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第41話:ギルドの成り立ち

41話以降のプロットの見直しに時間がかかっちゃいました。

リゼット調査官の号令と共に、揺らめいていた魔法障壁に、わずかな間だけ通路が開かれた。

その先には、地下深くへと続く頑丈そうな昇降機の扉が見える。しかし、扉は不気味な振動を繰り返し、その表面には空間の歪みを示すノイズのようなものが走っていた。周囲の空気も、異常なエネルギーの気配で満ちている。


「……この状態では、昇降機は危険すぎるな」

バルガスが、扉を一瞥して即座に判断を下す。リゼットも黙って頷いた。例の異常の影響で、正常に作動する保証はないし、閉じ込められるリスクすらある。


「仕方ない。非常用の旧通路を使うぞ」

バルガスはきっぱりと言うと、昇降機の脇にある、普段は使われていないであろう、古びた金属製の扉を指差した。

「全員、準備はいいな? ここから先は、我々ギルド職員ですら、ほとんど立ち入ったことのない領域だ」


その言葉に、俺とエリシアは顔を見合わせた。ギルド本部の地下に、そんな場所があったのか?


俺たちの疑問を察したのか、あるいは、この状況下で情報を共有しておく必要があると判断したのか、バルガスは扉に向かいながら説明を始めた。

「知っているかもしれんが、このギルド本部、そしてこの都市の一部はな、大昔に攻略された『沈黙の迷宮』と呼ばれるダンジョンの跡地に建てられている」


「迷宮の跡地……!?」

エリシアが驚きの声を上げる。俺も初めて聞く話だった。


「そうだ。迷宮は数百年前に完全に攻略・制圧され、その脅威は取り除かれた……はずだった」

バルガスは言葉を続ける。

「ギルドは、その迷宮の比較的安定していた上層部分を改修し、拠点として利用し始めた。今俺たちがいるこの辺りが、その境界に近い場所だ。そして、地下部分は階層ごとに区画分けされ、主に物資保管庫として利用されている」


彼はそこで一度言葉を切り、俺たちの理解を確認するように見た。

「地下は浅い順にA区画からD区画まで存在する。下に行けば行くほど、迷宮時代の古い構造が色濃く残り、また、ギルドが回収した危険度の高い遺物や素材が保管されるようになっている。例のD-7は最下層の特別保管区画の一つだ。だが、今回の異常はどうやら、そのさらに下で発生しているらしい」


エリシアが息を呑む。

「D区画の、さらに下に……? まさか、迷宮の……」


「ああ」バルガスは頷く。「迷宮の最深部……『コア』と呼ばれる何かがあった場所だ。攻略時に完全に機能を停止させたと記録にはある。しかし……」

彼は苦々しげに顔を歪めた。「まさか、あの停止させたはずのコアが原因だとでも言うのか…?」


リゼットが引き継いだ。

「今回の異常エネルギー反応と空間歪曲の中心は、ノア君の感知によれば、D-7区画、あるいはその下の『コア』領域から発生している可能性が高い。停止したはずのコアが、未知の原因(異常)によって、再び活動…いや、暴走しているのかもしれん」


(迷宮の、コア……? それが、あの禍々しい気配の源……?)

俺は背筋に冷たいものが走るのを感じた。


「そして、この非常用通路は、その古い迷宮の構造の一部を利用している」

バルガスは古びた金属扉を示した。「普段は閉鎖され、ほとんど使われることはない。例の異常の影響で、今、中がどうなっているか、我々にも全く分からん」


リゼットが俺を見た。

「だからこそ、君の力が必要になる、ノア君。この旧迷宮ルートは、我々にとっても文字通り未知の領域だ。君の『空間を感知する力』だけが頼りだ。いいな?」


状況は飲み込めた。昇降機が使えない今、俺たちは未知の異常に汚染されている可能性のある、古い迷宮の跡を、俺の感覚だけを頼りに進むしかないのだ。責任の重さに、身が引き締まる思いがした。


「フィン、扉を開けろ。ダリウス、クララ、援護と警戒を!」

バルガスの指示で、斥候のフィンが扉のロックに手をかけ、戦士のダリウスと神官のクララが周囲を警戒する。


ギィ……という重い、錆びついたような音を立てて、扉が開かれた。

その先には、下へと続く、暗く湿った石造りの階段が口を開けていた。空気は淀み、壁には苔が生え、ここがギルド施設の一部というより、忘れられたダンジョンそのものであることを物語っている。


「行くぞ!」

バルガスを先頭に、フィン、リゼット、俺、エリシア、ダリウス、クララの順で、俺たちは非常階段へと足を踏み入れた。


金属製の扉が背後で重々しく閉まる。

光源は、バルガスたちが持つ魔道具のランタンと、エリシアの杖が放つ淡い光だけだ。通路は地下へと続く下り階段になっており、どこまで続いているのか見当もつかない。


未知の異常の影響か、壁や床は奇妙に揺らぎ、空気は重く淀んで、不気味な雰囲気に包まれている。時折、どこからか水滴の落ちる音や、反響する奇妙な囁きのようなものが聞こえ、緊張感を高める。


「ノア君、どうだ?」

リゼットが尋ねる。


俺は意識を集中させる。

「……! まっすぐ進むのは危険です! 少し先……空間が、穴みたいに……なってます!」

俺が指差すと、斥候のフィンが慎重にその場所へ近づき、小石を投げ込んだ。石は、途中で音もなく消滅した。


「……局所的な空間欠損か。危ないところだったな」

バルガスが低い声で言う。俺の感知がなければ、誰かが気づかずに足を踏み入れていたかもしれない。


「ノア、ありがとう。助かったよ」

エリシアが小声で囁く。俺は小さく頷いた。


俺たちは、俺の感知を頼りに、空間の歪みが比較的少ない場所を選びながら、慎重に階段を下りていく。

「右の壁、エネルギーが不安定です……!」

「少し先、床の一部が脆くなってる感じが……!」

俺が断片的に伝える情報を、エリシアが「パラメータの揺らぎね」「構造情報が欠落してるのかも」と推測し、バルガスがそれに基づいてルートを修正したり、フィンに確認させたりする。


この異常空間において、俺の力は唯一の道標だった。だが、その代償は大きい。常に意識を張り巡らせているせいか、頭痛が酷くなり、精神がすり減っていく。


「ノア、顔色が悪いよ。大丈夫?」

エリシアが心配そうに声をかけてくる。


「無理はするな。クララ、加護を」

リゼットの指示で、クララが杖をかざし、俺に精神保護と疲労軽減の魔法をかけてくれる。温かい光が疲労を和らげてくれた。


「ありがとうございます、クララさん」

俺が礼を言うと、クララは静かに頷いた。


さらに階段を下っていく。

階層を下るにつれて、空間の歪みはより顕著になり、ノイズ音も大きくなる。壁には黒いシミのような汚染が広がり、時には虫のような小さな異常存在が飛び出してくることもあったが、それらはダリウスやバルガスが一蹴した。


どれくらいの時間、下り続いただろうか。

やがて階段は終わり、少し開けた踊り場のような場所に出た。

そこには、さらに下へと続く階段とは別に、横方向へと続く、頑丈そうな別の石扉があった。扉の上部には、風化して読みにくいが、おそらく「B」を示す古い紋章のようなものが刻まれている。


「……着いたか」

バルガスがランタンで扉を照らす。


エリシアが解析ツールをかざした。

「この扉……間違いなく、下の階層……B区画への入り口だね。扉の向こうのエネルギー反応は……この階段通路よりは安定してるみたいだけど、それでも正常とは言えない。油断は禁物だよ」


「よし」

バルガスは頷くと、俺たち全員に向き直った。

「ここがB区画への入口だ。ここから先は、元の迷宮構造がさらに色濃くなる。昇降機シャフト周辺とはわけが違うぞ。全員、気を引き締めろ!」

彼の声に、チーム全体の空気が再び引き締まる。


「フィン、先行して扉の安全を確認しろ!」

バルガスの指示を受け、斥候のフィンが慎重に扉へと近づいていく。


俺たちは、息を詰めてその様子を見守った。

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