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午後。
午前中の入隊試験は合格だったらしく、父上からはいつでも入隊可能だぞ!と言われた。
審査基準を聞かなかったが、合格なら、いいか。
・・・合格、か。
そんなこと、今まで言われたことなかったし、もらったこともなかった。
与えられたことをただこなしているだけの日々。
僕は・・・
時間があったので、また中庭で寝転がった。
ふぅ・・・
なんだか昨日から色々ありすぎて、気持ちがついていけてない。
少し、考えるか。
「クルト・・・」
「・・・ん」
「ちょおっと聞きたいことがいっぱいあるんだけどぉ・・・」
「・・・ナル」
「さっきリムリアに会ったんだけど・・・なんかいつもと雰囲気違うしさぁ・・・さっきおじ様(父上)やおば様(母上)にも会ったけど・・・なんかいつもと雰囲気違うしさぁ・・・」
「・・・うん」
「何があったの?って聞いてもリムリアは、なんかクネクネしてはぐらかすし・・・おじ様やおば様は笑顔で笑ってるばかりで・・・」
「・・・リムに無理するなって・・・言っただけだよ」
僕はナル姫に昨日のことを話した。
ナル姫は最初、いぶかしげな表情だったけど、次第に表情が変わっていった。
「そっか・・・じゃあ、良い方向に向かっているんだね」
「・・・かなぁ。まだ規律とか色々問題あるけど」
「でもさ・・・クルト見直しちゃった!本当・・・すごいよ」
「・・・兄として当たり前のことを言っただけ。本当は・・・最後に言いたいことだけ言って、そのまま国を出て行こうって考えだったんだけどさ」
「あれだけリムリアに冷たくされてボロ雑巾か、その辺に転がっている石ころ以下みたいな扱いされていたのに・・・クルトは・・・本当にすごいよ」
「・・・え、あ、ナル!?」
「少し黙ってなさい!・・・こうしたくなっちゃったんだから」
お互い座って話していたが、ナルは急に僕に正面から抱きついてきた。
そのまま背中から芝生に倒れる僕。
それに抱きついているナル。
「・・・ナル、早く離れないと勘違いされるよ?」
「いいの!私はすごく感動したんだから!それに・・・クルトを見直したし・・・今の感情を表すのにこれしか思いつかなかったの!」
「・・・胸が当たってるよ、いいの?」
「ふっふーん、最近また少し大きくなったの・・・分かる?ありがたく堪能しなさい!」
離れてもらうために言ったことも、軽く受け流される。
僕って・・・積極的な女性に弱いなぁ。
なんか・・・強く言えないし、引き剥がせないんだよな・・・
「ナル・・・何をしておるのじゃ」
「・・・あ、リム」
「!? ち、ちょっとクルト、なんで早く言わないのよ!リムリア、これは違うのよ!間違いよ!宇宙の法則が乱れているのよ!」
「早く離れるのじゃ!」
バッっと僕から一瞬で離れるナル。
顔は真っ赤だ。
相当恥ずかしいんだろうな。
それ以上は期待しない。
「ふぅ・・・まぁちょうど良い。たまには3人で話でもするのじゃ!」
「・・・リム」
「ちょうど3時のおやつの時間じゃ!食堂で紅茶でも飲みながら話すのじゃ!」
「リムリア・・・うん、行こ!」
リムとナルと3人で話すのは・・・いつ以来だ。
リム・・・大人になったね・・・兄は嬉しいよ。
ナルもびっくりしてたみたいだけど、すぐに笑顔になったし。
うんうん。
「・・・あの」
「なんじゃ?あにうえ」
「・・・ナルが見てるのに腕組むのは・・・」
「わらわは自分の気持ちに素直になったのじゃ!・・・自分の気持ちに素直になれない人間は難儀じゃの!・・・なぁ、ナル?」
「わ、私は別に、クルトのことなんて・・・」
「・・・」
「ふ、ふん!二人してノロノロ歩いてるなら、先行くからね!」
「・・・あにうえ、ナルには要注意じゃぞ」
「・・・なんで?」
「・・・なんでもじゃ!」
鈍感っていうのは、時に残酷であり、時においしいのだ。
ぼ、僕はど、どどど鈍感ちゃうわ!
いや、自分じゃ分からないけど。
そんなこんなしている内に、食堂に着いた。




