表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残響の庭  作者: とま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/120

第16話「波紋」

 母に真実を伝えた翌日、柊は仕事に向かった。


 心は——不思議と穏やかだった。


 重荷を下ろしたような感覚。ずっと抱えていた秘密を——ようやく、話せた。


 だが同時に、新たな問いが生まれていた。


 母の残響は——これから、どうなるのだろう。


          ◇


 午前中、柊は通常業務をこなした。


 面会者の対応。システムの監視。残響たちの状態確認。


「水無瀬さん」


 田所が声をかけてきた。


「何だ」


「藤原さんから連絡です。美月さんの成仏プロトコル——正式に申請したいって」


 柊は頷いた。


「わかった。手続きを進めてくれ」


「はい」


 美月の成仏。八歳の少女が——自ら選んだ道。


 柊は——その決断を、尊重するしかなかった。


「あと——」


 田所が続けた。


「Cブロックの残響たちが——また、一斉に活性化しました。昨夜」


「昨夜?」


「はい。午前二時頃。前回と同じパターンです」


 柊は眉をひそめた。


「ログは?」


「記録されてます。今回は——少し違う内容でした」


 田所が端末を操作し、ログを表示した。


『誰かが——目覚めた』

『欠けていた部分が——埋まった』

『彼女は——知った』


 柊の心臓が跳ねた。


「彼女——」


「誰のことかは、わかりません。でも——」


 田所は柊を見た。


「水無瀬さんのお母さんの残響も——Cブロックにいますよね」


 柊は黙った。


 昨夜——柊は母に、真実を伝えた。


 その影響が——他の残響たちにも、波及したのか。


「ありがとう。ログは後で確認する」


「はい」


 田所が去ると、柊は端末に向かった。


 母の残響の状態を確認する。


 活性化パターン——通常より高い。だが、異常というほどではない。


 発言ログ——昨夜の対話以降、特に記録なし。


 柊は——少し安心した。


 だが同時に、不安も感じた。


 母に真実を伝えたことで——何かが変わり始めている。


 その変化が——どこへ向かうのか。柊には、わからなかった。


          ◇


 昼休み、玲から連絡が来た。


『昨夜、全国の残響庫園で一斉活性化が観測された。桜の園でも?』


 柊は返信を打った。


『ああ。Cブロックで。ログを送る』


 ログデータを送信し、玲の返答を待った。


 数分後、返信が来た。


『興味深い。「誰かが目覚めた」「欠けていた部分が埋まった」——これ、柊のお母さんに関係ある?』


 柊は迷った。


 昨夜、母に真実を伝えたこと。それを——玲に話すべきか。


 だが——隠す理由もなかった。


『昨夜、母さんの残響に——父さんの死の真実を伝えた』


 返信はすぐに来た。


『そう。それが——引き金になった可能性がある』


『引き金?』


『お母さんの残響が「欠損」を認識した。その情報が——何らかの形で、他の残響に伝わったのかもしれない』


 柊は考えた。


 残響同士は、VR空間内で交流できる。情報の共有も——可能なはずだ。


『詳しく調べる。今夜、行ってもいい?』


 柊は了承の返事を送った。


          ◇


 その夜、玲が桜の園を訪れた。


 二人はサーバールームで、データ分析を行った。


「見て」


 玲が端末を操作し、グラフを表示した。


「これが、昨夜の活性化パターン。全国の残響庭園で、ほぼ同時に発生してる」


 柊はグラフを見た。


 横軸が時間、縦軸が活性化レベル。午前二時に、急激なスパイクがある。


「同時——?」


「誤差は数秒以内。まるで——」


「誰かが合図を送ったみたいだ」


 柊は呟いた。


「その可能性がある。でも——誰が?」


 玲は別のデータを表示した。


「活性化の起点を追跡してみた。すると——」


 画面に、日本地図が表示された。赤い点が、全国に散らばっている。


「この点が、各地の残響庭園。そして——」


 玲は地図を拡大した。


「起点は——ここ」


 東京。桜の園。


 柊の心臓が止まりそうになった。


「桜の園が——起点?」


「そう。活性化は、ここから始まって、全国に広がった」


「じゃあ——」


「柊のお母さんの残響が——引き金を引いた可能性がある」


 沈黙が流れた。


 柊は——震えていた。


 母に真実を伝えたこと。それが——全国の残響庭園に影響を与えた。


 一体——何が起きているのだろう。


「柊」


 玲が柊の肩に手を置いた。


「落ち着いて。まだ——全部わかったわけじゃない」


「でも——」


「お母さんの残響に、話を聞いてみない?」


 柊は——玲を見た。


「話を——聞く?」


「昨夜、何があったのか。何を感じたのか。直接聞いた方が、わかることがあるかもしれない」


 柊は——しばらく迷った。


 だが——避けては通れなかった。


「わかった。母さんの残響に——会いに行く」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ