19
アイネリア城下町
ジェシカさんも落ち着いたところで、城門を通り、城下町にやってきた。
「はぁ・・・もう、クルトにはなんか恥ずかしいところばっか見せてる気がする・・・」
「おっちょこちょいな癖に、変にからかうようなこと言うからだろ」
「クルちゃんは~、しっかりしてるから~、ジェシカはボロが出ちゃうんだろうね~」
「毎日、一分一秒が勉強です!!」
「ジェシカもクルトを見習った方がいいな!はっはっは!」
「ぶーーー!いつかクルトに「ジェシカさん最高です!女の中の女です!ジェシカさんのためだったら火の中水の中雲の中!」って言わせてやるんだから!」
「ジェシカには~、無理ね~」
「ジェシカには無理だ」
「勉強になります!」
「こら、クルト!なんでもかんでも学ぶんじゃない!!」
4人で賑やかに城下町を歩いていく。
初めての城下町。
僕の目には新鮮すぎる光景が広がっている。
これが・・・アイネリアの国民が生活している空間・・・
大通り
「でさ、トモエ隊長ったらひどいのよ?げんこつダブルヒットだなんて・・・頭蓋骨へっこんじゃうわよ!」
「はっはっは!確かに、いつもあのげんこつくらってたら、骨が曲がりそうだ!」
「ん~、クルちゃん~?どうしたの~?」
「む!まさかクルト、こんな美女が2人もいながら、どこぞの美人もどきに目を奪われちゃったのかなー?」
「自分のことを自信持って美女って言う奴も、珍しいよなぁ」
「美人もどきって~、どういう意味なんだろう~?」
「あ、いえ、初めての城下町の景色に目を奪われていました・・・」
「・・・そっか、クルトは今まで城下町に来たこと無かったんだもんね・・・」
「どうだ?自分の国の城下町を見て・・・」
「とっても活気があって・・・何もかも新鮮です」
「クルちゃん~・・・色んなところ案内してあげるからね~、いっぱい楽しませてあげるからね~」
大通りを歩いているだけだが、それだけでも僕の目には全てが新しいものだらけだった。
建物、店、人、生き物。
みんな・・・生きてる・・・
この国で・・・生きてる・・・
笑顔の人たち・・・
一生懸命な人たち・・・
子供たちが元気よく駆け回ってる・・・
恋人同士が手を繋いで歩いている・・・
老夫婦が仲良く連れ添ってる・・・
この光景を・・・守っていかなければいけない・・・
なぜか・・・そう・・・強く感じた。
「く、クルト!?ちょっと・・・どうしたの!?」
「クルちゃんが~・・・泣いてるよ~」
「・・・王族として何か思うところが、あったんだろうな・・・」
「す、すいません・・・なんか急に込み上げてきちゃって・・・なんでだろう・・・あれ・・・止まらないな・・・」
「・・・クルトは色々苦労してるからね・・・いいんだよ、私の胸貸してあげるから・・・」
ジェシカさんは、僕の顔を胸に抱きしめてくれた。
それは優しく・・・とても癒されるものだった。
「ジェシカさん・・・」
「いいんだ・・・感情に素直になることは悪いことじゃないんだよ・・・笑いたいときに笑って、泣きたいときに泣いて、むかついたときは怒って・・・それが人間なんだから」
「(珍しくジェシカがまともなこと言ってるぞヒソヒソ)」
「(クルちゃん効果かもね~ヒソヒソ)」
「ジェシカさん・・・ありがとうございます・・・僕・・・頑張ります」
「よしよし・・・クルトは本当に良い子だね」
ジェシカさんは愛しむように、僕の頭を撫でてくれた。
いきなり涙が止まらなくなってしまって・・・
ちょっと前に母上の手料理のときみたいに・・・泣いてしまった。
ジェシカさんは、そんな僕を優しく抱きしめてくれた。
また甘えてしまった。
でも・・・こうやって支えてくれる人っていうのが・・・最近になって本当に大事だと身に染みてきてる。
しばらくして。
立ち直った僕は、ジェシカさんにお礼を言って、離れた。
「もうちょっとぐらい、いいじゃない」とジェシカさんは言っていたが、往来の隅っこでいつまでもこんなことしてたら、恥ずかしいし・・・
「で・・・クルト、ジェシカの胸はどうだった?」
「はい!柔らかくて、とっても良い匂いがしました!」
「クーーーールーーーートーーーー!!!!アンタはまたーーーーー!!!!!」
「あれ、ジェシカちゃん~?別に悪いこと言われてるわけじゃないんじゃない~?」
「え!?・・・・あ、そういえばそうか・・・いや、でも柔らかいとか良い匂いがするとか言われたらちょっと恥ずかしい・・・っていうか、さっきのパンツ事件も今回も、ベアがクルトに聞くからいけないんじゃないのーーーーー!!!!」
「やっべ!バレた?・・・クルトは絶対正直に言ってくれると思ってたからな!」
「ベーーーーーアーーーーー!!!!!アンタは純情でいたいけな青少年を利用してーーーーー!!!!」
「逃げるが勝ちだ!!スタコラスタコラ」
自分に年上の兄姉がいたら、こんな感じなのかな。
母上やリムに甘えるのとは、また違った包容力があった。
それに・・・年上の綺麗なお姉さんの胸に抱きしめてもらえるなんて滅多にある行為じゃないしな・・・
いやいや・・・得したそういうことを考えてはいけない・・・
善意の行為なんだからな・・・
心頭滅却・・・
ベアさんとジェシカさんは遥か遠くまで行ってしまった。
あれ、中々戻ってこないな。
「戻ってきませんね、ジェシカさんとベアさん」
「う~ん、まぁまたどっかで会えると思うし~、二人で見て回ろうか~?」
「あ、はい、よろしくお願いします!」
特にテレーズさんが慌てていないところを見ると、いつものことなんだろうなと思った。
あれ、でも二人で見て回るっていうのは・・・
もしかしてこれって・・・
いやいや、余計なことは考えるな・・・
「じゃあ~、行こっか~、クルちゃん~?」
「はい!・・・って、え?」
「ん~、何か問題でも~?」
「いえ!テレーズさんの手が・・・」
「うふふ~、いいじゃない~。せっかく二人きりでデートなんだよ~?」
「(デ、デート・・・ドキドキ)」
「クルちゃんは本当に可愛いなぁ~・・・それだけ分かりやすいと~、私までドキドキしてきちゃうじゃない~、えへへ~」
それが当たり前であるかのように、テレーズさんは手を繋いできた。
しっかりと指を絡める、恋人繋ぎってやつだ。
小さくて、しっとりとしていて、少し冷たいテレーズさんの手。
ドキドキしてしまう。
母上やリム、妹のようなナルとは違う。
異性と手を繋いでいることに、意識してしまい、ドキドキしている。




