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「なんじゃ、つれないのぅ」
エルフ国王はつまらなそうに言うと手を離してくれた。
「せっかくリイムをからかって、楽しませてやろうとしたのに」
ブツブツ言いながらリイム隊長の方に向かう。
「父上!さすがに我慢の限界です!」
「欲求不満は大好きなクルト王子で発散すればよかろう?」
「違う!そういうことじゃない!」
「じゃあどういうことなんじゃ?」
「ぐううー!父上はいつもそうだ!もっと真剣に!」
「真剣にもてなしてもつまらないじゃろう?」
「はぁ…一つ一つ聞いていきますから、答えてください」
リイム隊長は、何を言ってもはぐらかすエルフ国王に対して、付き合うのをやめた。
「クルト王子を侮辱した件について」
「クルト王子、すまなかった。ドッキリのためじゃったのじゃ。もちろんおわびも用意してあるから、何卒ご容赦を」
国王が軽く会釈してきた。
え、そんな簡単に頭とか下げていいの?
「えっと、さっきリイム隊長にも言ったんですけど今まで言われ過ぎて気にしてないんで…」
「クルトはそう言ってるが私は許さない。父上は牢獄1週間の刑、牢屋に国民が24時間出入りできるようにして、見世物にする!」
「えー、あそこ寒いから嫌なんじゃがー」
「はい、次、クルト投獄について」
「うーむ、むしろおかしいと思わなかったか?リイムよ」
エルフ国王は牢獄の刑と言われても気にしてない様子だった。
入りなれてるのか?いや、そんなことはないだろう、国王だし。
「なにがおかしい?」
「エルフ侮辱罪ってなに?って思わなかったか?」
「…言われてみれば」
「そんなもんなかろう!かっかっかっ!」
え、そういう法律があるのかと思ってた。
え、ないの?
僕が国王からリイム隊長に目を向けると、目が合った。
「確かに、ない…なぜあのときの私は…クルト王子が侮辱されて投獄されたことに頭が真っ白になってて…」
「むしろクルト王子が侮辱されておるのになぁー?おっちょこちょいのお茶目姫じゃなー?」
ひゃひゃひゃ!と嬉しそうに笑うエルフ国王。
リイム隊長はどんどん元気が無くなっていく。
「し、しかし、牢屋の中でクルト王子が自害してしまう可能性については!」
「クルト王子に自傷できない魔法をかけておいたのじゃ。はい論破!」
え!?そんな魔法あるの!?
死にたいのに死ねない地獄を味わわせることとかできそう。怖い魔法だ。
「ぐぬぬー!父上ー!」
「まだまだじゃな、リイムよ。精進せえ」
はっはっは、笑いながら部屋から出ていくエルフ国王。
そのまま背中を見送る。
はずもなく、エルフ国王はリイム隊長に拘束され、投獄された。
「リイムよ、寒いのじゃが」
「知りません」
「リイムよ、わしは国王なのじゃが」
「知りません」
リイム隊長はもう真顔だった。
感情のない真顔だった。
「お、国王が投獄されてるぜ!」
「噂は本当だったんだ!」
「なんか今日は色々あるなぁ!」
ぞろぞろと国民が代わる代わる牢屋にやってくる。
まさにに見世物小屋だ。
「国王、あんまりリイム王女に迷惑かけるなよ!ほら、水!」
「国王、退屈しないようにちょっとエッチな本買ってきたからあげるよ!」
「国王(笑)」
国民に慕われてる?のか、投獄されてても国民は大して気にしてない様子だった。
なぜか僕はリイム隊長と、牢屋の前に豪華な椅子を並べて座って、国王を監視している。
なんで?
「我が国の民は優しいのう!それに比べてリイムは親不孝者じゃ!実の父を投獄するなんて!」
「もう1週間刑期を延ばしましょうか?」
「ひゃひゃひゃ!国王の仕事をしなくてよいのは楽じゃのう!大臣どもが大変じゃな!」
「大臣たちには父上が戻るまで何もしないように言っておきました」
「国王ピーンチ!」
こ、この親子ってもしかして。
めっちゃ面白い!?
結局、夜になったら国王は解放されて、普通に宴が開かれることになった。
リイム隊長も機嫌を治して、宴が始まるまで、僕と一緒に部屋で色々な話をしていた。




