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「でさ、何食べようか?私はパスタって気分かなー」
「私も~、気が合うね~、ジェシカ」
「クルトとベアは?何か食べたいものとかある?」
「俺は・・・腹にがっつりくるものが食いてぇな・・・ま、パスタがいいってんなら、別に構わないぜ(クルト、お前もパスタって言えヒソヒソ)」
「僕もちょうどパスタの気分でした!」
ベアさんの言った通りに意見を言ったら、ベアさんはグッジョブ!と小さく囁いて、小さくガッツポーズをしていた。
「じゃあ、パスタに決定~!!ミートソースにカルボナーラにペペロンチーノ♪どっれっにーしよっかなー♪」
「私は~、さっぱりしたのがいいなぁ~」
「(クルト・・・女性は食に対して異常なほどこだわりを持っている・・・絶対に自分の意見は曲げてこない・・・男は自分の意見を言いつつ、妥協するのが生きていく術だ)」
「(なるほど・・・さすがベアさん・・・勉強になります)」
さりげなくベアさんの良い男講座が開かれた。
女性と一緒にいるっていうのも、気を使ってばかりなんだなぁ。
・・・ていうか、こういった外食っての初めてだ。
それも見通して、教えてくれたのかな・・・
パスタ屋
「えっとね、ペペロンチーノ超大盛りと、野菜グラタン!あ、グラタンも超大盛りね!」
「私は~、クリームスープのパスタとサラダをお願いします~」
「俺は・・・焼肉丼大盛り!!なんてものはこんなお洒落な店にはないだろうから・・・・・・・え?ある?じゃあそれで!!ひゃっほーい!!」
「えっと・・・えっと・・・」
店に入って席に着いて、みんな食べたいものが決まっていたらしく、どんどん注文していく。
僕はメニューとにらめっこ。
せっかくウェイトレスさんが注文取りにきてくれてるのに・・・
「あれ、そういえばクルトはこういった外食とかって初めてだっけ・・・じゃあ、しょうがないか」
「あ、そっか。クルト、値段とか気にしないでいいからな。今日は俺たちのおごりだ。食いたいもの食え!」
「えっと・・・じゃあ、ピザってやつ食べたことないから・・・この海鮮ピザとポタージュスープのセットをお願いします!」
なんか、注文をするのが照れくさかった。
でも、ウェイトレスさんが「はい!かしこまりました!」と言ったときに、ちゃんと注文が通ったんだと安心した。
「クルト、ピザ食べたことないの?」
ズズズーとオレンジジュースをストローで飲みながら、ジェシカさんが聞いてきた。
「えぇ・・・どんなものか、っていうのは本読んだりして知ってたんですけど・・・食べるのは初めてです!」
「へー、もったいないなぁ・・・でも、食べたときにどんな反応するか楽しみだなー」
「クルちゃん~、もしかしてたら~、パスタも食べたことないんじゃない~?」
「ミートソースは食べたことありますが・・・他のは食べたことないです・・・」
「そうなんだ~、じゃあ私の分けてあげるよ~」
「! ク、クルト、私が頼んだペペロンチーノも食べたことないだろ!?私の食べさせてあげるからな!」
「ジェシカ・・・食べさせてあげるって、お前、クルトにあーんでもするのか?プププ」
「は!?・・・ち、ちょっと言い間違えちゃっただけだよ!!・・・でも、クルトが食べさせて欲しいなら、お姉ちゃんは別にいいんだよ~?」
「あ、あははー・・・」
「む~、ジェシカめ~」
いつでもどこでも、話していると賑やかだ。
楽しい。
料理が来るまで、途切れることなく4人で話していた。
初めて食べたピザは、不思議な感じだった。
パンのようで、パンではない。
丸い円形から、二等辺三角形のように切り取って食べる。
手で食べる。
他の席の人たちを見ると、当たり前に食べてる。
はー。
なんだか、まだまだ知らないことが世の中にはいっぱいあるんだなぁと実感した。
テレーズさんから少し分けてもらったクリームパスタも、全く新しく感じた。
ジェシカさんのペペロンチーノも辛くておいしかったし。
「そういえばね~、さっきクルちゃんとアクセサリー屋さんに行ったときにね~、こんなの買ったんだ~」
「ほえ?なんだい、なんだい?」
ジェシカさんは自分の顔の高さまであった超大盛りパスタと、明らかに器のサイズ間違えてるだろってくらい盛ってあったグラタンを食べ終えて、満足気だった。
同じものを食え、って言われたら・・・食べきれるか自信がない。
「ほう・・・ペアリングか・・・いや、4つあるな」
「は!まさか、さっきクルトとテレーズが言ってた、あげたもらったってのは・・・」
「うん~、クルちゃんの入隊祝いと~、これから私たち4人仲良くしていこうね~って意味を込めて~」
「なるほど!さっすがテレーズ!そこにシビれる!憧れるぅ!」
「ずっとつけてると~、幸せなれるって~、お店のオジサンが言ってたよ~」
「よっしゃ、じゃあみんなで付けるか!」
一人一個ずつ、指輪を取っていく。
テレーズさんはさすがで、ジェシカさんもベアさんも指にぴったりだった。
「ま、このくらいなら目立たないし、任務中も問題ないだろ」
「基本的に騎士団の鎧着てれば、そんなに奇抜なことしなきゃ、注意されないもんね」
「えへへ~、みんなでお揃いだね~」
「指輪なんて初めて付けました!みなさんありがとうございます!大切にします!」
「俺たち4人の絆ってやつだな。さーて、まず最初に無くすのは誰だろうなー?」
「ちょっとベア、なんでアタシの方見んのよ?」
「べーつにー」
「なんかむかつく!!」
「うふふ~、しばらくしたら~、城下町のアクセサリーを駆けずり回ってそうだよね~」
「こいつらむかつく!!・・・わーん、クルトー!!ベアとテレーズがいじめるー!!」
「あはは・・・」
「否定してくれよー、クルトー!!」
4人の絆。
なんか、感動した。
みんな、何も言わず、それが当たり前のように付けてくれた。
お揃い。
友情。
絆。
今までの僕の人生には無かった。
これも・・・新しい・・・
それから午後も城下町を案内してもらった。
誰かが目についた店に寄ったり、露店で売っている食べ物を買い食いしたり。
さりげなくジェシカさんが僕の手を繋いできたり・・・
でもすぐに二人にバレて顔を真っ赤にしたり・・・
ベアさんはそんな僕たちを見て大笑いしていたり・・・
武器屋でベアさんに剣の選び方を学んだり・・・
服屋でジェシカさんとテレーズさんのプチファッションショーを見たり・・・
本当に楽しかった。
これが・・・外の世界・・・
城の中だけじゃない・・・外の世界・・・
リムにも・・・教えてあげたい・・・
リムと一緒に城下町を歩きたい・・・
家族4人でも・・・
「クルトー?また遠く見つめちゃって、考え込んでるなー?」
「あ、す、すいません!」
「いいのいいの!全く、可愛いやっちゃ!」
「わ、わわわ!」
「あ~!ジェシカがクルちゃん抱きしめてる~!抜け駆けだよ~!」
「・・・全く、ジェシカはしょうがないな」
本当に楽しかった。
心から、楽しかった。
3人には、感謝してもしきれないな。
・・・ハリボテ王子だって分かってるのに・・・こんなに良くしてもらって・・・
いつか必ず・・・恩返しをするんだ・・・
必ず・・・




