♥ 捜索
〝 それ 〟は家の前に立っていた。
〝 それ 〟は家の中へ入った。
〝 それ 〟の目は、暗い部屋の隅でガタガタ震えるモノを捕らえていた。
〝 それ 〟は震えるモノへ物音を立てる事なく、スゥーーーーーーと静かに近寄る。
震えるモノは〝 それ 〟の気配に気付いたのだろう、小さく悲鳴を上げると〝 それ 〟に背を向けている。
〝 それ 〟は、とても静かな声で訊ねた。
「 奇姫は何処だ…… 」と。
震えるモノは何かを口走っている。
然し、その言葉の何れにも〝 それ 〟が知りたい言葉ではなかった。
〝 それ 〟は理解した。
「 コレは違う…… 」と。
〝 それ 〟は震えるモノを見て、ニタぁ──と笑う。
〝 それ 〟は赤いマントから大きな手の様なモノを伸ばすと、震えるモノを摘まんだ。
〝 それ 〟の生暖かい吐息が震えるモノの顔に掛かる。
〝 それ 〟は楽しそうにニタぁ──と笑う。
フードで隠れて見えなかった〝 それ 〟の口が大きく開く。
〝 それ 〟は何の迷いもなく、至極自然に震えるモノを喰べた。
その行為は “ 喰べた ” と言うよりも “ 呑み込んだ ” の方が合っているかも知れない。
〝 それ 〟は部屋から静かに消えた。