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はぁはぁ・・・
50本で限界だ・・・
もう膝がガクガクだ・・・
す、少しくらい休憩したっていいよな・・・
いや!だめだ!どこで誰が見てるなんて分からないんだ!
ぐふぅ・・・
もう動けない・・・
だが動かなくちゃいけない・・・
苦しいときこそ、自分の限界を作ったら負けだ・・・
負けなんだけど・・・
ちくしょぉおおおお!!
「クルト」
「はぁはぁ・・・ぜぇぜぇ・・・は、はい!?」
「今日はもう終わりにしろ。メシの時間だ」
「は・・・はい!」
「それから、毎日、晩飯の後に隊のミーティングがある。集合に遅れないように」
「了解しました!!」
たっぷりと日が暮れて、訓練場に誰もいなくなったとき、トモエ隊長から声がかかった。
立つことさえ、ままならないが、行かなくてはいけない。
初日から飛ばしすぎた・・・かなぁ。
あとで入念にストレッチしないと明日動けなくなるな・・・
筋肉が痛い・・・
作戦会議室
正直食べれる気がしなかったが、気合でたいらげた。
うぷ・・・本当にやりすぎだ・・・
「みんな揃ったか」
「「「はい!」」」
「では、伝達事項だ・・・まず」
ロの字型のテーブルに設置されている椅子に、それぞれが着席して、静かにトモエ隊長の話を聞いている。
訓練内容や、警備の際に気をつけることなど、日々変わっていくことの伝達だ。
・・・まだ良く分からないけど、全部メモだ、メモ!
「それから、今日から3番隊に新人が入隊した。今日の朝礼で挨拶はあったが、改めて紹介しよう。クルト、こっちに来い」
「は、はい!!」
筋肉が悲鳴をあげているが、普通に歩くんだ、普通に。
「よし、クルト、改めて自己紹介しろ」
「は、はい!!この度入隊したクルトです!!・・・剣についてはど素人で、体力も一般人級ですが、一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!」
パチパチパチパチ
静かな拍手が起こる。
そりゃ10人しかいないからな。
僕が11人目か。
隊の面々を見回してみる。
朝礼では良く見れなかったしな。
女性はトモエ隊長を含め、5人。
男性も5人。
なんだか、カップルになれっていうような1対1の比率だ。
「うむ。ではクルトに質問したいことなどある者は、聞いても良いぞ」
「待ってました!はいはーい!」
「全くジェシカは・・・いいぞ」
「えっと・・・クルトは彼女とかいるんですか?」
「・・・・・・・え!?」
「クルト、聞かれたことには答えろ。ただし、嘘はいけないぞ」
トモエ隊長め・・・
でも、鋼鉄なイメージがあったけど、心なしか今のトモエ隊長は幾分か楽しそうだ。
ふぅむ。
少し・・・3番隊のことが分かってきた気がする。
「生まれてこの方、いません!」
「「「な、なんだってーーー!!!」」」
トモエ隊長以外の女性隊員が声を合わせて、驚いていた。
「(16歳よ、16歳!どうするどうする!?まだ誰も手をつけてない16歳よ!?)」
「(焦るな焦るな・・・大人の魅力でメロメロにしてやろうよハァハァ)」
怖いヒソヒソ声が聞こえてくる・・・
みんな20歳以上だろうし・・・10代が入隊って珍しいのかな・・・
「ふぅむ・・・では、他に聞きたいことがある者はいるか?」
「はい!・・・せっかくだからな」
「では、ベア」
「我がクイーンガード騎士団に入隊した理由を聞かせてもらおう」
「・・・・・・・・・・」
出た、リアルな部分を聞くある意味根性ある人!!
さて・・・どうしたもんか・・・
「クルト、答えろ」
トモエ隊長・・・クール過ぎる
「はい、正直に言います。挑戦です」
「挑戦?」
「今までただのんきにダラダラ過ごしてきた自分には、何の目標も特技もありませんでした・・・ただ自分の心の中にいつもあったのは、妹を守りたいという気持ちでした。精神的にだけでなく、外面的にも守れないと意味がないと思い、志願しました」
「家族のため、か・・・だが、この国に生まれた王子は・・・」
「ちょっとベア!やめなさいよ!」
「いいんです、ジェシカさん。確かに僕は王子で、王位継承権も無い、国にとって、どうでもいい人間です。そのため、両親や妹から、物心ついたときから離されていました。でも最近・・・ふとしたきっかけから、家族と話をすることができました。そのときに思ったんです、家族がいかに大切かっていうことを。ずっと一人だったから、分かったんです。そして、それを壊してはいけないし、守っていかなければいけない、と・・・」
「ほう・・・それで挑戦ってことなのか」
「うぅ・・・ぐす・・・クルトは王子なのに苦労してきたんだね・・・ぐす・・・まだ16歳なのに」
「ジェシカ、鼻水出てるよ~ほら~」
「ずびび!・・・ありがとうテレーズ・・・ぐす」
「人それぞれ、理由があるものだ。騎士団長も言っていたが、騎士団に入ったからには、そんなものは関係ない。団員として日々努力していってもらいたい。で・・・ベア、納得したか?」
「はい、クルトすまなかったな、リアルなこと聞いてしまって」
「いいんです。遅かれ早かれ、聞かれるとは思っていましたから」
「分からないことがあったら、いつでも聞きに来いよ」
「ありがとうございます、ベアさん!」
「クルト・・・非番のときなら、いつでもお姉さんが甘えさせてあげるからね・・・ほら、これ、アタシの部屋の合鍵だからね!大事にしてね!オールタイムウェルカムだからね!」
「・・・え?」
「こら、ジェシカ。さりげなくいたいけな青少年を誘惑するでない」
「ちっ」
「ジェ、ジェシカ、舌打ちはまずいよ~」
「全く・・・しょうがない奴だな、ジェシカは」
ガン!とジェシカさんの頭にトモエ隊長のげんこつが炸裂した。
・・・シュウーと湯気がたっている。
ジェシカさんは無言で俯いて痛みに震えている。
「では、これでクルトの自己紹介とミーティングは終わりだ。各自、部屋に戻れ。今日も一日ご苦労だったな」
「「「はい!」」」
自分の部屋
部屋に戻る。
さて・・・風呂に入って、筋肉をほぐすストレッチをしなきゃな・・・
ていうか、今になってまた筋肉が悲鳴を上げ始めた・・・
僕は風呂から出ると、そのままベッドに突っ伏して寝てしまった。




