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気になるうわさ

たくさんのお気に入り登録ありがとうございます




「ねえ、毎回何処行ってるの?」

「え、」


 わくわくとした表情で私の答えを待つ友人達に、どう答えようものか悩む。

 曖昧に微笑むと一斉にブーイングが起こった。

 ううむ、困った。



 仲の良い友達ができたのはうれしいが、これまた相当な恋愛話好きなのだ。

 男の子の友達と会ってて、なんて言った日には話の餌にされるに決まってる。あげくその男子を捜し回りそうで怖い。絶対潤くんのことは話せない!

 芽依はさりげなくため息をはいた。


「友達と会ってるの」

「友達?!男の子?」

「女の子だよ」

「ウソ!その顔は男でしょ!」

「何を、根拠に……」

「彼氏?彼氏?」

「ちがう、ちがう」

「芽依、どの子か教えなさい!」


「…内緒」

 えへ、と首を傾げる。


 この間もそうだ。

 たまたま隣の席に座った男の子と話が盛り上がっただけで、後からどれだけ聞かれたか。そういえば、調理実習のときも、お菓子を持ち帰る私に対して、誰にあげるのかしつこく聞いてきた。

 本当に好きだな!


 彼氏なんか出来たこともないような私なのに。

 どれだけ私がもてると思っているんだか。


 けれども、恋愛の話は身内の中だけで盛り上がる。決して他人の恋愛には口出ししない。そういうところには非常に好感のもてる友達だ。



 これ以上いたら、根掘り葉掘り聞かれてしまいそうな空気と、約束の時間に気づいて立ち上がる。


「もう時間なの!ごめん、また明日!」

 友達の文句を背に受け、苦笑する。


 さあ、例の潤くんに会いに行こう。







 別に潤くんのことを知られたくない訳ではない。

 独り占めしたいわけでもない。


 だけど、きっと、潤くんは人気者だ。

 本来、私とは住む世界が違う人だという自信もある。


 そんな人のことを軽々しく口に出すのは、とてもためらわれることだった。




 ふ、と耳に入ってきた。

 女の子達が、きゃっきゃっと楽しそうにしている会話の内容。


 よく聞く話だ。


 だけど芽依は最後までこの話を聞いたことがない。

 友達は恋愛ごとには興味を示すが、そういったうわさは口にしない。「かっこいい」と見た目で騒がれる男なんぞに興味はない。それよりも男は性格なんだと。随分な現実主義だった。

 人に聞く、という手段もあったが、そんなことをすれば「興味があるの?へえ?」と彼女たちにつっこまれてしまいそうで、なんだかする気は起こらなかった。

 ちなみに芽依もこの手の話には元々興味がない。恋愛ごととは関係なく生きてきた彼女にとっては、それほど惹かれる話でもなかった。


 そんなこんなで、入学当初から疎外感を感じている話題に、未だに触れられていない芽依だった。




「本当にかっこいいよねえ『長谷屋(はせや)センパイ』」

「もう、あの美しい容貌で微笑まれたら死んでも良いー」

「『長谷屋センパイ』と恋人になりたいなんて言わないから友達になりたあい」

「馬鹿、んなのなれるわけないでしょ!」

「冗談だって!マジになんないでよー」




 『長谷屋センパイ』という単語を耳が拾う。

 よく耳にする言葉。

 心がぐらりとゆれる音がする。


 その気持ちを誤魔化し時計を確認すると、時間が迫っていた。

 すこし足早に通り過ぎる。

 そうだ、早く行かなきゃ。

 潤くんが待ってる。


 こうして今日も、芽依は学園のウワサを最後まで耳にすることもなく去って行く。

 彼女たちのその後に続く話を芽依は知らない。



 いつもその後に、王子様の名が語られることに。




「でも、長谷屋センパイって女たらしじゃん。いっつも女連れてんの」

「そこがいいんじゃん?なんたって、王様だし」

「でも私、弟の王子様の方が好き!」

「血の繋がってないって言う?」

「そう、蘇芳(すおう)センパイ!」

「確かに顔は似てるけど…、優しいけど告白は絶対断るし、一定以上女の子を近づけないので有名じゃん。相手になんかされないって」

「ある意味、長谷屋センパイより強敵だね」

「中庭は、蘇芳センパイの為に立ち入り禁止になってるし」

「えー、でも私は『王様』の長谷屋センパイよりも『王子様』の蘇芳センパイの方が好きだなあ」

「っーか、もっと現実に目を向けろって」

「きゃはは、言えてらー」




 彼女たちは知らない。

 その彼女たちが話している王子様は、1人の少女を心待ちにして空き教室で待っていることを。







 『長谷屋センパイ』ともごもご口の中で呟いてみる。

 それは、よく耳にする名前だった。


 どういう人物かは知らないが、1人だけ、心当たりがないこともない。

 それは仲良くなって1ヶ月は経つ、王子様のような外見を持つ男友達。


 それは、噂話を最後まで聞きたくないと心のどこかで思っている理由。

 心当たりの人物と、噂の人物が同じかもしれないと思いたくないのだ。


 『潤くん』なのかもしれない、という疑いがあった。


 『長谷屋センパイ』は、とっても格好良く、美しい人らしい。

 儚げな印象で、皆が恋する存在なのだと。

 とてももてる人だということも。

 そんなの潤くんにぴったりだ。


 『潤くん』ではない可能性もあるが、どちらにしろあの噂話のどこかには必ず『潤くん』の名前が入っているはずだ。

 もてるのにも変わりはない。

 それほどまでに人気の人、だと思う。

 あんなに綺麗な人は潤くん以外、私は目にしたこともない。


 そして、そうだとは断定できないが、『潤くん』は『長谷屋 潤』という名前なのでは、という考えがちらついていた。




 いつの間にか、空き教室まで来ていた。


 今の考えがまとまっていないままで彼に会えるのだろうか。

 潤くんは潤くんだ。人気者であろうと私の友達。

 それは決して変わらない。

 なら、どうして私はこんなに考え込んでいる?

 何で?何でだろう。私にも分からない。


 でも、この扉を開けるのには、少し戸惑う。


 がらり、と扉が開いた。

 潤くんだ。いつも通り、朗らかに笑う潤くん。

 どうやら入ってこない私に焦れたらしい。


「芽依、何ぼうっとしてるの?入らないの?」

 そう言う潤くんに、私はとりあえず笑顔をこぼした。


 私は上手く、笑えてる?




ようやく話が動き始める…かな?

芽依ちゃんの勘違いが始まりました(笑)

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