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「リイムとクルトのちょっといいとこ見てみたい!それ!キース!キース!さっさとキース!」
エルフ王がそう言うと国民全員の「キース!キース!」コールが始まり、リイム隊長が真っ赤な顔をして「やめろー!」と叫びまくっていた。
僕はまだ気が動転していて、何も言えなかった。
「ふぉふぉふぉ、リイム、これはクルトとキスしないとおさまらんなぁ」
ニヤニヤと楽しそうな国王。
チラチラと僕のことも見てくる。
すると、リイム隊長と目が合った。
真っ赤な顔だけど、目が潤んでいて、ちょっと恥ずかしそうな表情は、綺麗だった。
リイム隊長が近づいてくる。
それに合わせてさらにキスコールが大きくなる。
目の前までリイム隊長が来た。
僕の方が背が低いので、見上げる形になる。
リイム隊長の顔が近づいてくる。
え、これってまさか…
「クルト王子、少し我慢してくれ」
そう言って僕はリイム隊長にお姫様抱っこをされた!
することはあっても、されるのは初めてで、こ、これは恥ずかしい!
「しっかり捕まってろ」
そう言ってリイム隊長は、素早い動きでバルコニーから飛び降りた。
え?エルフって壁を垂直に走れる種族なの?
え?エルフって屋根から屋根をジャンプで伝って移動できる種族なの?
「リイム!誰もいないところでクルト王子といちゃつくなよー!ひゃひゃひゃ!」
というエルフ国王の楽しそうな言葉を背中に聞きながら。
エルフ国民の拍手と笑い声を聞きながら。
「くそ!父上め!絶対いつか仕返ししてやる!」
僕をお姫様抱っこしながら宣言してるリイム隊長を、僕はずっと眺めてしまった。
リイムの部屋
僕をお姫様抱っこしながら、器用に窓から自分の部屋に入るリイム隊長。
よく物語などにある拐われるお姫様とかは、こういう気分なのだろうか。
リイム隊長の部屋は、さすが王女ということもあった、煌びやかでオシャレで良い匂いがする。
豪華だけど女性らしい感じがする。
「ふう…ほんとにあの父上は!クルト王子、本当にすまなかった!」
「いえ、あの、大丈夫です…まだ驚いてますけど…」
「クルトが牢屋で自害とかしたりしたらどうするつもりだったんだ!ドッキリじゃ済まされないだろう!」
「…」
「楽しませるという範疇を越えて、むしろ怒るだろ!なあ!クルト王子!」
「えっと…とりあえず下ろしてください…」
お姫様抱っこされたまま話続けられるのは、正直やばかった。
恥ずかしすぎて。
「あ、あぁ、すまん、いま下ろす」
リイム隊長は僕の言葉を聞いて、すぐに下ろしてくれた。
スムーズな所作はまるで、貴公子のようだった。
女性にもモテそう。
「驚きましたけど、エルフ国王は僕を楽しませるためにしてくれたことですから」
「しかし!初対面でクルト王子を侮辱したり、投獄したり、度が過ぎてる!」
「確かに色々言われましたけど事実ですし、僕は今までの人生で散々言われてきて慣れてますから…
牢屋の中で少し人生を振り返れたり、良い時間でしたよ」
「クルト王子!全然良い風に聞こえないぞ!」
「リイム隊長に出会えて、結婚したいと言われただけで、少し生きてて良かったと思えましたよ?」
プンプンと怒りが治まらないリイム隊長が、その言葉を聞いて、キョトンとした顔になる。
「それって、私に愛されてるって分かったから人生に悔いは無かったということか?」
「突拍子過ぎて、死ぬ実感は無かったんですけどね。誰かに愛されたというだけで、少し救われました」
リイム隊長にがばっと抱きつかれる。
今度は泣き出してしまった。
僕はどうしたら良いか分からなくて焦る。
「あ、な、泣かないで、リイム隊長!ごめんなさい!変なこと言って!」
「違う!クルトは悪くない!何も悪くない!」
リイム隊長は、ぐりぐりと僕の首もとに顔をこすりつける。
まるで、絶対に離さないぞという意思を表すように。
「…愛してやる!クルトが死ぬまで!クルトが嫌と言うまで!」
「リイム隊長…」
僕はリイム隊長の背中をさすりながら、泣き止むまでずっとそうしていた。
「取り乱してしまって、すまない」
しばらくしてリイム隊長は顔を上げ、僕からそっと離れる。
目は赤くなっているが、笑顔だった。
「僕の方こそすみません。なんて言ったらいいか分からなくて…変なこと言ってませんでしたか?」
「大丈夫だ…クルト王子はクルト王子だったよ」
ふふふ、と目を細めて笑う顔は、美形エルフがさらに美形になって芸術の様だった。
「まだまだクルト王子は私に恋愛感情は無さそうだな」
「えっと、その、すみません。分からないんです」
「いいんだ。悪い感情を持たれてない、いやむしろ良い感情を持たれていると感じているから」
リイム隊長が僕の手を取る。
指を絡めて握ってくる。
「嫌か?」
「嫌じゃないです」
僕は握り返す。
ストレートな表現に反射的に。
「本当は我慢しなければいけないのだが」
言いながらリイム隊長の顔が近づいてくる。
これは、まさか…
と思ったら、リイム隊長は素早い動きで部屋の出入口であるドアに向かう。
一瞬でたどり着き、ドアを蹴り開けると、そこにはエルフ国王とヘクターがいた。
「ちーちーうーえー!」
「ふぉふぉふぉ、いやぁ良いものを見れたなぁ、ヘクターよ」
「そうですね、父上!」
そうしてエルフ国王とヘクターは手を握り合い、「嫌か?」「嫌じゃないです」と言い合う。
その瞬間、リイム隊長の顔がボッと赤くなる。
さらに2人は続ける。
「嫌か?」
「嫌じゃないです」
さすがに僕も恥ずかしくなってきた。
なぜか途中から2人ともこっちを見ながら続けてくる。
エルフ国王と美形エルフ男の名演技!
2人とも途中から笑いを堪えながらやってる。
リイム隊長が下を向いてプルプルと震えだした。
これは、まずいんじゃないだろうか。
ヘクターくん!
「嫌か?(笑)」
「嫌じゃないです(笑)」
少し馬鹿にした感じに聞こえたとき、ヘクターくんが、廊下の窓から空に吹っ飛んでいった。
リイム隊長に思いっきり殴られたのだ。
ヘクターくんは星になったのだ。
残された国王はいつの間にか移動していて、さらに僕の手を握ってきて。
「嫌か?」
と言ってきた。
僕は「嫌です」と答えた。




