11の4 天下平定
右府様(伊達政宗公二十三歳)は、島津義弘を撃ち倒した支倉長経殿(十九歳)に褒美をやろうと呼び寄せた。
「一番手柄の支倉を昇進させる。目付か、海軍奉行か、北海道長官か、何がよいか選べ」
「では、新しい海軍を創らせて下さい」
支倉殿は頭を下げた。
「よし、海軍奉行を任せる」
伊達家(いずれ幕府となるだろう)九州探題の伊達藤五郎殿と、与力の鬼庭殿、後藤殿を九州に残して、右府様は大坂城まで戻って来た。
大坂城には、秀吉の莫大な遺産があった。
たとえば一万両の重さである大法馬金が、八〇個。
金銀銭を合わせると、遠藤隼人の前世換算(現代)で一兆二〇〇〇億円だった。
東国には佐渡金山、伊豆金山、西国には菱刈金山、石見銀山などがある。隼人の未来知識で見当がついていた。
すでに全国の鉱山は、御公儀(=伊達家)のものと決めてある。
そしてこのお金を仙台城、江戸城、名古屋城、福岡城の建設および大学創立資金とする。
亘理重宗には、大坂城代を任せる。
白石宗実には、名古屋城の普請奉行を命じる。
小成田重長には、江戸城の普請奉行を命じる。
九月、京に戻って来た。
右大臣として参内し、後陽成天皇(十九歳)に「天下平定」を報告した。
陛下からは「大儀であった」と、ねぎらいを頂く。
関白左大臣の近衛信尹様(二十五歳)からも、祝いの品が届く。骨董の価値は分からぬが、名物茶器だった。
大老の片倉景綱は、天下と大名を指導せよ。
桑折政長に、若年寄を命じる。伊達家中の侍をまとめよ。
次々に右府様から指令が飛んだ。
右府様は、聚楽第の茶室に千利休を呼んで、お茶を喫した。
隼人も同席を命じられて、お茶を頂いた。
「茶器の良し悪しは分からぬが、利休殿の入れる茶は美味いな」
「そうですね」
隼人も納得した。
「隼人よ。乱は鎮めたが、この平穏が続くような策はあるか?」
右府様が訊ねた。
「軍事力を持つ大名を制御せねばなりません。もし右府様がこの世を去っても、秩序が維持できる組織が必要です」
「幕府か?」
「はい、具体的には、一国一城、参勤交代、手伝い普請です」
「あとで文書をよこせ」
「分かりました」
「利休殿の茶は美味い」
右府様は、将軍になる根回しを近衛竜山殿(五十四歳)と始めた。
鎌倉も室町も源氏将軍だったが、伊達家は藤原氏である。
系図では藤原北家から中村を経て、伊達家十七代目が政宗公だ。
「天下平定の実力と名門の家柄なので大丈夫でしょう」
近衛殿が裏で動いた。
十月三日、聚楽第の右府様に将軍宣下となった。
武家伝奏の勧修寺晴豊(四十六歳)が勅使となって現れた。
【 藤原朝臣右大臣 伊達藤次郎政宗を 征夷大将軍に任ず 】
末席で遠藤隼人は、緊張と喜びに震えていた。ここ数年間の思い出が蘇る。やんちゃな若様と、よく走っていたような。
衣冠束帯の右府様は、堂々としたものだった。天皇陛下からの太刀をしっかりと受け取った。
横を見ると小十郎殿は、黙って泣いていた。
(了)
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。
この物語は、2026年5月から9月に執筆しました。
着想から執筆の楽しい5ヶ月間でした。
前世の記憶が戻り、武家の少年から、現代の大人に少しずつ
言動も変化して行きました。
数年後に主人公は、大学で授業をするのでしょうね。
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なお、登場する歴史的人物や科学知識はフィクションです。
これからも精進して参ります。ありがとうございました。




