12話:バッジ
「お前ら!俺の女に何してんだ!」
教室は静まり返る。
「「「は?」」」
やっちまった!なんとか挽回せねば!
「な〜んてね」
「「・・・」」
なんか返せよ!こらぁ!
「「・・・」」
三人の視線が痛い。
「席って、決まってるの?」
しょうがないので女の子に声を掛ける。
「そこ」
彼女が指で教えてくれたのは隣の席だった。
「サンキュー」とだけ言って、席に座る。
彼女は怪訝な顔で俺を見ていたが、男達は何もなかったかのようにまた彼女に話し掛け始める。
「なあ、いいじゃん!俺達これから三年間、一緒なんだから連絡先ぐらい教えろよ」
「そうだぜ、仲良くしようぜ!」
「だから嫌って言ってるでしょ!」
「下手に出れば、元アイドルだからって調子のってんじゃねぇぞ!」
なるほど、しつこくナンパされてたのか。
それにしても元アイドルかぁ〜。
俺、あんまりアイドルとか詳しくないんだけど、これってやっぱり助けないといけないパターンだよな。
放っといて、後で保奈美にでも知られたら嫌われそうだし。
はあ〜。
「お前ら、うるせぇよ!相手嫌がってんじゃん!それともお前らの目は節穴か?耳は飾りか?」
「てめぇ!」
沸点が低いことを確認。
「そもそも、男2人で女1人に言い寄るとか、クソダセんだよ!」
「なんだぁと!」
ガラガラガラ〜
「お〜、今年の新入生も元気が良いね」
入ってきたのは、俺が会いたかった案内書で見た臨時講師の東雲龍也。
「どうした?俺のことは気にせずに、続けて続けて」
なんか思ってたよりも軽い感じだけど、このままじゃ締まりが悪いからいいか。
「だとよ、担任の許可が出たぞ、グダグダ言ってないでかかってこいよ!モブAモブB」
ちょっと、俺のこと攻撃的だなと思った奴いるかもしれないが、このブレイバー学校では喧嘩なんて当たり前らしい。
親友からの情報より。
そもそもブレイバー達はモンスターとの命を懸けた戦いをするわけだから、喧嘩のひとつも出来ない奴は臆病者として相手にされないらしい。
親友からの貴重な情報だ。
「やってやるよ!」
そう掛け声を自分で掛けて、モブAが襲いかかってきた。
でも、それ悪手だからな。
俺に向かい拳を振り上げるモーションに入る。
その瞬間、俺の中であの感覚がきた!
掛け声とか、俺にとってはカウンターのタイミングを教えてくれるだけだ。
相手に合わせる形で俺は左のクロスカウンターを放つ。
俺の左腕は相手の右腕を被うように、外側から拳が相手のアゴを狙って穿たれる。
バキッ
狙ったポイントに吸い込まれるように拳が当たった。
驚いたのは殴った衝撃は思った以上に小さかったこと。
重なり合うシルエットから、急に相手が崩れ落ちる。
パチパチ
「なかなかのクロスカウンターだったね」
もう1人は仲間がワンパンでやられるとは、思ってなかったのか呆然としている。
「君、御堂君だっけ?良いパンチだったよ」
言い終わるか、どうかのタイミング。
またあの感覚が俺を襲い、咄嗟に両腕を上げてガードするが、衝撃がきたのはお腹だった。
「がはっ!?」
「お〜良いね」
東雲講師は俺の肩をパンパン叩きながらボソッと「良いスキルだ」と呟いた。
しかし、痛みで呻き声しか出なかった。
その後、東雲講師は気絶したモブAの顔を軽く叩いて起こす。
「はい、全員席につけ」
簡単な言葉だったが、その言葉には有無を言わせない迫力があった。
俺は何故、直感が外れたのか考えながら、痛むお腹を抑えながら席に着く。
「式までまだ1時間くらいあるから自己紹介しようか。じゃあ、左の奴から」
指名された左の奴は仲間がやられて、呆然としていた奴だ。
「柴田 裕二です」
まだ、動揺が残っているのか名前だけで終わった。
次の奴は俺に伸された奴。
「山口 耕平だ!」
自己紹介なのに終始、俺だけを睨みつけてるって大層、俺の事が気に入ってくれたみたいだ。
次は俺か。
「御堂 久遠です。よろしくお願いします」
俺も名前だけを告げて着席する。
隣では「名前覚えたからな」とか聞こえてきたが無視だ。
「姫川 美麗よ」
これまで黙って聞いていた東雲講師が声をあげる。
「君のいたグループ、ちょうど人気が上がってきたところだったのに、選別に選ばれちゃって残念だったね」
「ふん!」
「ところで俺、センターの喜楽里ちゃん推しなんだけど、紹介してもらえない?」
なんでこんなに煽るようなことを言うのだろうか。
姫川なんて人を殺せそうなくらいあんたを睨んでるよ。
「紹介はなしか、残念。じゃあ、俺も自己紹介しとこうかな」
教壇から降りると俺達4人を見渡す。
「みんなの所に送られた案内書に一応、書かれていたけど、見てない奴もいるかもしれないから自己紹介してやる」
「俺は東雲龍也。今年から職業なしのクラス担当になった現役のブレイバーだ」
ここでいう現役とは5年間の任期満了を迎えていない者。
本来なら前線でバリバリと戦っているブレイバーのことだ。
「本来なら後1年間の任期が残ってる俺が教師にはなれないんだが、ギルドマスターからの要請に従い、残りの任期と引き換えにお前らの面倒を見ることになった臨時講師だ」
前線で活躍出来るブレイバーは貴重なのにそんな人材を俺達の講師にしてくれるとか、見た目は怖かったがギルドマスターの粋な計らいに感謝だ。
「知ってるとは思うが、お前達と同じ職業なしからスタートして、今では最もクラス4に近い男なんて呼ばれてる」
「この学校にクラス4はいない。つまり、俺がここでは最強でありルールだ。わかったな?」
こんな男が掲示板に「レベルカンストしたらクラスアップした(涙)」と書き込みしていたなんてな。
クラスアップして、相当な自信を持てたんだろう。
「では自己紹介も終わったことだし、お前らにバッジを渡す」
バッジとは聞いたことがない。
俺以外の3人も何それ?みたいな顔をしている。
「このバッジは今年から導入されたお前達の所属するクラスを明確にするためのものだ。簡単に言えば、職業別に増設されたことをよく思わない戦闘科の教員が自分達の方が優れてると認めさせたいが為に作った識別のバッジだ」
選民意識が高い戦闘系職業の奴が考えそうなことだ。
まあ、ブレイバーは東雲講師自身も今さっき言ってたが強さが全てであり、弱いブレイバーなど誰も求めていない。
教壇から動くのが億劫なのか、それぞれに向かって、バッジを投げて渡してくる。
受け取ったバッジは◇菱形のグレー色をしていた。
「ちなみにだが戦闘科が赤、魔法科が青、斥候科が緑、魔技科が黄、補助科が紫、回復科が白でお前らが灰色だ」
灰色とか1番地味だなと思っていたら、俺だけではなかったみたいだ。
「解ってるとは思うが1番地味な色をしているのは単なる嫌がらせだ」
4人の顔つきが僅かに変わったのを感じ取り、東雲は小さくほくそ笑む。
「お前らは馬鹿にされてるんだ。職業なしの奴なんて認めないとな」
明らかに表情が変わったのは山口と姫川。
「だから、お前らにはこれから戦闘科の奴らをボコボコにしてもらう」
俺は徳井の情報通りだなと思い、荒れた学園生活になりそうだなと1人呟くのであった。




