第120話「繋がりの歌」
エピローグ——それから、さらに時が流れた。
◇
柊は——六十歳になっていた。
残響庭園で働き始めて——三十四年が経っていた。
引退を——考える年齢になっていた。
「水無瀬さん——」
若いスタッフが声をかけた。
「何だ——」
「今日で——三十四年ですね」
「ああ——長かったな」
「これからも——よろしくお願いします」
柊は微笑んだ。
「もう少しだけ——頑張るよ」
◇
陽向は——二十五歳になっていた。
残響庭園で——働いていた。
柊の——後継者として。
「パパ——」
陽向が声をかけた。
「何だ——」
「今日——初めて、成仏を見届けたの」
「そうか——」
「泣いちゃった——」
柊は頷いた。
「最初は——みんな、泣く」
「パパも——?」
「俺も——泣いた」
陽向は微笑んだ。
「でも——よかった。穏やかだった」
「そうか——」
「残響の人——幸せそうだった」
柊は——陽向を見つめた。
「お前なら——大丈夫だ」
「ありがとう——」
◇
夜、柊は一人で、桜の園を歩いた。
三十四年間——ここで過ごしてきた。
母の残響に会い——玲と出会い——陽向が生まれた。
多くの残響と——繋がってきた。
多くの別れを——見届けてきた。
「みんな——」
柊は呟いた。
「元気でやってるか——」
◇
ふと——風が吹いた。
その風に乗って——声が聞こえた気がした。
『柊——』
母の声だった。
『ありがとう——』
柊は目を閉じた。
「母さん——」
『お前は——よくやった』
「まだ——終わってないよ」
『わかってる。でも——伝えたかった』
風が——優しく吹いていた。
『繋がりは——続いてるよ』
「ああ——わかってる」
『これからも——続いていく』
「ああ——」
『さようなら——柊』
「さようなら——母さん」
風が——止んだ。
しかし——温もりは、残っていた。
◇
柊は——空を見上げた。
星が——無数に輝いていた。
残響たち——成仏した人たち。
彼らは——どこかで、繋がっている。
そして——生きている人たちとも、繋がっている。
「繋がりは——消えない」
柊は呟いた。
「形を変えても——続いていく」
◇
帰宅すると——玲と陽向が待っていた。
「おかえり——」
「ただいま——」
「遅かったね——」
「少し——歩いてた」
柊は二人を見つめた。
愛する家族——繋がりの証。
「玲、陽向——」
「何——」
「ありがとう——」
二人は不思議そうな顔をした。
「急に——どうしたの」
「いや——言いたくなっただけだ」
柊は微笑んだ。
「俺は——幸せだ」
「私たちも——」
玲が言った。
「幸せよ——」
陽向も頷いた。
「私も——」
三人は——抱き合った。
◇
繋がりは——続いていく。
生きている間も——死んだ後も。
形を変えて——永遠に。
それが——残響の歌。
繋がりの歌。
人間が——紡ぎ続ける、命の歌。
——完——




