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勇者の隣の一般人  作者: 髭付きだるま
第六章 人類敗北編
154/173

第百五十二話 勇者の迷宮その4

Side:ダイアナ



 荘厳な彫刻、十分な高さの天井、そして複数人で歩くことに支障のない広さを持ち仄かに光り輝く整備された通路。


 もしこれが地上に存在する建物だったなら、感動に打ち震えていたかもしれない。

 しかし残念なことに、ここは迷宮だ。

 一瞬の油断が死に直結する場所で、そんなことをしている場合ではない。


 私はいつ終わるとも知れない通路を慎重に歩きながら、なぜこんなことになったのだろうと思いを巡らせていた。



 私の記憶が確かならば、私をここに落としたのはエースさんとキング君のはずだ。


 あの時、ナイトに授けられた『勇者の先生』というスキルのとんでもない効果に驚いた次の瞬間、私は思わずサム君へと視線を向けていた。


 そこで私が目にした光景は、氷の勇者であるサム君の体が、同行している女性の体と融合しているという奇妙なものであり、同時にその女性の左腕がもうひとりの女性の体を刺し貫き、心臓を握りつぶしているという恐ろしいものであった。


 更に私を混乱させたのは、女性が殺害されると同時に、エースさんとキング君が私たちに攻撃を仕掛けてきたことだ。

 「逃げろー!」と叫びながら全身を金色に光らせて、肥大化させた拳で殴りかかってくるエースさん。

 キング君はシャインのように全身を発光させ、テルゾウさんが使っていたような強力な光魔法を私たちに向けて射出している。


 私には彼らの動きが見えていた。

 にもかかわらず、私は動くことができなかったのだ。

 味方に突然襲われるという異常事態に体の反応が一瞬遅れてしまったのである。


 私が勇者としての力を十全に発揮できていたのなら、ロゼとエルはもちろんのこと、ヨミとゲンも助けることができたはずなのに。


 私たちの命を救ってくれたのは、ヨミとゲン、2人の天使たちだった。

 2人はあの瞬間、ロゼとエルを私に向かって突き飛ばし、キング君の放った光魔法の直撃を受けてバラバラにされてしまったのだ。


 2人を失ったという衝撃もつかの間、今度はエースさんが私たちに襲いかかる。

 ヨミとゲンの犠牲のおかげで立ち位置がズレたおかげなのだろう、彼の拳は私たちではなく、私たちの前方の地面へと叩きつけられた。

 その威力は凄まじく、拳を受けた地面はひび割れ、崩壊し、私たちは揃って崩落に巻き込まれていく。

 悲鳴をあげる暇さえもない。私は為す術もなく地下へと吸い込まれていくロゼとエルの体を掴み、崩れ落ちる地面を足場に脱出を試みた。


 しかしそれを黙って見ているほど、エースさんは甘くなかった。

 私たちの脱出経路を防ぐように、巨大な拳が迫ってくる。

 私たちを襲っているエースさん本人がなぜが「防御しろぉ!」と叫んでいたが、言われなくてもそうする以外に道はなかった。

 私はすぐに掴み直すつもりでロゼとエルから手を離し、腕を交差して彼の拳をまともに受けた。受けてしまったのだ。


 私は勇者だ、そのステータスは並の人間とは一線を画している。

 土の勇者であるロックや、歴戦の勇者であるテルゾウさんには劣るかもしれないけれど、それでも勇者である私へとダメージを与えられる相手など早々いるものではない。

 そんな油断がなかったとも言い切れない。

 私はエースさんが放った一撃の予想外の威力に意識を失ってしまい、気がついた時には、一人きりで迷宮の中に倒れていたのだ。


 正直に言えば、しばらくの間、私に自分が迷宮の中に落ちたことに気づけなかった。

 私が目を覚ました場所は、迷宮内の吹き抜けに接しているテラスのように突き出た部分の1つだった。

 地上から落下した際に運良くここに引っかかったらしい。

 改めて考えてみるまでもなく、運が良かったのだと思う。



 目を覚ました当初、私は混乱の極みの中にあった。

 そこにいたのは私だけであり、周囲にロゼとエルの姿は見当たらない。

 そして体の動きがやけに鈍い。怪我でもしたのかと隅々まで体を調べるが、骨を折ったわけでも内蔵を傷つけたわけでもなさそうだ。

 理由が分からないので、現状を把握しようと思い、私はステータス画面を開く。

 そこに表示されていた内容を見て、私の頭は真っ白になった。



『名前:ダイアナ 


  LV51


 (『忍者』による上昇値:HP、力、頑強、運が200、素早さが500、MP、心力が100

 レベルアップによる上昇値:    51)


  HP:20+251=271

  MP:20+151=171×2=372


    力:18+251=269

   頑強:20+251=271

  素早さ:40+551=591

   心力:22+151=173×2=356

    運:10+251=361


  所有スキル:巫女LV10、暗殺の天才LV0、闇の加護LV0、無限収納LV0、闇属性魔法LV0、忍者LV10、影使いLV10、モンスター使役LV1、料理人LV10

  特殊能力:巫女(MP、心力の値を2倍にする)、暗殺術、闇の加護、アイテムボックス無限、闇属性魔法、影使い、料理レシピ入手残り10』



 ……ない。

 ない、ない、ない、ない! どこにもない!

 私の『勇者』が失くなっている!


 確かにこれならば今のこの状況も理解出来る。

 全ステータスがマイナス1万になったのだ。動けなくなって当然ではないか。


 って、そんな風に冷静になっている場合じゃない!

 何これ? 何なの? 私が気を失っている間に一体何が起こったっていうの?


 私はパニックを起こしたが、体を動かすことすらできず、ただただ叫ぶことしかできなかった。

 しかし、どれだけ叫んでも、喚いても、現状が変わるわけではない。

 とりあえず、冷静にならなくちゃ。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせ、私は幼い頃から受けてきた、闇の神殿の巫女としての訓練の通りに深くゆっくりと深呼吸をする。


 す~はー、す~はー


 と何度も繰り返しているうちに、段々と気持ちは落ち着つきを取り戻す。

 焦って良いことなど何もない。闇の勇者は暗殺者、暗殺者が焦ってどうするのだ。

 落ち着け、落ち着け、頼むから落ち着いてと自分に言い聞かせ続け、私は懸命に冷静になろうと努めていく。


 結局落ち着くまでに掛かった時間は優に一時間は超えていただろう。

 それでもなんとか冷静さを取り戻した私は、改めて自らのステータス画面を閲覧する。

 やはり何度見たところで、私のステータスには『勇者』がない。

 その代わりに、先程は気がつかなかった項目が目についた。

 そこには、「スキル『独占』使用者のステータス・健康状態・現在地」という見慣れないものが存在しているではないか。


 私はそれを見て状況を察した。

 あくまでも察しただけだ、現状を完璧に理解したとは言い難い。

 それでも分かったことは幾つかある。


 ・大魔王が復活している

 ・『勇者』は独占されてしまった

 ・サム君と大魔王には何らかの繋がりがある

 ・エースさんとキング君が攻撃してきた理由は恐らくこれが原因

 ・大魔王は大怪我を負っている

 ・現状、私の力では大魔王にはかなわない



 こういうことなのだろう。私の考えが間違っていなければ。



 ……どうしよう。


 どうしようも何も私は勇者だ。魔王がいるなら倒さねばならない。

 それが大魔王ならば尚更だ。

 でも今の私は『勇者』を失っており戦力にはならない。

 ステータスなんて一番数値の高い素早さですら、50倍もの開きがある。

 これでは戦いにすらならないだろう。出会った瞬間、文字通り瞬殺確定だ。


 ……どうにもならない。


 そういう結論に至らざるを得ない。現時点ではどうにもならない。

 今の私は大魔王とは戦えない。大魔王どころか普通の魔王とも戦えないし、魔族にだって勝てないだろう。

 そこまで考えて、私は置かれている状況のまずさに体を震わせることになった。

 私は今、構造を全く把握していない迷宮の中でたった一人きりなのだ。

 敵が現れたら今の私では抵抗もできない。そもそも体がまともに動かないのだ、戦うことすらできずに殺されてしまうだろう。


 そこまで考えて、ようやく私は「この場から移動しなければ」という考えに思い至った。

 ここは迷宮だ。迷宮の中は危険ではあるが、同時に安全地帯も存在する。

 階段、そう階段にまで辿り着ければ、モンスターにも襲われないし、罠もない。

 とにかく落ち着いてものを考えることのできる場所まで行かなければ!


 そうしてようやく私は立ち上がった。

 いや、立ち上がろうとしたのだ。しかし、私はまともに立つこともできなかった。

 体の動きが鈍いとは思っていたが、ステータスが激減した影響はやはり無視できないものがあるのだろう。

 立ち上がることもできない私は、それでもなんとかして動こうと、あの手この手を試し続け、ようやく体を動かす方法に辿り着いた。


「驚きましたね。まさか『影使い』にこんな使い方があったとは……」


 私は自らの体に影をまとわりつかせることで、体を動かすことに成功していた。

 体は思い通りに動かないけれども、影は動かすことができたので、『影を使って体を操る』という方法に気づいたのだ。


 かつてナイトたちと共に魔族に襲われて以来、私はあの時役に立ったこのスキルを磨きに磨き抜いてきた。

 攻撃にも防御にも使えるこの能力は、極めれば精密動作も可能となる。

 スキルの発動のために、MPを必要としないこともありがたい。

『勇者』を失くした私にとって、このスキルはまさに生命線と言っても良いものへと変化していた。


 始めはゆっくりと、慣れてきてからは段々と早く、私は影を使って、自らの体を操っていく。

 幸いなことにこのテラスにいる間はモンスターに襲われることもなく、じっくりと動きの練習をすることができた。

 そうしてようやくそれなりの動きができるようになった頃、私は目眩を感じ、床に倒れ込んでしまったのである。


 それと同時にお腹がなり、私は自分が空腹であることに気がついた。

 こんな状況であっても空腹を感じる自分に情けなさを感じながら、私はとりあえず食事をとることにしたのであった。



 お腹を膨らませた私は、慎重に迷宮の通路へと足を踏み出していった。

 『勇者』があった時には感じなかった緊張感が全身を包み込んでいる。

 ここが迷宮の何階なのかも分からないのだ。手に負えないモンスターに出会ってしまったら、今の私のステータスでは対抗できない。

 足がすくむのも仕方のないことだろう。


 だが、この時の私は、まだ動揺が抜けきっていなかった。

 仲間を失った直後に頼みの『勇者』すら失くしていたのだ。冷静になったつもりでも、注意力は散漫になっていたのかもしれない。

 私は迷宮の罠を踏み抜いてしまった。

 その瞬間、床一面に魔法陣が広がり、「しまった!」と思う間もなく私の体は転移させられてしまう。

 転移した先には大量のモンスターが密集していた。

 私は転移の罠を踏み抜き、モンスターハウスへと放り込まれてしまったのだ。



 モンスターハウス

 それは迷宮の中に存在する、大量のモンスターが閉じ込められている一室を指す言葉だ。

 そこには多くの種類のモンスターがひしめくように集まっており、通常同じ階には同じモンスターしか出ないはずの迷宮の中では非常に特異な空間として知れ渡っていた。


 だがなによりも恐ろしいのは、その部屋に集められたモンスターの数である。

 モンスターがひしめく檻の中に放り込まれた者はどうなるのか?

 それを私は骨の髄まで味わう羽目になったのだった。


「グガアアァァァ!」

「ゲギャガガ! ガガガァ!」

「オッ! オオォッ! オッ!」

「ヒイイイィィィ!!」


 四方八方から私に向かってモンスターの大群が殺到する。

 私は状況のあまりの不味さに悲鳴を上げながら、必死に攻撃を防ぎ、迫り来るモンスターたちを切り刻んでいた。

 幸いなことに転移してきたこのモンスターハウスの中には低レベルのモンスターしか見当たらない。

 だがしかし、ステータスが激減し、体を十全に動かせない状態でこの数と戦うのは、いくらなんでも無茶が過ぎた。


 必死の抵抗も虚しく、ゴブリンの振るった棍棒に体を打ち据えられ、動きが止まったところにオークの体当たりを受けた私は、壁に叩きつけられてしまう。

 その際に体を覆っていた影の鎧が解けてしまい、私が女性だと気づいたモンスターたちは、下卑た表情を浮かべた。

 見ればゴブリンやオークたちが、腰巻きを脱いで私に迫っているではないか。

 私はその姿に、北ヤマヨコの町でエルに襲いかかった町の男たちの姿を思い出し、そして女性がもっとも注意しなくてはならないことを思い出していた。


 エリック先生も神殿長様も、女性の勇者や冒険者が気をつけるべき案件として、何を差し置いても貞操を守ることの重要性を説明していたのだ。

 モンスターや魔族の中には人間の女性を襲い子供を産ませる輩も存在するという。

 また、盗賊を始めとした犯罪者がまず狙うのは、力の弱い女子供だ。

 モンスターとの戦いに破れた女性たちが、モンスターに襲われて彼らの子供を無理やり産まされたという話は枚挙にいとまがない。


 私は動かない体と失くした『勇者』を想い、迫り来るモンスターたちの姿を見て、体の震えを抑えることができなかった。

 今にも彼らは私に殺到し、抵抗できない私を情け容赦なく辱めるのだろう。


 いやだいやだ、そんなのは嫌だ!

 私の体はナイトのものなのだ。ロゼのようにナイトと甘い夜を過ごしたいとずっとずっと思い続けてきたのに!


 私は動けない体を懸命に動かし、どうにか両手を前へと差し出すことに成功した。

 しかしその腕にはなんの力もない。私の『勇者』は消滅しているのだから。

 絶体絶命! ならばせめてこの身が汚される前に死ぬしか! と考えた私はアイテムボックスからナイフを取り出し、その瞬間にまだ手の内が残っていたことに気がついたのだった。


 そうだ、私にはアイテムボックスがある。

 このアイテムボックスの中にはロゼが作った薬が大量に保管してあるではないか!

 取り出すか? でも相手との距離は近いし、どれがどれだか私にはよく分からない。


 せめて相手にスキができれば、魔法が使えれば!


 と考えた直後、私は自分が『魔法を使える』ことに思い至り、「ダークスモーク!」と叫び煙幕を張ることに成功した。



「グガァ?」

「ゲギャ? ゲギャギャ?」


 モンスターたちの困惑する声が煙の向こうから聞こえてくる。

 私は視界を奪った瞬間に再び体を影で覆い、体を動かし、距離をとって、一息つくことに成功していた。


 私は魔法が使えた。なぜなら勇者である私は独占されている『魔法の心得』は持っておらず、替わりに『闇属性魔法』のスキルを所持しているからだ。

 スキル『独占』の効果により、ほとんどの魔法使いたちは魔法を使えなくなっているのだろうが、私は魔法が使える状態を維持していたのである。

 だがだからといって乱発はできない。『勇者』が失くなった現状、MPの値も激減している。ここはやはり、ロゼの薬に頼って戦ったほうが確実だろう。



 私はアイテムボックの中からロゼが使っていた薬の入った樽を引っ張り出す。

 闇の勇者として夜間でも夜目が効くように訓練してはいるものの、流石にダークスモークの煙幕の中で細かい字を読み取ることは不可能だった。

 私は影を使って樽に入っている薬を掴み取り、手近なモンスターの口に次々とねじ込み効果を探っていく。


 効果なし、効果なし、反応からしてこれは気付け薬、効果なし、効果なし、眠った、痺れた、効果なし、効果なし。これで十分だ。


 私は眠り薬と痺れ薬だけを残して残りをしまい、吸い込まないように気をつけながら、ロゼの薬を部屋の中にばらまいていく。

 あるものは痺れ、あるものは眠り、そしてあるものは痺れながら眠りについた。

 私の近くにいたモンスターたちには、真っ先に両方をねじ込んだので、襲われる危険は全くない。


 気がつけば部屋の中の全てのモンスターはその動きを止めていた。

 私はダークスモークを解除して、明るくなった室内を見渡す。

 都合百体はいるだろうか? 広い室内であるはずなのに倒れているモンスターの数が多すぎて、むしろ狭く感じるくらいである。


 私は愛刀を握りしめ、まずは全てのモンスターの首を落とし、それからゆっくりと魔石を回収していく。

 今の私に見逃すという選択肢はない。まぁ元々モンスターは目についたら殺していたのだ、いつもとやっていることは同じである。


 そうして淡々とモンスターを倒し続け、遂に部屋の中にモンスターは一体もいなくなった。

 途中でレベルも1つ上がった。だがスキルへの配分は後回しだ。

 まずは部屋からの脱出が最優先である。

 だがなぜか部屋から出ることはできなかったのだ。



 モンスターハウスの中には、中のモンスターを全て倒さないと脱出できないものもあるという話は聞いたことがある。

 ひょっとしてそれなのだろうか? しかしもう何も見当たらないのだが。

 おかしい。モンスターはもう見当たらないというのに、まだ生き残りがいるというのか?

 私は全てのモンスターが消滅し、広くなった部屋の中をぐるりと見回す。

 部屋の中には何もない。せいぜい壁の隅に汚れがある程度だ。

 しかし他に手がかりもないので、私はその汚れに向かっていった。

 そして気がついたのだ。それが汚れではなく、2匹のスライムであることに。


 スライムたちは私が近づいた時には体を寄せあって震えていた。

 違うか、これはどう見ても痺れている反応だ。おそらくばらまいた痺れ薬が効果を発揮したのだろう。

 汚れだと見えたのはどうやら魔石だったようだ。つまり汚れと見間違える程度の小さなクズ魔石であり、それはそのままスライムたちの無害さを示していた。

 私は一度刀を振り上げたが、ふと思い立って刀を下ろす。

 そしてステータス画面を開いて、モンスター使役の項目を閲覧した。


 スキル『モンスター使役』

(モンスターを使役することができる。レベルを上げると使役数が増える)


 現在、私のこのスキルのレベルは1。

 今回の戦いでレベルが上ったから、もう1つレベルを上げれば、使役数は2体に増える。

 だからといってスライムで良いのだろうか? もっと強いモンスターもいるのに……


「いえ、スライムにしましょう。貴方たち、私に付いてきますか?」


 私は『モンスター使役』のレベルを上げてから、スライムたちに問いかける。

 スライムたちは痺れているためだろうか、全く体を動かす気配がない。

 しかし次の瞬間、ほとんど透明だったスライムたちの体が黒く染まっていき、気がつけば黒いボディに魔石がキラリと光る、2匹のスライムが目の前に存在した。

 そのスライムたちは2匹揃って私に向き直り、ググッと体を折り曲げる。

 どうやら挨拶をしているらしい。勧誘は成功したようだ。


 それと同時に左右の壁が動き始める。

 左の壁の先は待望の階段であり、右の壁の先には通路が存在していた。


 スライムは確かに弱いかもしれない。

 しかし私も女の端くれとして、ゴブリンやオークのような襲われるかもしれない相手を仲間にしたいとは思わない。

 それに次に出会うモンスターがどんな相手なのかなど分からないのだ。ならばまずは目の前の2匹で良いのではないかと思ったのである。


 私は2匹のスライムを仲間にし、彼らに迷宮の探索を命じた。

 そして私は階段に入り、踊り場に座り込んで眠りにつく。

 随分と長い間眠った後、私はスライムに起こされた。

 そしてボロ布をまとい恐ろしげな叫び声を上げる怪人物が近づいてきていることを知らされたのだ。


 大魔王が復活した直後に迷宮の中をたった一人でうろついているのだ。これが人間であるはずがない。

 格好といい、叫び声といい、私たちの生死を確認に来た下っ端魔族と考えて間違いないだろう。


 私はスライムたちと共に彼と戦い、死ぬ寸前にまで追い詰められてしまう。

 襲いかかった相手がナイトだと気がついたのは、とどめを刺される寸前であった。

お知らせ


2018年8月30日(木)に「勇者の隣の一般人」第2巻が発売します。

予約の受付も既に始まっているようです。

皆様、ぜひともお買い上げください。

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