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第三十話 勇者ミーナ初めてのデート-1-

ミーナの視線に気付いた。じぃ~っとこちらを見ている。鑑定スキルで俺を見てる。


「マオくん、ちょっと」


手をひらひらさせながら俺を呼ぶ。そして俺が近づくと小声で言った。


「マオくん、魔淫スキル上がり過ぎじゃない。これ、私以外に使ったら大変なことになるような気がする」


ミーナの鑑定スキルが99まで上がったことにより、魔族のスキルも俺の本名も丸見えとなってしまった。


だから魔淫スキルにも気付くよね。


俺もそう思うし、まあ、それってミーナ以外にキスしなければいいだけの事だけどな。


「そうだね。レベル上がり過ぎて怖いね。もう、ミーナにキスしまくるしかないよね」


ミーナは、耳まで真っ赤にしながら、小声でそうだねと答えた。


俺は、可愛いミーナをぎゅっと抱きしめる。


「こらこら、そこ、発情しない」


カルさんに怒られてしまった。


まあ、後でイチャイチャすれば良いか。渋々俺たちは離れた。


「みなさん、聞いてください。私達は、ヘルメド迷宮の魔王を倒すことが出来ました。この魔王は増殖スキルというものを持っていました。恐らくこれは、魔物を自然と増やす効力のあるスキルだと思います。ヘルメド国の魔物の数が増えていたのは、このスキルのせいだと思いますので、魔王が倒された今後は増えることはないと思います」


ミーナがみんなを一か所に集め、今回の騒動の説明をした。


その説明にラーシャさんがホッとしていた。


「良かった。魔物がたくさん出没している原因を掴むどころか解決してしまうなんて、さすが勇者様のパーティです。私のレベルも信じられない程上がりましたし、感謝でいっぱいです」


ラーシャさんが俺たちに何度も頭を深々とさげてくる。


その度にラーシャさんの胸がボロンボロン動くのだが、俺の視線は彼女のソレに釘付けとなってしまう。


カチャリと剣の音が聞こえた。ミーナだ。


あかん、それマジであかんやつやから、剣光ってますよ~。


どうしよう、盾になるものを探さないと。


俺は素早くオルガの側に行き、盾の陰に隠れた。ミーナは、まだ、おこ顔だ。


「ミーナさん、敵はもう倒したのだから、そんな危ない攻撃したらダメですよ。どうせマオくんは、ミーナさんにベタ惚れなんですから」


カルさん、貴女はどこの天使ですか。たまに悪魔にもなるけど、今回はいいタイミングだ。


俺はコクコクと頭を上下に動かした。


徐々にミーナの剣の光がなくなっていった。良かった、ホント良かった。


帰りは一気に迷宮の入り口に飛ぶことにした。イメージがしっかりできるそうだ。


パーティが集まって転移する。


あれ? 俺だけ転移してませんが。みんなの姿が一瞬で消えた。恐らく地上に戻ったのだろう。


でも俺は99階層にいる。


ミーナまだ怒ってた? うぅ、一人で99階層から戻らないといけないのか、ツライ。


俺はトボトボと98階層に続く階段を探すことにした。


そこにミーナが一人で戻ってきた。


「マオくん、どこ?」


俺を探して駆け寄ってきた。


「ごめん、マオくん。全員で迷宮入り口は無理だったみたい。マオくんだけ運べなかったのはわざとじゃないから」


半泣きでミーナが俺に抱きつく。そうか、怒っていたわけじゃなかったのか。


「置いてかれたかと思ったよ」


「置いてくわけないじゃん。マオくんだけは置いてかないよ」


必死に俺に訴えてくるミーナが可愛いくてキスをした。


「うん」


ミーナの涙を指でふきとって、俺たちは迷宮入り口に転移した。


「あら、思ったより早かったわね。もっと2人で楽しんでくるかと思ったのに」


カルさん……あなたは信用のおけない人ですね。リンが俺に飛びついてくる。


「御主人さまを置いてくなんて、ミーナは冷たい人なんです」


「まぁ、そう言ってやるなよ」


俺は、リンの頭を撫でてやる。リンはふにゃっとして俺に体を預けてきた。


俺は空いてる手でミーナの手を握った。


そして、フラウの街まで戻ることにした。


と言っても帰りはミーナの転移で移動するだけ。転移3回目で街の入り口に着いた。


今度は誰かを置いてくことは無かった。俺たちは、久し振りに宿屋に泊まる。


部屋は2部屋借りることが出来た。2人、3人でわかれるいつもの部屋割だ。


オルガ頑張れと心の中で応援してやった。風呂に入った後は、3人でベッドに寝転がった。


やはり宿屋はいいな。今日は疲れたのだろう、ミーナは早くもウトウトし始めた。


逆にリンは元気いっぱいで俺に甘えてきていた。


ミーナとリンの頭を撫でていたら、2人とも気持ちよさそうに寝てしまった。


そんな2人を見ていたら俺も知らぬ間に深い眠りについていた。


次の日の朝、1階の食堂で朝食をとっていると、ラーシャさんたちがやってきた。


「ミーナさん、おはようございます。隣で朝食よろしいでしょうか」


「ラーシャさん、おはようございます。席は自由なのですから、ことわりをいれなくても大丈夫ですよ」


「いえ、勇者の横で食事とか緊張するじゃないですか」


「それを言うなら姫さまの隣も緊張しますよ」


2人は互いに顔を見合わせクスっと笑った。リンは俺の隣でまだ半分寝ている状態だ。


「ねぇ、ミーナさん。わたくし達は城に戻って今回の報告をしなければならないのですが、ぜひミーナさんたちも同席していただけないでしょうか」


「えぇっ」


驚いたミーナがこちらを見る。何を驚くほどのことでもないだろう。俺はコクリと頷いた。


「わかりました。お邪魔でなければヘルメド城に同行しますね」


「お邪魔だなんてとんでもない。勇者さまのパーティがいなければ、とても解決などできませんでしたよ。それでは、昼食を済ませたら馬車で出発でよろしいでしょうか」


「えぇ、それまでに準備しておきますね」


朝食を終えた後、俺たちは荷物の整理を行った。


そうは言っても普段はアイテムポーチに入れているので、ほとんどすることはない。


オルガは迷宮99階層で採れた鉱石を大量にポーチに詰めていた。


都市ヘルメドに着いたら鍛冶とかするのかな。なんかオルガがワクワクしているように見える。


都市ヘルメドまで転移で俺たちだけ移動ができるのだが、今回は勇者一行と出会って協力して解決したという話にするため、馬車で移動することとなった。


馬車で移動しても2日ほどの距離に都市ヘルメドがある。


フラウの街を出発して1泊野営したら、次の昼前には無事都市ヘルメドに着いた。


俺たちは、ラーシャさんが予約してくれた宿に泊まることになった。


ヘルメド王と話をするのは、翌日昼ということなので、1日時間が空いた。


オルガはヘルメドの鍛冶屋に行って鍛冶をするそうだ。


俺はミーナと俺の武具についてオルガに作成の依頼をした。


カルさんは今回もオルガには付いていかない。


そこで俺はカルさんにリンのめんどうを見てもらえないか頼んだ。


カルさんは意味ありげに俺の顔を見てニヤリとして、しかしお願いを聞いてくれた。


「リンちゃん、ちょっとおいで。おねぇさんが男を虜にする方法を詳しく教えてあげるわよ。特にマオさんの弱点とか」


えぇ~、俺の弱点て何かな、気になる。


カルさん、リンはまだ若いのだからあまり変なことは教えて欲しくないなぁ。


リンは目を輝かせて、カルさんのもとへ向かった。


まあ、半日くらいなら預けても大丈夫だろう。これでようやく2人っきりになれる。


「ミーナ、約束の時間だ。2人でデートしないか」


ミーナはハっとして俺の顔を見つめる。なんか目が潤んでいるんだけど。


「嬉しい。覚えていてくれたんだね」


ニッコリ笑ったミーナの笑顔はとても眩しい。


俺はミーナと恋人繋ぎをして都市ヘルメドの中を歩き回ることにした。


さて、ここで早くも問題発生だ。俺は前世でデートなどしたことがないのだ。


つまり、デートで何をするのかわからない。


遊園地や映画館がこの世界にあるわけでもなく、公園のベンチさえもない。


俺はどうすればいいのか悩みながら歩いていた。


「あのね、マオくん。私デートって実は初めてなんだ。だから何していいのかよくわからないの」


おぉ、ミーナも初めてだったのか。なんか嬉しいな。ここは正直に俺も話そう。


「ミーナ。俺もデートって初めてなんだ。わからない者同士、思いついた所へ行こうか」


「うん」


ニッコリ笑うミーナは天使のようだ。昼頃ということでまずは食事をするのがいいかな。


「あそこに見えるお店で食事にしよう。のども乾いたしね」


「うん」


ミーナはうんしか言わないなぁ。いや幸せそうな顔しているからいいけどね。全く不満はありません。


俺たちはオープンテラスのある店で飲み物と軽い食事を注文した。


食事をしながらも目と目が合ったりして、お互い恥ずかしながら顔を背けて照れたり、また見たりして、周りから見たらバカップル120%であっただろう。


ミーナは薄いコートみたいのを羽織っているけど、その下は防具もつけていて、剣だって持っている。


勇者だから街中ではいつもそんな恰好だ。


女の子なんだから、もう少し可愛い服とかも着たいと思っているんだろうな。


次は裁縫屋に行ってみよう。食事を終えて、俺はまたミーナの手を握り歩き始める。


特に行き先は言ってないけど、ミーナは一緒に歩いてくれた。そして、裁縫屋に着いた。


「マオくん、ここは?」


「ミーナに似合う服をさがそう。1着俺からプレゼントするよ」


「マオくんからのプレゼント…」


ミーナが固まってしまったので、手をギュッとしてから店に入った。


「いらっしゃいませ」


兎人族の店員が声をかけてきた。どんどん試着も薦めてくれる。


ミーナは気に入った服を順番に着て、俺に感想を求めてくる。どれも似合っていて困る。


「もぉ、マオくん全部褒めてるよ。それじゃあ、どれがいいのかわからないんだけど」


「いや、実際どれも似合っていて感想に困るぐらいだよ。あ、でもあえて言うのなら今着ているのがいいね」


「え~この服少し露出度高めだけど。男性ってやはりこういうのが好きなのかな」


いやいや、露出度高めって普段鎧とか着ているからそう思うだけで、世の中の女性は普通に着ているレベルですよ。


「ミーナに凄く似合っているよ」


ミーナは俺の顔と服を交互に見ながら何か考えているようだったけど決心したようだ。


「マオくん、わたしこの服がいいかも」


「わかった、じゃあ店員さん会計お願いします」


せっかくなので、武器防具はポーチにしまい、今は身軽な恰好でミーナはデートを続けることにした。


服装を変えたことによりミーナの可愛いさが更に引き立ち、一緒に歩いているにもかかわらず、男性の目がミーナに集まっていたのを感じた。


「少し恥ずかしいかも」


「仕方ないさ、みんなミーナが可愛いから見てしまうんだ。そんなミーナとデートできる俺は幸せ者だ」


「え~ミーナも恰好良いマオくんとデートできて幸せだよ」


今はツコミ役のカルさんがいないから、バカップルの会話はその後も続いてしまった。


そうして歩きながら2人でデートを楽しんだ。


「そう言えば、マオくん。わたしの言うことひとつ何でも聞くって言ってた」


「あぁ、言ったよ。出来ることなら何でもいいよ」


別に一つでなくても問題ない。ミーナの言うことならほとんど聞いてしまいそうだ。


「うーんと。そしたらね、私とずっと一緒にいてくれるかな」


「そのお願いは聞けないな」


俺が即答するとミーナが石のように固まった。

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