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第三十一話 勇者ミーナ初めてのデート-2-

人生初のデートで右も左もわからない二人が、何となくイチャイチャしながらも過ごしていたのだが俺の一言によって場が氷ついた。


しまった完全なる言葉足らずだった。


「ミーナ勘違いしてるだろ。俺がミーナの側にいることは俺の中では決定事項なんだから、ずっと一緒にいるっていうのはお願い事にならないんだ。他のお願いにしてもらえるかな」


ミーナは俺が一緒にいるのが嫌だと思って断られたと考えていたのだろう、そんな訳はない。


石のように固まったミーナだったが、俺の決定事項に満足したのか何か考えはじめた。


「そ、そうなんだ。マオくんの中では私と一緒にいるのは決定事項なんだね。先に言ってくれないとわからないよ~」


俺の腕につかまってきて甘えてくるミーナ、あ、当たってます。ドキドキが止まりません。


「あ、お願い思いついた。マオくんは、わたし以外の女性とベタベタしないこと。どう?」


え~俺からベタベタしたことなんて無いけどな。リンとかのことを言っているのか。


「俺からはベタベタしていないけど、ベタベタされるのも駄目ってことかな」


「あ、そう言えばマオくんからベタベタするとこって見たことないかな。そうか、周りが放っておかないのか。う~ん、ベタベタされてるの見るのは嫌かも。できるだけ、そういう時は逃げて欲しいな」


「妹のササとかでも?」


「ササちゃんはいいよ~。妹だし。私だってササちゃん見たらベタベタしたくなるし。うん、ササちゃんは全然OKだよ」


ミーナ、よだれ、よだれ。


「あと俺の母親もくっついてくるかも」


「あぁ、お母さんね。お母さんマオくんラブだよね。お母さんは、マオくんからベタベタしないなら気にしないよ」


「俺から母親にベタベタしたらそれはマザコンだよ。母親のタックルには、いつも苦労しているんだ。ミーナは家族なら気にしないってことなんだな。後はリンとかかな?」


「リンちゃん! まさにわたしが言いたいのは、リンちゃんです。リンちゃんだって子供だし、わたしを敵視しているみたいだけど可愛いと思うし、嫌いじゃないんだ。ただね、わたしよりもマオくんとベタベタしているみたいで、そこはストレス溜まっちゃいます」


リンは所かまわず俺に寄り添ってきたりするから、ミーナからしたら嫉妬するんだろうな。


「リンには、ちゃんとミーナの前で言っておくよ。だから、取り敢えず俺からはベタベタしないというお願いを聞いておくよ。あ、もちろんミーナは別だけどね」


俺の片腕に抱きついたままのミーナを空いた手で引き寄せ軽くハグをする。


くんくんしてミーナの匂いを嗅ぐと甘くて美味しそうな匂いがした。


「ミーナいい匂いだ」


「もう、マオくんのエッチ。でもマオくんの匂いも何か甘い匂いがする。マオくんから離れられなくなるよぉ」


こんな可愛い彼女ができて、転生して本当良かった。ミーナと結婚して、今回の人生は幸せに生きるぞ。


そう考えながらしばらくハグしていた俺たちは近くを通りかかった子供たちに冷やかされるまでバカップルのままだった。


夕方頃になって、俺たちは宿の方へ戻っていった。もちろん手を繋いだままだ。


宿屋に着くと、カルさんとリンが1階の受付スペースに置いてある椅子に座って話をしていた。


すぐにリンと目があった。これは飛びついてくるな、と思っていたがリンは座ったままニコリと笑っただけだった。


おぉ、珍しい。カルさん、何か良いこと話してくれたのか。


「ただいま、リン。カルさん、リンの世話をしてもらってありがとうございました」


俺は、リンの頭をポンポンと撫でてやり、カルさんにお礼を言った。


リンは満足そうに俺を見ていた。なんかおとなしくてちょっと怖い。


「あら、いいのよ。リンちゃんとは、色々お話出来て楽しかったし、マオさん達2人も楽しそうで良かったわ」


カルさん、本当良い人だ。今度ちゃんとしたお礼をしてあげたいな。


そんな事を考えていたら、ラーシャさんが宿屋にやってきた。


「あ、ミーナさん。ヘルメド王との謁見の件なんですが、明日朝食後にお城の方へきていただけないでしょうか。私が案内いたします」


「わかりましたラーシャさん。わざわざすみませんね」


「いいえ。あ、今日は私もこちらの宿に泊まらせていただきます。というか皆さんの部屋が大部屋1部屋しか取れなかったので私もご一緒させていただきます」


おや、一部屋に何人詰め込むつもりだ。ベッドとか大丈夫だろうか。


「マオさん、今日オルは帰ってこないと思うので一部屋でも大部屋なら大丈夫だと思いますよ」


カルさんが俺の考えを読み取ったのか、そう言ってきた。いや、オルガ帰ってこないの。


鍛冶に夢中なのだろうか。夕飯を宿屋の食堂で済まし、俺たちは大部屋に案内された。


確かに広い。しかし、ベッドはWベッド2つである。


「私は、ミーナさんと一緒に寝てみたいです」


ラーシャさんが、いきなりトンデモないこと言ってきた。


いや、確かに宿の予約とか代金とかラーシャさん持ちなので文句など言えないのだけれど、ベッド2つで

その提案は厳しいのではないのかな。


どう分けるんだ。


「それなら私もミーナさんと寝ようかな。なかなか一緒に寝る機会がなかったしね」


カルさんも話に乗っちゃたよ。と言うことは、リンは? 流石にベッド1つで4人は無理。


「よろしくお願いします御主人さま」


ペコリと頭を下げるリン。いや、何をよろしくするのさ。


ミーナの視線が何となく痛い。でも大丈夫。


俺からはベタベタしないから、それは守る。


そんなわけで3人と2人に分かれてベッドに入って寝ることになった。


「御主人さま、手を握ってもよろしいでしょうか」


「え、ああ、いいよ」


いつも勝手に握ってくるのに、わざわざ聞いてくるとはどういうことだ。


「ありがとうございます」


ニコっと笑ってリンが控えめに俺の手を握ってきた。なんかそんな挙動が可愛いと思ってしまった。


上目使いで嬉しそうな顔をしている。


「えへへ、御主人さまと一緒だと嬉しい気分になります」


おやおや、嬉しいこと言ってくれる。あれ? もしかしてこれカルさんの策略か何かか。


リンの対応が俺好みになってる気がする。


ヤバイ、このままだとヤバイ気がする。こういう時は早く寝るに限る。


「おやすみ、リン」


そう言って早目に眠りにつくことにした。


隣のベッドでは、女子会が開催されていて少し騒がしかったので中々寝ることができなかったが、次第に眠りに落ちていった。


リンが大人しかったのは、少し気にはなったが眠れば勝ちだ。


……そう思ってた頃がありました。


朝、目を覚ますと何だか体が重い。リンだ。リンが俺の体の上に乗っている。


しかも裸になっているじゃないか。


アウトぉー。この状態はアウトです。


ステータスを魔眼で確認すると状態が「御主人さまに無我夢中」とかいう訳の分からない状態になっていた。


コイツ、俺が寝ている間に絶対キスしやがったな。


リンは俺と年は1つしか離れていない。子供ではなく、大人でもない、そんな年ごろなのだ。


うん、何が言いたいかと思うよね。ずばり密着している肌が気持ちいいのだ。


俺は決してロリコンではない。だが、裸の女性と肌を合わしたことなど前世でもないのだ。


女性の裸とは、こんなにも触り心地が良いものなのか、初めて知った。


しかし、とにかくマズイ。この状態は危険極まりない。(特にミーナ的に)


俺は、そぉーっとリンの服を着せていく。見えてしまうものは勘弁してもらいたい。


なるべく音を立てずに静かにだ。隣のベッドは、まだ沈黙している。


遅くまで起きていたのだろう。しばらくして何とかリンに服を着せることができてホっとした。


隣のベッドを見るとカルさんがこちらを見てニヤニヤしている。


絶対、この人の入れ知恵だ。もぉ、カルさん頼みますよ。俺はトホホな顔でカルさんを見た。


朝食の時も魅了効果は切れていない。リンがやたらとベタベタしてきた。


俺はミーナに鑑定スキルでリンを見てもらい状況を説明した。


「今、言っても仕方がないから魅了切れてから言うね。悪いけどそれまでは我慢してな」


「むぅ。リンちゃんズルイ。寝てるところ襲うなんて卑怯だ」


ミーナも魅了状態のリンに文句を言っても仕方ないと思ったのか、それ以上は言わなかった。


朝食を食べ終わってもリンの状態は変わらなかった。魔淫スキルも強力になったものだ。


リンは俺の事がたぶん好きなのだろうから、魅了はされないと思うが、魅了効果によって本来の欲求が我慢できない状態なのだろう。


それでも何とかヘルメド王に会う前に魅了効果は無くなった。


「リン、昨日は俺が寝ている隙にキスをしただろう。勝手にそんな事をするなら2度と一緒には寝ないからな」


俺は皆の前でビシっと言ってやった。


リンも勝手にキスして、その後の事を覚えているんだろう。


恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にしながら自分のしたことを反省したみたいだ。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


何度も泣きながら謝ってきたが、俺の聞きたい言葉はそれではない。


「もう勝手にキスしたりとかしません。許してください」


そうだ。それが聞きたかったんだ。俺はリンの頭をポンポンと軽く叩いた。


少し落ち着いたリンから離れミーナに近づき手を握った。


さあ、ヘルメド王に会いに行こう。


……何か忘れているような気もしたが。宿屋を出てすぐに気づいた。


オルガだ、オルガがいない。


と思ったら前方から見慣れた影が見えた。オルガ帰ってきたか。


しかし、めちゃめちゃ疲れているぞ。お前、夜通し鍛冶してたな。


オルガは、カルさんのところへ向かっていき、何かボソボソ話をしていた。


カルさんは、頷いて治癒Ⅳをオルガにかけていた。するとオルガのやつれた顔が活き活きとしてきた。


腹は減っているみたいだったが、死にはしない。


俺たちはラーシャさんに連れられてヘルメド城に案内された。今回はリンも一緒に案内された。


ヘルメド国は差別がひどくないようだ。


そしてヘルメド国王のもとに着いた。先頭はラーシャ姫で後ろに俺たち5人が並んでいる状態だ。


みんな片膝をついた姿勢で王の前で頭を下げていた。


「おぉ、ラーシャよ無事帰ってきて何よりだ。早速だが頼んでいた件について報告してもらおう」


「はい、国王様。魔物の数が増えていた原因ですが、ヘルメド迷宮に魔王が発生していました。この魔王のスキルにより魔物が増えていたと思われます」


「なんと、魔王が迷宮にいたのか。よく無事に帰ってこれたな。これは、アークザリアからの要求の前に勇者(見習い)を探さないといけないな」


「国王様、心配には及びません。私の後ろにいるパーティが勇者ミーナ率いるパーティでヘルメド迷宮の魔王も討伐していただきました。私もこの眼で見ていたので間違いありません」


「えっ……」


国王が固まるのも仕方ないだろう。魔物増加の原因を解明するどころか解決までしているのだから。


「ゆ、勇者のパーティなのか。勇者(見習い)ではなく…」


驚いたのはそこだったか。


「はい、勇者ミーナのパーティは既にカーマ迷宮にて魔王を倒し、そして魔物が増加しているという噂を聞いて我が国ヘルメドの調査に協力していただいたのです」


「そうか、勇者ミーナ殿。我が国ヘルメドを救っていただき感謝する。何かお礼をしなければならないところだが、我が国には国宝と言えるようなものがない。うむぅパーティを開催して招待しても良いのだが、時間がないし。そうだ、ラーシャをミーナ殿のパーティに加えると言うのはどうだろうか。ラーシャはこう見えても我が国一の双剣使いだ。パーティの役に立つはずじゃ」


一瞬ラーシャさんの顔が喜んだ顔をしたが、すぐに暗い顔になった。


ラーシャさんもレベルが上がり、相当強くなったけど勇者パーティではまだまだ戦力にはなれない。


「ヘルメド国王のお気持ちは嬉しいのですが、パーティの人数は今の5人がベストと考えています。バランスよく立ち回るには人数が増えると難しくなるからです。私達はお礼をもらうために魔王と戦っているのではありませんから、ヘルメド国王の感謝の言葉だけで十分です」


ミーナが国王に対してやんわり(?)と申し出を断った。


あれだ、絶対これ以上女性を増やしたくないだけだ。


俺からはベタベタしないとあれほど言ったのに信用ないのかな。


少ししょぼくれていると、カルさんがこちらを見てニヤニヤしていた。


いや、ラーシャさんが加わらなくてガックリしている訳ではないからね。


「勇者ミーナの言う通り、今回私はパーティに同行させていただき、大変貴重な経験をしました。魔王も初めて見ましたが正直恐怖で身体が全く動けませんでした。しかし、パーティの皆様は魔王相手にもひるまず、素晴らしい動きで魔王を倒したのです。私ではまだまだ足手まといでバランスよく立ち回るなんてことはできません」


ラーシャさんも自分のレベルを把握しているからこそ、俺たちとの差を感じているのだろう。


恐らくパーティに加わりたいけど足手まといとなるから加われないと。


「ふむ、確かに勇者パーティの者からは並々ならぬ魔力等を感じる。ラーシャも相当強くなって帰ってきたことは分かるがそうかそれ程か」


国王はここで咳払いをして更に話し出した。


「先ほどパーティする時間がないと言ったが、実はアークザリア王から勇者(見習い)をアークザリア城に連れてくるよう依頼されていたのだ。勇者(見習い)が我が国ヘルメドにいるであろうことは情報が流れていたらしい。ラーシャに探してもらおうと思ったがまさか勇者を連れてきているとは思わなんだ。

アークザリアの兵士達も準備をしているので、明日にでもアークザリア城に向かってもらおう」


ヘルメド国王は、さらさらっと何か書面を作成しミーナに渡した。


「勇者ミーナよ、この度は本当に感謝する。我が娘ラーシャを守りながら魔王の討伐お見事である。今後ヘルメド国に来た際にはこの文書を見せるがよい」


ミーナが受け取った文書には、勇者一行に対しては最大限の敬意を払い無償で応対することと言ったようなことが書かれていた。


いわゆるフリーパスだ。


国王直筆のフリーパス。これは凄く価値があるものではないだろうか。


俺が初めてミーナとデートしたこの国に結婚した後も来てみたいなと思った。


そして翌朝、俺たち5人はアークザリアの兵士達の案内によって馬車に乗り込んだ。


出発するときラーシャさんが見送りにきてくれた。


ボロボロ泣きながら俺たちを見送ってくれた。こちらも何人かもらい泣きしてしまったではないか。


もう少し滞在出来たら良かったな。


数日間馬車に揺られ、途中魔物をサクサク狩りながら俺たちは都市アークザリアに着いた。


泊まる宿はアークザリア国王の方で準備してくれていた。


何と個室だ。5部屋も部屋を押さえるとはさすがだ。


そしてアークザリアに着いた日に兵士から俺たちに告げられた。


「明日、国王との謁見を行う。対象者は勇者ミーナ1名。明朝迎えに参ります」


え? 俺たちは国王と謁見できないの。というか城さえも入れないらしい。


ミーナ1人でって、まあ何事も起きなければ大丈夫だけど寂しいなあ。


ミーナも1人で行くのは心細いのだろう。チラチラ俺の方を見ている。


俺が付き添いで一緒に行ってもいいか尋ねたがあっさり断られた。


がっくりしたミーナの後ろでリンの目が輝いていた。



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