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14話:器用の指輪


「皆さん、お疲れ様です。早速ですがこの中でアイテムを引いた方は見せてください」


明らかに俺と姫川を見て、発言している。

ブレイバーにとって、自身のスキルや装備は秘匿するべき事とされている。

それは余計なねたみやそねみを買い、無用な争いを避ける為であり、自身の優位性を保つ為である。

所属するクランやモンスターパレードの際には編成の為に情報を求められれば、報告する義務はあるが個人情報の為、厳に扱われる。

柴田のように獲得したスキルを言ったりするのはそれこそ馬鹿のすることだ。


見せて良いものか判断に迷う俺達のような新入生は毎年のことなのだろう。

溜息をこぼしながら理由を口にする。


「我々、研究員はダンジョンで得られるアイテムについても研究しています。これは国からの施策でもある魔導技術の発展の為に必要なことです。わかりますか?」


如何いかにも俺達2人が分からず屋だと言わんばかりの口ぶりにイラッとする。


「2人とも見せるんだ」


東雲講師から何の感情も籠もっていない指示が出る。


俺達は抵抗しても無駄だと思い、握りしめていたアイテムを見せる。


「ほう、ピアスと指輪ですか。では装備して、ステータスを開いて名前と能力値を教えて下さい」


なんか納得いかない感情が渦巻き、内心で舌打ちをしながらも東雲講師を見れば、やれといわんばかりに頷いている。


仕方なく言われた通りにする。


「ステータスオープン」


名前:御堂(みどう) 久遠(くお)

職業(ジョブ):なし

レベル:1  0P

筋力:13

体力:15

魔力:1

精神:12

耐性:8

器用:15+1

俊敏:12

魅力:11

幸運:13


技能(スキル)

直感

装備中

器用の指輪


「では教えてもらえますか?」


姫川はピアスだからかつけるのにまだ掛かっており、俺に聞いてきた。


「名前は器用の指輪で能力値は器用に+1」


「ふふ、そうですか。わかりました」


俺の答えに研究員と柴田、山口が小さく笑うのが聞こえた。


「ではあなたはどうですか?」


「俊敏のピアス、+2よ。ふん!」


「わかりました」


俺に続けて、姫川に対しても柴田と山口が小さく笑っていた。


「お二人は残念でしたね。そんな2人に良い情報をお教えしますよ」


歯に着せない物言いには呆れるしかない。


「神社で売っている御守りがありますよね。交通安全とかのあれです。あれも装備することが出来て、装備すると幸運が+3されますよ」


流石に俺と姫川はカチンときたが東雲講師が割って入るように「お前達行くぞ!」と強引に俺達2人を押し出す。


「ああ、そうそう我々研究員が開発した魔具アクセサリーはお好きな能力値を一つだけですけど、+5も補正してくれますから良かったら購入して下さいね。一つ3000円ですので〜」


俺は文句の一つも言ってやりたかったが東雲講師からの圧力が凄く、何も言えなかった。

施設から出る最中、後ろから聞こえる「クックッ」とした笑いが一層、俺と姫川を苛立たせる。


「(お前ら良かったな。補正値が+3以上だったら研究の為とか言って、取り上げられてたぞ)」


俺達2人にだけ聞こえるように東雲講師は気を使って、なだめようとしているのかもしれないがそれを聞いて、俺と姫川の研究員に対する印象はさらに下がった。


教室に戻ってきて、初日ということもあり簡単な話で終わるみたいだ。


「さて、今日はそれぞれ望んだ結果を得られた奴もいれば、得られなかった奴もいる訳だが」


前半は柴田、山口を指し2人は誇らしそうな表情を浮かべる。

後半は俺と姫川で辛酸を舐めさせられた表情を浮かべる。


「そもそもお前らは他の奴らと比べて、最初から職業なしとして結果を得られなかったことを忘れるなよ?」


この言葉に柴田と山口の表情はすぐに苦虫を噛み潰した表情になる。


「それでは明日からの予定を言う」


空気を切り替えるように間を空けているのかやたらと間が長かった。


「「・・・」」


「じゃあ、言うぞ」


「「・・・」」


「聞きたいか?聞きたいよな?」


なんだこの講師、人をイライラさせる天才か?


「じゃあ、言いまーす。明日からは体力作りだ。以上」


「なんだよ!それ!」

「ダンジョンに潜らないのかよ!」


文句を言ったのは柴田と山口。

そんな2人を見て、東雲講師の雰囲気が変わる。


「お前らさ、たかがスキル一つ獲得したからって調子に乗ってんのか?」


言葉と同時に教室の空気が物理的に重く感じる。

俺はこの感覚に覚えがあった。

そう初めて鑑定を受けた時、浜口が受けていた。

気になった俺はネットで調べて大凡おおよその見当をつけた。


[スキル:威圧]


俺に向けられた訳じゃないのに空気に押し潰されそうだ。

直接、向けられている2人は恐怖で机ごと震えている。


「お前らはこれからモンスターと命をけた戦いをするんだ」


教壇からゆっくりと歩むと2人の前に立つ。


「実力のないブレイバーは死ぬ。自分の力量が分からないブレイバーは仲間を殺す」


2人はもう直視できずに震えながら下を向いている。

そして、重圧が消える。


「お前達はまだブレイバーですらない。ブレイバーにする為にこの学校がこの俺がいるんだ」


そう俺達はまだ選別で選ばれただけの素人。


おごるな、今は基礎を徹底的に鍛えろ」


一応、教育者らしいことも言えるんだなと思った。

これまでの態度を見ているとね、少し疑ってたよ。


「それでお前らはどうする?」


教育論を語っていると思ったら話を振られて戸惑う。


「どうするとはどういうことですか?」


「そのアイテムだよ」


指を差され、その視線の先には祝福で授かった指輪が。


「あの研究員は俺もいけ好かないが奴らが開発した魔具の性能は本当だ」


つまりは付け替えるかどうかか。

そこであの研究員の顔を思い出す。

絶対に許さねぇ。

姫川の方を見れば、同じ様な顔をしていた。


「絶対に変えない!」

「絶対に嫌っ!」


「何言っても無駄そうだな。好きにしろ」


なんだ?さっきと違い投げ遣りだな。

教壇に戻ると机に両手をついて締めの言葉を放つ。


「じゃあ、今日はこれで終わりにするが約2ヶ月後にモンスターパレードがある。それまでに死にたくない奴は死ぬ気で鍛えろ。後方で安全だと思ってたら大間違いだからな」


マジか!?


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