2時間くらいかもしれない。
大量のコウモリを倒して俺たちは一旦休憩することにした。
「ミーナ、迷宮内の魔物討伐するっていったよね」
1階層でこれだけ苦労したのだ。下の階層もヤバイこと間違いなしだ。
「えへへ、ごめんね。こんな強いとは思わなかったよ。でもマオくんなら楽勝でしょ。一緒に頑張ろう」
ミーナにお願いされたら断れる訳がない。いや、もともと断らないけど。
魔力が強いせいか俺の回復は早かった。他の人たちはカルさんから治癒を受けて全快した。
「ミーナは無茶言い過ぎ。御主人さまがやらなかったら私は絶対しない」
リンがまたミーナに文句を言う。
「まあまあリン、モッハトルテ国のためにやってあげようよ」
「はい、御主人さまの言う通りです」
う~ん、相変わらず盲目状態なのかな。
ミーナの方をチラリと見たけどミーナは気にしていないみたいだった。
さて、リフレッシュも終わったことだし、俺たちは2階層へ降りて行った。




