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第十七話 勇者(見習い)ミーナの受難-2-

私の人生は15歳を迎えた時から、大きく変わった。


まさか自分が勇者になるなんて、それどころか魔王の息子のマオくんを好きになるとは1年前は微塵も思っていなかった話だ。


そんなマオくんに連れられて、魔王である父上(笑)に会ったり日々刺激のある毎日を送ることになった。


マオくんは、私が勇者になるのを手伝ってくれるということで、一緒に冒険することになった。


嬉しい。


まだ、照れがあって自分の気持ちをうまく伝えることはできないけど、マオくんは年下なのに頼りになるし、パーティメンバーになってくれて良かった。


魔王城に着いたその夜、マオくんに強引にベッドへ連れ込まれた。


いや、まだ私たち早くない? 知り合ったばっかりだよ、と焦っていたのは私だけでした。


マオくんは、とっても紳士でした。そんなところも大好き。


でも、強引に来られたら、お姉さんは断ることできません。



魔王に飛ばされ、私たちはどこかの森にいた。


そこで、奴隷商人を襲う山賊と奴隷の亜人に出会った。


既に商人達は殺され、奴隷の亜人も傷だらけの状態だ。


あまりの惨状に私は、山賊目掛けて飛び出し、首をはねていった。


結局、生き残っていたのは、檻の中で魂が抜けたかの状態のエルフの少女だけであった。


マオくんは、そのエルフの少女に近づき、こちらを1回見た。


きっと、魔淫スキルで元気にしたいということなのだろう。


先ほどからの治癒で身体の傷は治ったけど、心は傷ついたままだ。


私は、正直言うとマオくんが他の人とキスをするのは良く思わないのだけれども、今回は仕方ない。


コクリと頷いた。


そしてマオくんはキスをした。1回、2回、3回……ちょっと待って、何回キスするの。


「何で何回もキスしてるの。ズルイ。」


思わず声に出た。小さい声だからバレてないよね。


私がちょっと焦っていたら、エルフの奴隷の首輪が光始めて、青色になった。


え~。あれって奴隷契約じゃない。マオくん、どういう事。


私はマオくんのところへ駆けて行った。


奴隷エルフは、リンという名前だった。


リンちゃんの精神を治すためにマオくんは何回も魔淫スキルを使用してレベルが上がったらしい。


そして、魅了効果時間に気付かれた。


あ~~っ。ばれた。完全にばれた。


魔淫スキルのせいでマオくんが好きになってるフリしてたのに。恥ずかしいよ。


「可愛いよ、ミーナ」


そんな私を後ろからぎゅっとハグしてくれるマオくん最高です。


リンちゃん、空気読んで邪魔しないでね。


リンちゃんと口喧嘩していたらマオくんにキスされました。


ズルイ。魅了効果発動だけど、既に魅了されているので私には効きません。


でもマオくんにキスされたから、大人しくしておこうと思いました。



リンちゃんは、小さいのに凄く強いです。珍しい弓魔師のJOBを持っていました。


私たちはカーマ国領にいて、近くの都市カーマに向かいました。


そこの冒険者ギルドで冒険者登録です。私がリーダーです。


冒険者ランクGから開始です。


パーティ登録のとき、パーティ名を決めるのですが、マオくんが「マリオカミ」とか言うのですが、意味がわかりませんでした。


私は、頭にパッと浮かんだ「アイリース」、決して大山さんから聞いたのではないのですってあれ? 私も意味がわかりませんね。


ようやく登録が終わると、私のJOBが「勇者(見習い)」であることがギルド受付さんのせいでばれてしまいました。


すると大勢の男の方に囲まれ、何やら言葉をかけられていたのですが、少し怖いです。


ふと、マオくんを見るとおいでおいでしてるじゃないですか。


私は、犬のようにマオくんに飛びついていきました。マオくんの傍にいると落ち着きます。


ギルドを出ると、リンんちゃんが不穏な空気に気付きました。


どうやら大量の魔物がカーマの都市に向かってきているそうです。


私たちは、カーマの唯一の入り口の大きな門のところへ行きました。


すでにカーマ国の騎士団や魔術師団の人たちが戦っていました。


騎士団の人たちのレベルは高い人が多いのですが、魔物の数が多すぎです。


そこにマオくんが、ケガを治した人に魔法1発撃ってもいいか、と聞いていました。


マオくんは「ファイア」って言ってましたけど、ちいさな町を破壊できるくらいの威力です。


火の球とかいうレベルではないです。


やはりと言うか、騎士団の人に捕まって王様と謁見することになりました。


そこで、あやうくマオくんを魔術師団へ引き抜かれそうになりましたが、何とか回避しました。


それどころかパーティメンバーを新たにゲット出来ました。


オルガさんとカルさんです。2人は婚約しているそうです。


いいな~、私もマオくんと結婚できるかな~って何を考えているのでしょう。


私、本当にチョロイ女みたいじゃないですか。


パーティメンバーが増えて、戦力アップしたので、これで迷宮攻略しながらレベル上げも順調に出来ると思ったのに。


マオくんは、カルさんのことじっと見てたり、リンちゃんをお姫さま抱っこしたり、どういうことなの?


私のことは気にならないの?


前言撤回。マオくんは私に夢中ですね。


私と2人きりでデートしたいと言ってました。2人っきりですよ。


どこ行くつもりなんですか~。ヤバイ、顔のニヤニヤが止まりません。



そしてカーマ迷宮。完全に油断していました。当たり前です。


迷宮の中で戦闘している最中に「今日はマオくんに何の料理を作ってあげようかな」とか考えていてはいけません。


でも、サクサクと40階まで進んでいたので、油断も仕方なかったです。


そして45階で私は魔族にさらわれました。


一瞬何が起こったのかわかりませんでした。


転移魔法でしょうか。


転移先には、マオくんのお父さんより小さめの、そこそこ威圧感のある魔族がいました。


あれが、魔王ね。


鑑定スキルで確認してみたが、やはり魔王だった。


レベルは48と少し低めだ。新しい魔王なのだろう。魔王アルビドが私に近づいてきた。


残念ながら、私の両手は後ろへ回され魔族がしっかり私を押さえていた。


「可愛い人間もいるものだな。気に入った、お前はペットにしてやる」


魔王アルビドはそう言いながら私の頭を撫でてきた。


何、勝手に私の頭を撫でているの。私の頭を撫でていいのはマオくんだけなんだから。


そう思っていたのは最初だけだった。しばらくすると撫でられることに抵抗は感じなかった。


なぜ? 私は自分のステータスを確認した。


状態:洗脳(中度)だ、やられた。


おそらく触れた相手を洗脳状態にできるのだろう。


しばらく頭を撫でて満足した魔王アルビドが私に言った。


「お前の一番大事なものは何だ」


大事なもの? う~ん難しいな。他人をおもいやる心とかかな。


「アルビド様が一番ですぅ~」


え? 私何言ってんの。変な媚びた声を出して。


おかしいよ。何これ、思考と体が別々になってるみたい。


周りで魔族たちが下衆な笑いをしている。


いや、思考も何か違和感がある。魔王に対する嫌悪感が全くない。


何これ、怖いよ。マオくん、早く来て。私おかしくなっちゃいそうだよ。



まだ私は冷静に考え、行動できる。3割ぐらいだけど。


残り2割は、思考は普通にできるけど身体が別行動をとる。


そして5割は完全に洗脳されている。まずい、自由がどんどん減っている気がする。


自我のあるときに動こうと思っても洗脳状態では、主に対して危害を与えることは出来ないことに気付いた。


だから私は、剣も盾も持っている状態だけど、魔王アルビドに攻撃できないようだ。


もし、戦えたとしても私の方がレベルも経験も少ないし、勝つことはできないかもしれない。


もう、私にはマオくんたちに助けにきてもらうしか仕方がなかった。


マオくん、早く助けに来て。私が私で無くなる前に来て。



……本当まずいです。もう、私の意思と行動が同じことはありません。


7割ぐらいは意思も行動も私ではないようです。


というか、今の私のこの意思自体が本物かどうかも分からなくなってきています。


先ほど四天王と呼ばれる魔族がどこかへ移動しましたが、私は魔王の足元にいます。


何してるんだろ、私。


魔王の足をさすったりして、何か自分が変な顔しているように思えます。


しっかりと集中していないと自分の意思が消えそうで不安です。


しばらくして、私は自分がレベルアップしていることに気付きました。


きっとマオくんたちが四天王とやらを討伐してくれたんだと思います。


もうすぐ、マオくんが助けにきてくれるはずです。


私が魔王に対して唯一言えた本音が実現するはず。もう少しだけ意識を持たせるんだ私。



ついに魔王のいる階にマオくんたちが来てくれました。


こんな恥ずかしい恰好を見られるのは凄く悲しいですが、それよりも助けにきてくれたマオくんに早く会いたいです。


魔王は、スキルを使ってアンデッドを生成しています。


みたところレベル低めのアンデッドで、マオくんたちのパーティなら全く問題ないでしょう。


少し安心していたところに魔王から声がかかりました。


「あいつらは、お前と儂の仲を邪魔しにきたようだぞ。始末しにいってこい」


はぁ? 魔王、何言ってるのアンタ馬鹿でしょ。


「私とアルビド様の仲を邪魔するものは排除します」


えぇ~。私は大馬鹿者ですか。


マオくんに何言っちゃってるの。マオくん心なしか茫然としてるよ。


そんなマオくんに本気の剣筋とか。自分の意識がある分、ツライわ~。


私、本気でマオくん攻撃してるよ。マオくんも私と戦うのは凄くやりづらそうだ。


それでも私の攻撃を槍で避けながら、魔王の方へと近づいている気がする。


さすが、マオくん。そのまま魔王も倒しちゃってください。


「アルビド様には近づかせません」


もぉ~っ。何言ってるの私。そんなに必死に剣を振り回さないでください。


魔王に本気見たいじゃないですか。実際身体は本気で動いてますけど。


「待ってろよミーナ。魔王を倒して洗脳を解いてやる」


それでもマオくんは優しいです。


ダメです、今ならマオくんの言うこと何でも聞きそうです。


身体は全く言うこと聞いてくれませんが。


マオくんは私の剣戟を見事に捌いて、魔王に近づきました。


魔王は魔法をマオくんにぶつけようとしているみたいでした。


マオくんに中途半端な威圧や魔法は効きません。


この魔王もファイアのみの魔法だし、レベル50くらいのファイアは、マオくんなら大丈夫でしょう。


って私も狙われてますよね。


ファイアは火の球なんだけど、レベル50は大きさが違いますね。大きいです。


このままでは、私は直撃でまずいかも。


そう思った瞬間、マオくんが私の前に立ち、庇ってくれました。


マオくんも少しはダメージがあったみたいだけど大丈夫そうでした。


マオくん、ありがとう。未だに剣を振り続けている私を許してください。


マオくんが、お返しにとファイアを魔王にぶつけました。


ファイア魔法を使う者は、マオくんもそうですが、ほぼ火耐性も持っているので効きづらいのですが、マオくんの魔法は半端ないです。


魔王は、ぐぉぉとか叫びながら、身体が焼けただれていってます。


このままでは、魔王の黒コゲが出来上がりそうな勢いで燃えてます。


さすが、マオくん。強いです。頼りになります。


そんなマオくんが私の両腕を掴みます。え、何? 怒られるのかな。


マオくんは、私に顔を近づけて魔淫を発動してきました。


「あ……」


すると、頭の中のもやみたいのが消えて、身体が思うように動かせるようになりました。


もしかして、洗脳という状態に魅了を上書きしたから、元に戻ったのかな。


ステータスを確認してみると、状態:マオくんLOVEって、ナニこれ。


恥ずかしいよぉ。いや、実際そうなんだけど。


私はマオくんにぎゅっと抱きつき、「ありがとう、ありがとう」とマオくんにお礼を言い続けました。


でも、私はダメな娘です。


マオくんに助けられたのが嬉しくてマオくんが動けなくなるほどに本気でハグしてました。


まだ、魔王は死んでいなかったのです。


突然、何かが飛んできてマオくんの背中にそれは刺さりました。


矢みたいなものでした。その矢を受けたマオくんが力なく崩れ落ちるのです。


あれ? これってかなりマズイ状況かも。マオくんはピクリともしません。


それどころか、魔力も全く感じませんでした。


声をかけても返事がありません。


私のせいだ。私がマオくんを固定したから、攻撃をくらってしまったんだ。


治癒魔法のない私では、どうにもなりません。私はカルさんに向かって叫びます。


「カルさん、マオくんが大変なの。お願いこっちに来て」


カルさん達もほぼアンデッドを倒していたので、こちらに向かっている途中だった。


私は、マオくんをそっと置いて、死にぞこないの魔王の元へ向かった。


「ふはっはっは。魔力を枯渇し、体力も吸収し続ける魔法の矢をくらえば、誰も生きてられんわ」


何て危険なものをマオくんに撃ち込むの。絶対許しません。


魔王は、ボロボロの身体ではあったが、少しずつ再生しているようだった。


心臓を止めない限りは、魔王は不死身だ。私は、本気の剣で魔王を攻撃する。


動きが大分鈍くなっていた魔王に私の攻撃は面白いように当たった。


あんたなんて、マオくんよりずっと弱いんだから。もう細切れです。


魔王が途中何か喚いてましたが気にしません。切り刻んでやりました。


遠くでリンちゃんが、こちらを見ながらあわあわしてましたがそれも気にしません。


魔王の心臓も刻みました。残ったのはただの肉片です。


『おめでとうございます。勇者(見習い)Lv50になりました。JOBが勇者にグレードアップします』


頭の中に声が聞こえてきた。


そんな事よりも私はマオくんの状態が気になります。急いでカルさん達に合流です。

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