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勇者の隣の一般人  作者: 髭付きだるま
第六章 人類敗北編
157/173

第百五十五話 亀岩城奪還作戦

2018/08/30

いよいよ本日「勇者の隣の一般人」第2巻が発売されます。

記念として特別更新です。次の更新は9/2(日)になります。

 ピチョン……ピチョン……


 どこからか水滴の落ちる音が聞こえてくる。

 それは本当に僅かな音だ。だが、神経を研ぎ澄ませながら移動している僕たちにとっては、思わず注意を払ってしまうほどの物音となっていた。


 僕たちはが歩いているこの地下通路は、町の北にある玄武山脈の麓から、亀岩城の左前足にあたる塔の地下まで続いている、いわゆる秘密の脱出口という奴らしい。

 道幅は狭く、天井は低く、暗くて視界も悪いのだが、予想に反して道は整備されていたために歩きにくいということはない。

 なんでもこの道の存在は国王陛下と王子しか知らないのだという。

 そのためここの維持は歴代の王の仕事であり、定期的に国王陛下が土魔法を使って整備しているのだそうだ。


 有事の際の脱出を想定して作られたこの道を逆に利用し、僕たちは城への侵入を目論んでいた。



 2日前、カメヨコ村に辿り着いた僕たちは、そのままレジスタンスの本部となっていた町長の家へと案内された。

 そこで待ち受けていたのは過剰すぎるほどの歓迎だ。

 国王陛下の身柄を押さえられ、城も町も落とされた玄武の国の国民たちは、第一王位継承者であるロック王子の帰還を今か今かと心待ちにしていたのだという。


 だが彼らは僕たちに現状を伝えて、帰国を早めるように要請することはなかった。

 早く帰ってきたところで、『勇者』を失くした王子は戦力にならないのだから、問題が解決するわけではない。

 それよりも王子が帰ってくる前に奪還作戦の準備を整えておき、帰国した時に起こるであろう戦意の高揚を利用して、その勢いのまま町を奪い返すべきだという考えに至ったのだという。


 彼らは王子の帰還を心から喜び、一通り喜んだ後は揃って王子に頭を下げていた。

 旅に出ていた間に町を守れなかったことを悔いていたのだ。しかし王子はそれを許した。

 彼らも僕らと同様に予想外の状況に直面し、それでも必死に対処してこうして生きてこの場に集ってくれたのだ。

 それで十分なのだと王子は言い、町長の家に集った生き残りたちは揃って涙を流していた。



 そんなことがあって僕たちは現在、こうして亀岩城奪還作戦の先鋒を勤めていた。

 王弟殿下がクーデターを起こして既に2ヶ月あまり。

 捕らえられた国王陛下や国の重鎮たちのことを考えれば、あまり時間を掛けるわけにもいかないので、到着早々に救出作戦を決行したのだ。


 今頃地上では多くの兵士たちがタートルの町へと攻め込んでいる頃だろう。

 彼らが注意を引いているうちに、僕たち別働隊が城の中に侵入して人質を救出。

 あわよくば王弟殿下も倒してしまおう、というのがこの作戦の概要だ。



 僕はうしろを振り返り、突入部隊の姿を改めて見回していく。

 これはいわゆる奇襲作戦だ。メンバーは厳選されており、見慣れた顔も何人か確認できた。


 その内訳は、エイト兵士長に率いられた軍の精鋭と、神殿長のばあちゃんに付き従う闇の神殿の巫女の凄腕たちだ。

 作戦の内容的に、これは闇の神殿の巫女の仕事である。

 だが、城へと通じる秘密の通路及び、城内の王族の居住区へ突入するためにはどうしても王子の協力が必要であるため王子が最前線に出向くことになり、ならば護衛が必要だろうと兵士たちも参加しているのだ。


 参加者の中では僕の実力は正直一歩劣っている。

 だが王子が危険地帯に出向いているのに他の3人のように留守番をしているわけにはいかない。

 僕は勇者の供として王子から離れないことを条件に、この作戦への参加を許可されていた。


 ハヤテとデンデとシャインはこの作戦には参加していない。

 3人共カメヨコ村で留守番をしている。

 村には町から逃げ延びてきた母さんとジャックもいたので、2人に預けてきたのだ。

 2人に再会できた時、僕はつい堪えきれずに涙を流してしまったが、母さんは黙って僕を抱きしめてくれた。

 夫と2人の息子を失い母さんも辛かったはずなのに、僕の帰りを喜んでくれた母さんには感謝することしか出来やしない。

 その母さんに3人を預け、僕たちは再び死地へと出向いているのだ。

 これ以上母さんを悲しませるわけにはいかない。

 僕は絶対に王子と共に生きて帰ることを誓っていた。



「到着しました。この扉を抜ければ亀岩城の内部へと侵入することができます」


 随分と長い間地下道を歩き、僕たちは遂に城の入り口へと到達した。

 この先は宮廷魔道士たちの研究施設の下にある倉庫に繋がっているそうだ。

 出入り口は壁と一体化しており、見破られている心配はまずないとの話ではあるが油断はできない。


 なにしろこの先はクーデターを起こした王弟殿下とその配下の領域なのだ。

 「ゴクリ」と唾を飲み込む音が響き渡った。

 一体誰だと思って見回してみれば全員が揃って僕の顔を覗き込んでいる。

 どうやら一番緊張しているのは僕だったようだ。

 ペコリと頭を下げてから、腰にぶら下げた剣を抜いて戦闘に備える。


 狭い城内では得意の槍はその威力を十全に発揮できない。

 だから僕は今回の城内戦では剣を使うことに決めていた。

 今回の作戦のリーダーを務めるエイト兵士長が全員の準備が整ったことを確認したところで、先頭に立つ兵士が扉を開ける。


 ここから先は敵地だ。だからいかなる状況に陥ろうとも冷静に対応するつもりでいた。

 だが、扉を開けた瞬間に足元に落ちてきた物を見た瞬間、そんな誓いは頭から吹き飛び、僕は叫び声を上げてしまう。


「ぎゃあ! んんんん! んんんん!!」


 思わず上げてしまった悲鳴は、エイト兵士長の手で無理やり抑えられた。

 見ればロック王子もまた、別の兵士の手で悲鳴を止められている。

 僕と王子以外の参加者は顔をしかめてはいるものの、悲鳴を上げている様子はない。


 足元には生首が転がっていた。

 顔を上げれば隠し扉の先の倉庫の中は死体が散乱していたのだ。

 突然襲われる覚悟はしていても、突然生首が転がってくるという覚悟はしていなかった。

 結局、僕と王子が落ち着くまでにはそれ相応の時間が必要となる。

 だが、突入部隊は全員が僕たちの復活を待ってくれていた。

 経験不足を痛感し、僕は軽くへこんでしまう。


 バシィ!!


 だがしょぼくれかけた僕と王子の背中は思い切り叩かれたことで無理やり伸ばされた。

 そして僕と王子の崩れかけた心を一撃で立て直したばあちゃんが、聞いたこともない厳しい声で命令を下す。


「2人共、反省するのは後にしな。あたしが扉を見張る。他の者は手分けして、死体の検分を始めな」


 齢80超えとはとても思えない俊足で倉庫本来の入り口へと到達し、扉の向こうに誰もいないことを確認してから、ばあちゃんは首を縦に振る。

 エイト兵士長以下、突入部隊の者たちは一斉に散らばり、積み上げられた死体を一体一体確認していた。

 僕と王子はしばらく意味が分からず呆然としていたが、彼らが何をしているのかようやく気づき、今度は愕然としてしまった。


 彼らは救出する予定だった国王陛下以下国の重鎮たちが既に殺されている可能性を考え、遺体のチェックを行っているのだ。

 僕は彼らは生きたまま捕まっていると思い込んでいたので、殺されている可能性など全く考えていなかった。


 だがそんなことはありえない。

 敵に捕まり、しかもその相手はモンスターへと変わり果てている。

 最初は生かすつもりでも気が変わることだってあるだろう。

 救出作戦が遺体の回収作業に変わることだってあるのかもしれない。

 そういう覚悟が僕と王子にはなかったのである。


「エイト隊長、確認完了しました。この場の死体は全て一般兵と城内で働いていた使用人のみです」

「了解した。では手筈通り二手に分かれる。王子は私たちと共に王族の居住区へ。神殿長様は巫女たちを率いて城の地下牢の確認をお願いいたします」

「任せな。分かっているだろうが、戦闘は最小限に。ここが敵地のど真ん中だってことを忘れるんじゃないよ」

「もちろんです。お気をつけて」


 ばあちゃんは頷いたかと思うと、するりと扉の隙間から奥へと消え、次々と巫女たちがそれに続いていく。

 陛下たちがどこに捕まっているのか分からないので、居住区と地下牢の二箇所に当たりをつけて、それぞれ別働隊が出向くようにしたのだ。


 今回の作戦に参加することをばあちゃんは強硬に主張し、結果として参加している。

 カメヨコ村にはばあちゃん以下、闇の神殿の巫女たちも落ち延びてきていた。

 彼女たちが僕たちの口から事の顛末を聞いた直後に上げた嘆きの叫びは未だに耳の奥にこびりついている。



 アナ姉が死んだからだ。闇の神殿が総力を上げて育て上げ、そして彼女たちと共に暮らしてきたアナ姉が。


 もちろん事前に報告は届けられていた。しかし信じたくなかったのだろう。

 兄さんが1人バードに残ったという話をした時のジャックたちの顔も似たようなものだった。

 王子の帰還で上がった士気は、町長と闇の勇者の死亡が確定したことで一時的に落ち込んでしまう。

 だが翌日、彼らは気持ちを切り替えて再び士気を上げていた。

 この辺り、やはり事前に話を聞かされていたからなのだろう。

 直接現地で別れを体験した僕たちは、未だに引きずったままであるためにいまいち士気が上がっていない。

 だが彼らのこの盛り上がりが空元気だと、僕たちはすぐに実感することとなった。


 亀岩城奪還作戦のメンバー選考が始まると、本来ならば村に残る予定だったばあちゃんが参加を強く要望したのだ。

 その様子はまるで死に場所を探している老兵のようであった。

 そこで気づいた、誰も彼もが気持ちを切り替えたわけではなく、半ばやけっぱち、暴走しているだけなのだということに。

 勇者が殺され、町長が死んだことは、タートルの町の住人にとっては、やはり耐え難い出来事だったのだ。


 結局ばあちゃんの参加は認められることとなった。

 暴走していることは確実だが、ばあちゃんが実力者であることもまた事実。

 かつての闇の勇者の供、歴戦の戦士だったばあちゃんは、こうして闇の神殿の巫女たちをまとめるリーダーとして作戦に参加したのである。



 ばあちゃんたちが倉庫から消えてすぐ、僕たちも扉を開けて階段を駆け上がっていく。

 この倉庫は城の左前足のいわば足首にあたるため、居住区のある城の中央部へ行くには一旦上に登らなくてはいけないのだ。


 階段の途中には先行したばあちゃんたちが仕留めたのだろう、いくつかのモンスターが倒れていた。

 この階段を登るまでの間は、先行するばあちゃんたちが出会ったモンスターを仕留め、後から追いかける形の僕たちが魔石を取り出す段取りとなっている。

 モンスターを完全に倒すためには体内から魔石を抜き出す必要があるが、仕留めた後に魔石を抜き出していると、どうしても足を止めるために時間が取られる。

 だから役割を分担したのだ。後々復活されても困るので、僕らは時折足を止めながら、黙々と魔石を回収し、階段を登り続けていく。



 階段を登りきった僕たちは、そのまま渡り廊下を突っ切って亀岩城の中心部まで踏み込むことに成功した。

 こちらにはモンスターの姿は確認できない。

 理由は定かではないが、好都合ではあるので、僕たちは邪魔されることなく、目的の王族の居住区へと向かって足を早めるのだった。


 目的地に到達する前に、僕たちの視界には事件現場が飛び込んできた。

 そこは国王陛下たちが王弟殿下に襲われたという、亀岩城の謁見の間。

 城の中央に位置する部屋の扉は開け放たれたままだった。

 中を覗けばおびただしい量の血が広がっており、室内の惨状は襲撃当時のままであるようだ。


「なるほど、ロリコーン伯爵のおっしゃっていた通りの光景だな」



 室内をザッと見回したエイト兵士長は、謁見の間を素通りして目的地である王族の居住区へと向かっていく。

 僅か数ヶ月前にここで勇者の旅立ちの儀式を行ったのが遥か昔の出来事のようだ。

 あの時は随分……随分と兄さんたちは酔っ払っていて、僕は一晩簀巻きにされて過ごしたのだったか……。

 いや、酔っ払いに簀巻きにされるなんて平和な証拠ではないか。


 あれだけ頭にきていた出来事だったはずなのに、思い出は美しいとは良く言ったものだ。

 僕はもう2度と兄さんの手で簀巻きにされることはないのだと思い、悲しみにくれる羽目になった。



 それにしてもロリコーン伯爵か。

 彼が間一髪、王弟殿下の魔の手から逃れたおかげで、僕たちはこうして奪還作戦を行うことが出来ていると思うと、彼の功績は計り知れない。

 なんでも彼は当時たまたま扉近くにいたおかげで運良く難を逃れ、そのおかげで王弟殿下のクーデターを外部に知らせることが出来たというのである。


 もっとも、彼は城から脱出した後、孤児院に襲いかかっていたモンスターの軍勢を相手に私兵を率いて奮戦し、現在は大怪我を負ってカメヨコ村の救護テントの住人になっているのだが。

 難を逃れた数少ない国の重鎮であり、実際に現場に居合わせた人物として、彼のもたらした情報は、今作戦において遺憾なく発揮されていた。



 そんなことを考えている間に、僕たちは遂に王族の居住区へと辿り着いた。

 見れば通路に薄っすらと膜が張られている。

 ここを王族以外が通れば、速やかに警報が鳴り響き、城の中の防衛機能が稼働するようになっているのだ。

 王子に本来の力があったままだったなら力づくで突破することも出来ただろうが、今の王子にはその力はない。

 これまで兵士たちの中央で、万全を期して守られていた王子が一歩前に進み出る。

 そして王子が膜へと触れると、結界は瞬時に消失した。

 そのスキに僕たちは居住区へと突入していく。王族が膜に触れている間は警報装置は作動しないからだ。


 僕たちはまず、王弟殿下の自室へと直行し、ゆっくりと扉を開けて部屋の中へと踏み込んだ。

 途端に悪臭が鼻を突く。見れば部屋の中は嵐が過ぎ去ったような惨状で、床には何人かの裸の女性が腐乱死体となって転がっているのが目に入った。


 彼女たちは、まぁいわゆる『そういうお仕事』をする女性たちだ。

 自堕落で享楽的で有名だった王弟殿下は、もちろん性欲も有り余っているお方だったので、彼の部屋にはそういうお仕事の女性たちが常駐していたのである。


 恐らく彼女たちは王弟殿下が暴走した時に運悪く居合わせてしまったのだろう。

 僕は彼女たちに手を合わせると同時に部屋の中を見回すが、この部屋の中には生き物の気配が存在しない。

 部屋の状況を鑑みるに、恐らくクーデター発生時から一度も戻ってきていないのではないだろうか。

 だとすると、王弟殿下のいる場所はたった1つに絞られる。


 そこは王族の居住区の最奥に位置する国王陛下の間。

 城の中で最も強固であり、最も豪華だというその部屋は、歴代の国王のみが住む部屋として、ロック王子ですらその部屋では寝起きができないとされている。

 まぁ国王の位を奪い取ったのだ、陛下の部屋にいても不思議ではない。

 だが正直良い気分はしない。僕たち突入部隊の心は国王陛下の部屋から王弟殿下を引きずり出そうという気持ちで一つとなっていた。


 僕たちは揃ってその部屋へ向かい、そして扉に耳を当てた。

 中からはかつて何度か聞いたことのある王弟殿下の耳障りな声が聞こえてくる。

 更には国王陛下の苦しげな声。そしてなぜかガイアク大臣の悲鳴が聞こえてきたので、僕たちは予想外の状況に首を傾げた。


 ガイアク大臣は王弟派の筆頭として有名だった人物だ。

 その人の悲鳴がなぜ聞こえるのか。

 てっきり王弟殿下のごまでもすっているとばかり思っていたのだが。



「事ここに至れば小細工は無用。声を聞く限りでは、国王陛下の存命は確実。まずは陛下をお救いしましょう。その後のことは臨機応変に対処するということで」


 エイト兵士長の言葉に僕たちは一斉に頷く。

 部屋の中の詳細が分からないのだ、ここでまごまごしていても埒が明かない。

 何をおいてもまずは突入し、国王陛下を最優先で救出する。


 エイト兵士長の指示通り、僕たちは国王陛下の居室へと突撃した。

 思い切りぶっ飛ばしたのだが、扉には鍵は掛かっていなかった。

 右側の扉は音を立てて開け放たれ、左側の扉は金具が外れたのか吹き飛んでいく。


 部屋の中には3人の人物がいた。

 本来ならば国王陛下と第一王位継承者しか着ることのできない茶色い貫頭衣を着てソファにふんぞり返っている豚は久しぶりに見る王弟殿下なのだろう。

 前回見たのは数年前だった(彼は勇者の旅立ちの儀式にも顔を見せなかった)が、その頃よりも一段と体積が増えたように見受けられる。


 もうひとりは予想通りガイアク大臣だ。

 彼は椅子に縛り付けられており、顔は真っ赤に腫れ上がっていた。

 いや、良く見ればあれは流血なのか。

 彼は椅子に縛られて状態で、大量の血を流していたのだ。

 彼の周りには本やら酒瓶やらが所狭しと転がっている。

 どうやら彼はあの体勢のまま、王弟殿下に物を投げつけられていたらしい。


 そして最後の1人は第一目標である国王陛下だ。

 陛下もまた茶色い貫頭衣を着ていたが、大臣とは違い、天井から吊り下げられていた。

 だが当初、僕は陛下を見ても、それが陛下であるとは認識できなかった。

 旅に出る前は毎日のように見ていたお姿だ。

 天井から吊り下げられた程度では見間違うはずがないというのに。


「うわあああぁぁぁ! 父上ぇぇぇ!!」


 悲鳴を上げて飛び出そうとするロック王子の体を慌てて取り押さえる。

 ステータスが激減したというのに、危うく振りほどかれそうになった。

 それほどまでに王子の勢いは凄まじかったのだ。

 僕は王子が取り乱した理由を知るために、もう一度陛下に目を向ける。



 陛下には足が存在しなかった。



 「え?」


 暴れる王子を抱え込みながら、僕の頭は真っ白になった。

 陛下の足が、訓練で疲れている時、勉強に行き詰まった時、いつもしっかりとした足取りで近づいてきて、僕を労ってくれた陛下の両足が膝のところで切断されているではないか!


 よく見ればガイアク大臣の足元に、腐った足らしきものが転がっている。

 あれは陛下の足? あの腐乱具合を見ると、切り落とされたのは随分前なのか?


 僕たちは助けるべき国王陛下のあまりの惨状に動きを止めてしまった。

 そんな中、ようやく僕たちがやって来たことに気づいたのか、王弟殿下が、いやクーデターを起こした王弟の豚野郎が、ロック王子に声をかけた。


「待ちくたびれたぜぇ甥っ子ぉ。さぁ正式な王位の継承を始めようかぁ」

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