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第25話 魔王との対話、そして決戦

 不敵に笑う魔王に対して、警戒したまま近付けない私たち。


「安心しろ。油断させて不意を突こうなどとは考えておらん。我はただ純粋に話がしたいだけだ。…これから自分を殺すであろう戦士達とな。」


「逆に俺達がいきなり襲いかかったらどうするんだ?」


 コウの質問に魔王は一瞬目を丸くすると、本当に面白いものを見たかのように笑い出した。


「フハハハ!中々面白い事を言う。そんな事をする必要もあるまい。実力は貴様らの方が上なのだから。

 だがそうしたいのなら止める事は出来ぬよ。私の些細な願いは叶わずただ運命に従うだけだ。」


 私はカノンのように呪術にある『偽証看破』…相手が嘘を吐いていると分かる術が使えるわけではない。だが、目の前に立つこの男は恐らく本音で語っているであろう事が伝わってきた。


 残りの3人も同じように感じたのだろう。警戒は解かないが剣を下ろして魔王に近付いていく。


「…それで、話したい事ってなんなんだ?」


「そうだな。私としてはお前達の世界に対する興味は尽きないがのだが、さすがにそれを話す時間は無いだろう。

 しかしどうしても聞きたい事ある。…異世界の者よ。お前達が縁もゆかりもない国に味方して、我が国に仇なす理由はなんだ?」


「それ、前に引き抜きに時にも話したけど覚えてない?元の世界に帰るためだよ。」


 カノンが答えた。


「もちろん覚えている。自分と仲間達3人を元の世界に帰せるのならその場で王国を裏切っても良いとの返事だったな。嘘は言えないと思いそれは不可能だと回答したが。」


「カノン、そんな勧誘を受けていたのか?」


 ユキが驚いた様子でカノンに訊ねた。


「拠点にしてた要塞都市を攻略した後ぐらいにね。…私達が戦う理由は以前から変わってない。だからこの場で元の世界に帰せるって言うならこの場で王国軍を裏切ってそこで転がってる人達を燃やし尽くしても構わないよ。」


「カノン!?」


 飄々と話すカノンに何を言っているんだという視線を向けるコウとユキ。


「フハハハハ!それは面白い提案だ。しかし残念ながら異世界から戦士を召喚する方法はあっても還す方法はないのだよ。

 …少なくとも我が国には、な。」


「本当に残念。私も味方するならクソみたいな侵略を続ける王国より貴方達の方が良かったよ。」


 カノンがそう言うと魔王はギロリと睨みつける。

 

「我が国の民を最も殺した貴様がそれを言うか。」


「仕方がなかったんだよ。私達が帰るために必要だったんだから。貴方は私に対して誠実だった。だからこそ味方する事が出来なかったんだよ。私はゼロにはベットできないからね。」


「ふむ、それが貴様の戦う理由か。真っ直ぐで尊いものだ。それが叶わぬ時にどうなるか、見届ける事が出来ないのが残念だが。」


「…後悔はさせるつもりだよ。」


「フッ…期待しておこう。」


 魔王とカノンは何か通じるものがあるのか、お互い納得し合っている。私達は置いていかれているし、コウとユキに至っては混乱しているようだ。


「なあカノン、魔王とは初対面なんだよな?」


「直接会うのはね。さっきも言ったように前に勧誘を受けてたから、使い魔を通して直接声を掛けられたからそういう意味では会話は二度目。」


「マジかよ、知らなかった…。」


「ごめんね。黙ってた理由はもうすぐ話せると思う。」


 ショックを受けるコウ。私はカノンが黙っていた理由がなんとなく分かるから責める気にはならなかった。


「魔女との会話は満足だ。勇者と聖女、それに聖騎士だったか?お前達が戦う理由を聞かせてくれ。」


「その前に、いいか?俺達の理由を聞いたらお前が戦う理由も教えてくれないか。もちろん王として国を守る責務があるのは分かるか、正直戦争の勝敗はもう決している。ここで最後の1人になっても戦う理由を聞きたいんだ。」


「…よかろう。」


「俺は…俺も、元の世界に帰るためだ。愛する人と一緒に元の世界で幸せになるって決めている。

 もちろんこれまで10年共に戦ってきた王国騎士団と笑い合いたいって思いもある。この物語はハッピーエンドで終わらせるんだ。」


 コウは真っ直ぐに魔王を見据えて言い切る。


「俺も同じだ。これまでそれを目標に共に歩んできた仲間達と一緒に、元の世界に帰る。」


 ユキも同調した。


「なるほど。真っ直ぐな想いだな。最後は聖女だな。貴様も同じか?」


 私も同じだ。そういってこの場をやり過ごす事は出来た。しかし、今ここで正直な想いを吐き出さないのは酷くアンフェアになる気がしたので、嘘偽りのない理由を言う事にする。


「もちろん帰りたいからだけど、一番の理由はこの子の願いを叶えてあげたいからね。」


 そう言ってカノンの頭にポンと手を乗せる。


「私はこの10年、1番近くでこの子を見てきた。元の世界に帰りたい一心でどれだけ辛い思いをして来たか知っているの。他の何が叶わなくてもこの子の願いだけは…全員で元の世界に帰るって願いだけは叶わないといけないのよ。

 だから王国に味方するし、貴方を倒すわ。」


 私の答えに魔王は満足気に、だが悲し気に頷いた。


「いいチームだ。それが貴様らの原動力…私の敗因になったというわけか。勇者が言ったな、ハッピーエンドにすると。私個人としては貴様らに恨みはないし同情の念もあり、その願いが叶えば良いとすら思う。全く不憫なものだ。

 

 …だが、王としてそれを認めるわけにはいかぬ。


 勇者よ、我に問うたな。何故戦うのかと。王だからだ。いま私はこの国の未来のために戦い死んでいった同胞の亡骸の上に立っている。


 我の為に死んでくれた仲間達の為にも、負けられないのはこちらも同じ事。例え結末が変わらずとも私が諦める事は王としての矜持が許さぬのだ。」


 そう言うと魔王は立ち上がる。私達は武器を構えた。


「願いを聞いてくれて礼を言うぞ。もう交わすべき言葉は無い。あとは刃を交えて語り合おう。」


 魔王から途轍もないプレッシャーが放たれる。


「さあ!異世界の戦士達よ!その願いを叶えたくば我が命を超えてみせよ!」


「…みんな!いよいよ最後の戦いだ!」


 コウが気合いを入れた。


------------------------------


 結果的に私達は誰一人欠ける事なく魔王を打ち倒した…魔王の予言通りに。だが決して簡単な勝利では無く厳しい戦いであった。


 私達は丸一日戦っていた。魔王は剣技も魔術も超一流だった。聖剣の力を使いこなしたコウの攻撃を易々と防ぎ、聖盾で作られたユキの防御フィールドを破り、紅蓮でカノンの術はモノともせず、私が回復術を使う暇はほとんど与えなかった。


 全員が何度も瀕死の重傷を負いながらも死人が出なかったのは奇跡としか言いようがなかった。もしも誰かの実力がほんの少し足りなかったら負けていたのは私達の方であった。

 

 ユキが聖盾に秘められた切り札である「聖盾は破壊されるものの味方全員の傷を癒やし魔力を回復させる効果」を使い、その後コウが同じく聖剣の切り札である「聖剣が破壊され自身の魔力も全て消費するが、消費した魔力に比例した威力を出す光の斬撃」を放つ事で魔王に決定的な隙を作りだし、そこにカノンが全身を紅蓮の炎で包んだ強引な特攻を仕掛ける事でついに決着となった。


 戦いが終わった時には魔王城があった場所は瓦礫の山と化しており、戦いが始まった時に既に倒れていた王国軍は一部意識を取り戻したものは仲間を担いで逃げる事ができたが、多くの王国兵は崩れた城の下敷きとなった。


 魔王の亡骸は最後のカノンの攻撃の炎がそのまま燃やし尽くして炭となった。


 城の外で待機していた総司令官は「国王は魔王の首を望んでいたのに…。」とグチグチ言っていたが私達が睨みつけたら黙り込んだ。

 

 カノンがこっそり「向こうの命が尽きた時点で炎を消す事は出来たけど、死体を晒される事は向こうも望んで無いと思ったからね。火葬はこの世界の文化じゃ無いけど、せめてもの餞だよ。」と教えてくれた。


 また聖剣と聖盾が破壊された事についても総司令官は文句を言いたそうにしていたが、私達が睨んでいる事に気が付いたのかそれについては黙っていた。



「長かったけど、やっと終わったんだな…。」


 一旦攻略拠点に戻り、一息ついたようにコウが呟く。


「ああ、最終決戦だけあって辛い戦いだった。」


「しかしユキが合図もなく切り札を切った時はビビったぜ。お前の守り無しじゃ碌に攻撃を防げないってのに盾を壊しちまうんだもんな。」


「だけどコウとカノンが瞬時に合わせてくれると思ったんだ。あのままじゃどっち道ジリ貧だったしな。聖剣と聖盾が壊れたのは申し訳ないがアレ無しじゃ勝てなかったのは間違いない。」


「あとは王都に凱旋して元の世界に帰してもらうだけだな!」


 コウとユキはボロボロになった聖剣と聖盾を持って笑い合っていた。

 

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