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俺はクローン達に味方する!

 職員室に二人で向かう廊下。

 そこで、俺の心をどきりとさせた神南の言葉。

 今、その言葉をこの子が言ったと言う事は、つまりこの子はあの時の神南?


 俺の脳裏に不自然な神南の姿がよみがえってきた。

 どこで着替えたのか、駅のホームにいた私服姿の神南。

 俺の「昨日のことなんだけど」と言う問いかけに、首を傾げる神南。 


 「君と神南は時々入れ替わっていたのか?」


 俺の言葉に、背後から神南が言った。


 「何の事?」


 振り返ってみると、神南は驚いたような表情で、俺を見つめた。

 神南は知らないと言うのか?

 とすると、神南は自分とこの少女が入れ替わっていた事を知らない事になる。この少女が学校に現れた時、神南が学校に来なかったのは偶然だとでも言うのか?


 「仕方ないなぁ。平沢くん。教えてあげるわね」


 その少女はクローンたちの事など存在しないかのように、俺に向かってこれまでの事を語った。



 その話によると、この少女の名も神南佑梨。

 オリジナルの神南佑梨のクローンとして、加速培養技術を使わず製造されたクローン。

 子宮の中で育つ胎児と異なるのは、育つ場所が培養装置の中と言うところだけだ。


 神南佑梨のクローン製造の時、万が一のスペアとして造られたもう一体が、この少女だった。

 この少女は造られた研究所の地下で外の世界も知らずに、育てられ続けた。


 そして、ある時、この少女は知ったらしい。

 外の世界に、自分と同じ容姿のクローンが神南佑梨と言う人間として、生活している事を。


 少女は神南佑梨と入れ替わるため、研究所を出る事を決めた。

 その最中、偶然ヒューマノイドの存在を知った。


 製造されたヒューマノイドを格納している倉庫の部屋。

 そこに迷い込んだ少女に、警護のヒューマノイドはなぜか従順に対応し、ヒューマノイドの説明を始めたらしい。

 その理由を少女は知らなかったが、それは神南が知っていた。



 神南が急遽、海外出張に向かう事になった松岡英俊にスーツケースを届けた時、研究所の中を案内してもらったと言うのだ。

 その時に、神南のデータがこの施設の関係者として、警護の任に就いていたヒューマノイドに登録されたらしい。

 このヒューマノイドは警護だけでなく、案内も役目としていたため、神南佑梨と区別できなかった少女に、ヒューマノイドの事を事細かに説明したと推測された。


 ヒューマノイドの事を知った少女はヒューマノイド全てを起動し、全てのヒューマノイドを指揮下においた。

 強大な力を手にした少女は研究所の地下で不安と不満を抱きながら暮らしていたクローンたちに反乱を勧めた。

 人間と対等となり、自由と尊厳を手に入れようと。



 俺はその話に疑いを抱いていた。

 反乱を成功させ、クローンたちを人間と対等とすることが、この少女の本当の目的だったなら、研究所に残ってクローン達と行動を共にしたはずだ。 それをしなかったと言う事は、反乱に乗じて自分の脱出を確実なものにしようとした。俺にはそんな風にしか思えない。



 外の世界に出た少女は神南の事を探していたらしい。

 おおよそ、この辺りにいるはずと言う情報だけは得ていたようだが、神南の詳しい居場所は知らなかった。


 一方、クローンたちはこの国の人間となる事を求めて、闘争を始めた。

 これが今の社会の治安悪化を招いている騒動の真実だったんだ。


 そこで俺はようやく気づいた。

 このクローンたちの戦いを成功させれば、神南を人間に、いやこの国の法的にも守られた人間にできる。と。

 どうやら、俺はクローン達に味方するべきのようだ。


 それも、クローンと言う生物を守るとか言うきれい事の理想なんかではなく、神南をこの国の人間にできると言う現実的な利益、いやもっと純粋な愛のためかも知れない。

クローン少女が語った話は次の49話まで、まだ続きます。

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