069 昭和です。
ここは、飛行島です。
わたしはマオをスリングに入れて、たすき掛けにしました。
わたしと陽子さんは、コテージから出ます。
わたしはコテージ前の広場に、ローラからもらったお土産を出しました。
家です。
家がお土産というのは、おかしな話です。
わたしも家を持ち歩くので、他人のことは言えません。
これは、前世のわたしが住んでいた家です。
外観はハーフティンバー風、2階建ての木造住宅です。わたしのコテージより小さいです。
人が住まない木造住宅は劣化が早いそうです。それでローラがアイテムボックスで保存していました。
私たちは家の中に入ります。
玄関に入るとテラコッタが敷かれていました。床板との段差がありません。わたしのコテージと同じです。
わたしは、靴を脱いで家の中に入りました。床はきれいです。埃がありません。
最初に入った部屋はリビングでした。隣のダイニングと繋がっていて、壁がありません。
天井はなく、吹き抜けになっています。わたしのコテージと同じような造りです。
おそらくこの家は、既存の住宅を自分の住みやすいように改築したようです。
室内は必要最低の家具しかありません。広さはそれぞれ12畳ほどです。
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次はキッチンに行きました。ここは台所と言ったほうがいいですね。昭和の雰囲気がします。
わたしは、昭和の文化が好きです。
生活様式、テレビ番組、歌謡曲、アイドル、ファッション、流行など、レトロでノスタルジックな雰囲気がたまりせん。
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この台所は、シンクがステンレス製ではなく、石をくり抜いたものです。
横には、コンロが3台あります。下には、オーブンがあります。調理器具は魔道具です。
木製の冷蔵庫がありました。写真で見たことがあります。上に氷を入れて、下のものを冷やす仕組みです。
ですが、これは少し違います。これは、魔道具です。上は冷凍庫、下は冷蔵庫になっています。
デザインがいいです。
それから、台所に勝手口があります。これも昭和らしくて、いいですね。
地球と異世界の様式が入り交じっていて、面白いです。
アンナ「陽子さん、調理器具の使い方わかりますか?」
陽子 「はい。わかります。ここで料理を作っておりました。」
アンナ「白米は、どうやって炊いていましたか?」
陽子 「土鍋で炊いておりました。土鍋は戸棚の下にございます。」
わたしが下の戸棚を開けると土鍋がありました。
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次はお風呂です。
風呂場は狭いですが、昭和の雰囲気があります。
お風呂は楕円形、木製の浴槽です。以前にアニメで見た五右衛門風呂ではありませんでした。
ちょっと残念です。浴槽の横には、すのこが敷いてあります。
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次は、トイレです。予想通り和式でした。
当然、ポットン式バイオトイレです。
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次は、他の部屋を見ます。
最初に見た部屋の扉は引き戸でした。中は和室です。窓には障子が備え付けられています。
床には畳が敷いてあります。8畳です。中央に円形のちゃぶ台があります。いいですね。
ちゃぶ台の上になにかが置いてあります。
アンナ「陽子さん、これが何か、わかりますか?」
陽子 「はい。それは飛行島の運行を操作する魔道具でございます。」
その魔道具、見た目はPCのトラックボールに似ています。
わたしは、魔道具に触れてみました。一瞬で、操作が理解できました。
この魔道具は飛行島の管理には欠かせないものです。
わたしは魔道具をアイテムボックスに収納しました。
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1階は全て見終わったので、2階に行きました。
2階には2部屋あり両方とも寝室でした。中はベッドと小さなテーブルが置いてあるでけです。
その後、屋根裏部屋にも入りましたが何もありませんでした。
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わたしは1階の台所に戻りました。
そして、コンロ型魔道具3台とオーブン型魔道具、土鍋をアイテムボックスに収納しました。
わたしは、まだ見ていない戸棚の中を見ました。
食器がたくさん入っています。わたしは白い器を一つ手に取りました。磁器です。
アンナ「この器、どうやって作ったのか知っていますか?」
陽子 「はい。それはカオリンを砕き、捏ねた後高温で焼いたものでございます。
安奈様は磁器と呼んでおりました。」
アンナ「カオリンの採取場所は知っていますか?」
陽子 「はい。存じております。」
アンナ「あとで教えてください。」
陽子 「はい。かしこまりました。」
わたしは、冷蔵庫や調理器具、食器などをアイテムボックスに収納しました。
魔道具や磁器など、思わぬ収穫がありました。
私たちは、家から外に出ました。
わたしは前世の家を見上げて考えます。
やはりここは、他人の家という感じがします。
わたしは、前世の家を収納しました。
そしてコテージを指さして、こう言いました。
アンナ「陽子さん、これが私たちの家です。」
陽子 「はい。かしこまりました。」
私たちは歩いて小ピラミッドに向かいました。