第一話
「リジー!マリア!エルル!ただいま!」
「……おかえりなさい。エネア」
エネアはエルルをギュッと抱きしめる。三人の女性の名を呼んだが、ここに居るのはエルル一人。
「もう前世の名前を呼ぶのはやめてくれないかしら」
「ああ、ごめん、ごめん。つい……」
この世界では、転生が当たり前にある。
エルルとエネアは今まで二度転生し、出会い、一生を共にしていた。
転生した人がまた出会う可能性はあまりない。
外見も違えば、育った環境も違う。前世の癖を多少引きずるくらいだし、見かけたくらいなら気づかないものだ。
それなのに、エネアとエルルは出会う。そしてわかる。エネア曰く、魂が反応するそうだ。ビビビッと。
エルルも悔しいことにエネアがわかる。いくら外見が違うとも一目でわかる。ビビビッと。
今世の出会いは学園の入学式だった。
エルルとエネアが目を合わせた瞬間、「リジー!マリア!会いたかった!」とエネアは駆け寄りエルルを抱きしめた。人前で。
「や、やめて!皆が見てるわ!
ファビオ!……じゃなくて、ラウル!じゃなくて、
…えーと、今は誰?」
「エネア」
「エネアね!わかった!わかったから離して!」
その場は何とかなったものの、同じ子爵クラスとは……。
「ねえ、エルル。あの人とはどんな関係なの?」
「……前世の夫」
「えーっ!」
幼馴染で同じクラスのシェリーは驚き、そんなことあるの!? と、興味津々に聞いてくる。
エネアとエルルは、今までに二度生まれ変わり結婚している。
一度目は、エルルはリジーという名の食堂の娘で、エネアはファビオという名の冒険者だった。
二度目は、マリアとラウル。市場の果実売りと商人。
「たまたまよ」
「また好きになったりするの?」
シェリーは無邪気に尋ねるが、エルルは頭を横に振る。
「前世は前世、今世は今世よ。まだ出会ったばかりだから分からないわ」
「そういうものなの」
「そういうものよ」
家に帰ると、既にエネアから求婚の申し込みが来ていた。入学式と説明会が終わったら直ぐ、姿が見えなくなっていたのはこのためかと、エルルは嘆息する。
「彼を知っているのか?」
父がエネアとの関係を尋ねる。
「前世の夫です」
「……そんな事があり得るのか?」
「あり得ました」
「よく気づいたな」
「お互いの直感です」
「……そうなのか」
子爵家同士で縁談は申し分ないが……、と言葉を濁す父に、
「前世と今世の私は違います。もちろん彼も。もう少し彼の為人を見極めてからお返事しても良いですか?」
と言うと、そうだなと父は頷き、
「……前世では幸せだったのか?」
と聞かれ、エルルは一瞬、間を置き、
「生まれ変わっても一緒になろうね、と言われましたが……」
「そうか」
「え、絶対嫌です。と断りました」
「そ……、そうか」
父は何とも言えない顔をして、求婚の手紙を引き出しにしまった。
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