4、平和と安息(4)
朝になった。
オレは体を起こして、バルコニーに出て、そこの水道で顔を洗い、早起きのエルフたちを見る。ここから、サリィがエルフたちと話をしているのが見えた。ちっ。時計がないから、何時なのか分からない。する事がないから、とりあえず食堂へ行ってみた。
調理場では、説明しがたい料理を作る主人が、急がしそうに働いているオレは置いてあった料理を見て、思わず笑ってしまった。普通、木と土をはさんだサンドウィッチなんて存在しないだろ! その横には、樹液がたっぷり入ったコップがある。
これ以上エルフの食べ物に関心を持つと危ないと思い、人間用の料理を作ることにした。
二十分くらいたつと、食堂にみんなが入ってきた。周りの視線に恐縮しながらも、なんとかみんな食べ、小屋をあとにした。
外に出るとサリィが立っていた。
「みなさん、行きましょうか」
「いよいよ女王様と対面か、緊張するな」
少し歩くと、戦士が道をふさいでいた。
「ここから先は女王の許可がなければ通すわけにはいかない」
「ならば女王にお伝え下さい。サリィ・ハイブラクが会いに来たと」
「あ、それならすでに命令を受けている。サリィが来たら通せと。入りたまえ」
道を歩いていると、前に大きな木が見えた。そして、そこに女性が立っていた。きっとあれが女王なのだろう。
「帰ってきたか、サリィよ」
「はい」
「山で発見したものは何だ」
「宝石です。女王様の言った通り、私はジュエル・ハンターズだったようです」
「他にジュエル・ハンターズは」
「一人います」
「はい。ソレイユ・ネバルといいます」
「ところで、私の姉の生死は確認されましたか」
「全力を尽くしたが、いまだに生死は不明だ。本当にすまぬ」
サリィの姉? 疑問に思い、聞いてみる。
「サリィの姉って、どんな名前だ?」
「アーリアといいます」
「あ、その人なら知ってるぜ。うちの伝説ででてきたと思うよ」
「本当ですか、ソレイユ?」
「ああ、アーリアは帝王の城に行ったんだろ」
「そなたはアーリアの生死がわかるのか?」
「帝王の手下に殺されたよ」
「そんな……姉さん……」
サリィはその場に座り、泣いてしまった。ラルサーン[エルフの女王の名前である]はオレに近づいて言う。
「真実を明かしてくれた事、感謝する。この後、都市の中央に来てほしい。渡したいものがある」
「分かりました」
サリィは「そのままにしてほしい」と言ったので、サリィをおいていって中央に向かった。
「ようやく来てくれたな」
「渡したいものって何ですか」
「これだ」
ラルサーンは手に何かを持っていた。
「このESBはソレイユ、そなたに使ってもらいたい」
「あのー、ESBって何ですか」
「ESBはエルフ・スピード・ブーツの略で、それを身に付けるだけでエルフのスピードになれるのだ」
「もらってもいいんですか」
「少しでも旅の役に立つだろう。世界の運命はそなたたちジュエル・ハンターズにかかっているのだ」
「承知しました」
「そこにいる娘、まさか王族の血か?」
「はい。ソラ・ヘーレゴニーといいます」
「大陸を復興させるのだ。私には分かる。帝王はそろそろヘーレゴニーに戦争をしかける。国民に希望を与え、国民の声をそなたの翼にするがいい」
「わかりました」
「ドワーフなどはまだ帝王が戦争をしかける事を知らない。必ず知らせ、助けを求めるのだ」
「ところで、私の父ですが……」
「国王はまだ生きている。だが帝王は、いざとなったら見境なく殺すだろう」
「そんな……」
「だが、希望を失ってはいけない。できるだけ早くジュエル・ハンターズと宝石を見つけ出すのだ。そなたはその手伝いをするのだ」
「がんばってみます」
「そして、他の仲間もジュエル・ハンターズと王女を助けてやってほしい」
「命にかえても守ります」
「守るナン」
「弟は必ず守る」
「守る」
「私たちエルフもできる限り助けるつもりだ。困ったときはいつでもここに来てほしい」
「ありがとうございます」
ちょうどそのとき、サリィともう一人のエルフがこっちに来た。
「話は聞きました。姉の死で、いつまでもめそめそするわけにはいきません。母さん、行ってきます」
「行きなさい。みなさん、サリィをよろしくお願いします」
「はい。ところで、あなたのお名前は?」
「私はイリス・ハイブラクと申します。昔、ネバル家の人と旅をしたことがあります」
こうしてオレたち七人が行こうとするが、ラルサーンが止めた。
「私がファーザン草原とネフド砂漠の関所までテレポートさせることができるが」
「お願いします」
「わかった」
ラルサーンは呪文を唱えた。
「テレポート」
気がつくと、オレたちはファーザン草原に立っていた。まずサリィが口笛をふく。しばらく待つと、馬がやってきて、それぞれの主人のもとにかけよる。
「いい子にしてた? スコーピオン?」
ソラの馬はスコーピオンというのか。オレたちはそれぞれの馬を歩かせながら、関所に入った。
「ここを通るには、十万円かかりますよ」
兄さんが不満な声で言う。
「そんな、高すぎだろーが!」
兄さんに続き、ナオやソロイも関所の兵士に対して訴えたが、兵士はまるで無視している。
「払わなければ、ここは通せませんよ」
そのときだ。
「危ないわ、みんな!」
なんと、ソラは兵士の首に槍を突き刺したのだ。だが驚くべき事に、兵士は姿を消した!
みんな青くなって、武器を取り出した。
「くそっ、ファントムかっ」
何? こんなところにもいるのかよ。全然、気がつかなかった。
「まずはゴミ掃除です」
オレに切りつけてきた。だが、オレはESBをはいていた。ファントムの剣をかわし、よけた勢いを利用して首をはねとばした。さすがにファントムもよけられないようだ。
首を切られた分身は砂になった。
「ソラ、よくあいつがファントムだってわかったな」
「なんとなく、やつだと思ったわ。とにかく行動範囲が広いから、あやしいと思ったら攻撃してみることね。もたもたしてるとこっちがやられるわ」
「もし、普通の人間だったら?」
「今もそうだったけど、実は当たる寸前で槍を止めていたわ」
「さすがは王女様だ」
「……王女って呼び方はやめて、ソレイユ」




