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猫守紀行  作者: ミスター
4/141

初めての魔法と拉致

ミスター修正8/30

ようやく、ようやく王都の城門が見えてきた。

ゴブ族で出会った「ツァイネン騎士隊」と共に、『神』会うため村を発って一週間。


長かった…

通常なら馬車で3日の道のりだというのに。


あぁ、俺は甘坂一南。

知らない人は前の話を読んでくれ。

それでは長くなった道行を話そう。



ツァイネン騎士隊の馬車はずんぐりと背の低い馬1頭で引くタイプで、さらに2頭の馬を連れていた。

ソルファとリンマードは馬に乗り、前方を警戒しつつ進んでいる。

サウスは見張りも兼ねて荷台の屋根に乗せ、俺とハーネは御者席に座った。

ココじゃないと煙草が吸えないのでね。



「アリー、ズルい。私、白愛でたい」

出発から数時間。

やっと口を開いたと思ったらこれかよ…

表情がいまいち変化しないハーネだが、付き合いの短い俺でも分かるほどムスッとしている。

アリーナン?

もちろん馬車のなかで白を愛でて、トリップ中だ。


やれやれ、と空へと向かう煙を見つめていると視界でサウスが立ち上がるのが見えた。

ソルファが右手を挙げ、馬車を止める。


「この辺りで出くわすとなると…盗賊の類いかもしれませんね」

盗賊とはまた…

しかしイチイチ驚きも少なくなってきたな。


「どうしましょう、今なら迂回することも出来るかと思いますが」

ソルファはサウスの視線の先をジッと見つめている。


「じゃあ迂回で、面倒事は避けるに限る」

ソルファにそう返事を返した直後だった。

真っ白い毛玉が馬車から飛び出して行ったのは…


「「「「え?」」」」


「ああ~!待って!あとちょっと!」

毛玉が飛び出したのと同じ隙間からアリーナンが顔を出し、すでに何も見えない方向に向かって手を伸ばしている。

まさか……


「ちょっとでいいから~!」


あれは白か!

そして原因はお前か、アリーナン!



「み~~~~~~!」

突然の事に全員が固まっていると、白の声が響いた。

速いな…声が遠い。


「イチナ殿、あちらの方向は…」

「ソルファ、もう行くしかないだろうよ。面倒とも言ってられん、サウス!先行して道案内!白まで最短で頼む!」

俺の言葉にガウッと返事し屋根から飛び降り走り出すサウス。


「イチナ殿、後ろに乗って下さい!」

「助かる。行くぞリンマード、ハーネは馬車を!」

ハーネが頷いたを確認して俺達は走り出した。



茂みに身を隠すように止まったサウス。

俺達は少し離れた場所で馬を降りて木につなぎ、身を屈めながら進みサウスに並ぶ。

サウスの様子から分かってはいたが、残念ながらサウスの口の中に白は居なかった。

出来る事なら鉢会わせる前に回収したかったのだが…


数は…確認出来るだけでも20人とちょい。

ソルファの言う通り、盗賊らしき男達が(たむろ)っていた。

集まられるとまだ増えそうだな…

遠目だが様子を見つつ、人数を考えて馬車の合流を待つ。



「たい、じゃねぇお頭!こんなの捕まえたんですが、売れますかね?」


「あん?見たことねぇ生き物だな…でもまぁ、好事家には高く売れるかもしれねえ。おい、俺はコレと一緒に一度アジトに戻る。後は…分かってんな?」

ニヤリと笑うお頭。


くそっ、遅かったかよ…

その手には白が握られている。


「何であいつが…?」

合流したこの騒ぎの原因、アリーナンが横でつぶやく。

白が盗賊の手に握られているというのに、アリーナンの視線は『お頭』と呼ばれていた男の顔に向けられている。

いつものアリーナンなら、なりふり構わず喚きながら突入していてもおかしくないのだが…

知り合いか?と聞こうとした時、ソルファが「囲まれてます!」と叫んだ。


「チッ!気付かれてたのか…」

視線を戻すと『お頭』の姿がない。

追いかけようと立ち上がるも行く手を阻まれた。


白を見失いたくはなかったが、しかたない。

『アジト』の場所はコイツらに聞こう…

白を売りに出すつもりはないからな。

                                     


「さてと…」

爺さんとの斬り合いは何百回として来たが…

当然、人を斬るのは初めてだ。


己の意思で人に刃を向けるのは中々に覚悟が要るな…

深く息を吐き、脇差の『一匁時貞(いちもんめときさだ)』を抜く。

ソルファ達も各々の武器を構えていた。


「さっさと片して白を追うぞ。案内役に1人は残せよ」

数で有利な盗賊達がジリジリと囲うように距離を詰めてくる。

盗賊の一人が切り込んで来たが、ハーネが素早く踏み出しショートソードで受け止めた。


「イチナ、依頼人。私たち、護衛」

大型のナイフを弾かれヨロついた盗賊を、ソルファがハルバードを真横に振り抜きふっ飛ばした。


「そうですよ、大人しく守られてくださいね?」

いつの間にか俺の前を固めていたツァイネン騎士隊が四方に散る。


ハルバードを使い、鈍い音を響かせながら盗賊ども沈めていくソルファ。

見事な位置取りから的確な狙いで敵を撃ち、意外にも身軽な動きでメロンを揺らすリンマード。

小柄な体格を活かした素早い剣技で死角に回り込み敵を翻弄するハーネ。

牙と爪を使い、獣特有のしなやかな導線を描きながら一撃で敵を倒していくサウス。

何処から出したのか旗を持って応援するアリーナン。


…お前は魔法使えよ。



「死ねー!」

剣を掲げ向かってきた盗賊に対し横一閃。

倒れていく体の向こうに、敵を取りこぼしたからだろうハーネのムスッとした顔が見えた。

くくッ、あいつあんな顔ばっかだな…

などど考えながら、足元に倒れ動かなくなった盗賊を見つめる。

が、罪悪感は後回しだ。




「シッ!」

おかしい…

ほとんど敵が俺に向かってこない。

護衛だからと皆が張り切っているという理由だけでは説明出来ないほどに。


向かってこないというよりは、ツァイネン騎士隊が狙われているのか…

いや、ツァイネン騎士隊と言うよりアリーナンを…?

俺を守るように張られていた陣形は、今はアリーナンを中心にしたものへと変わっていた。


肝心のアリーナンを見ると、旗を振る余裕がなくなったのか今は杖を振り回して敵を撲殺している。


だからお前は魔法使え。


見兼ねて援護に回ろうとした時、視界の端にアリーナンを弓で狙う盗賊を2人捉えた。

応戦している皆はまだ気づいていないようだ。


「ったく!世話の焼ける!」

落ちている石を刀の切っ先で跳ね上げ、俺に向かってくる敵を切り付けた反動を利用し刀の柄で弾き飛ばす。

1人は石が当たり無力化できたがもう一人は矢を放つところだった。

矢が放たれたと同時に走りだし、近くにいた盗賊を矢の軌道上に投げる。

ザグッと、投げた盗賊から音がした。


自分もアリーナンに背を向けるように構えると、盗賊どもの前線ラインが一歩下がった。

先ほどの様を見て、ようやく俺を脅威と見たようだ。

しかし、相当数が減り劣勢だというのに逃げる様子がない。


数で押す輩は早々に撤退すると思っていたんだがね。

その方がアジトまで付いて行けばいいだけだから楽だったんだがね…


こいつらの目にはまだ闘志が残っている。

それにソルファ達を襲っていた奴らは、まるで訓練でも受けたかのような連携を取っていた。

お粗末なのが1/3ほど。

恐らく本物の盗賊と『偽物』が居たのだろう。

その『偽物』がアリーナン達を狙い、今も残っているという訳か。


「うおおお!!」

残った奴らが敵が雄叫びを上げこちらに向かい走リ出した。

俺は構えを取りアリーナンを守るように立ちふさがる。

「おい、コイツらにはアジ…」

言い切る前に、横合いからハーネとソルファ、そしてリンマードの3人が全てかっさらって行った。

「…ト、の場所を…」


おいおい…

アジトの場所を聞く相手が残ってねぇじゃねぇか…

構えを取っていた俺は無言で刀を振り血を飛ばす。


「残せって言ったじゃねぇか」

ふぅ、とついた大きなため息に振り返った奴は、ジト目の俺の視線でようやくしでかした失態に気が付いたようだ。


「返事しましたよねぇあんた達?」

全員でワタワタと辺りを見回している姿は、先ほどまでの頼もしさが嘘のようだ。


「あ!」

ソルファの声で、その視線を追った一同がピタッと動きを止めた。


「「「「サウスさまッ!!!」」」」


しかないだろうよ…

サウスの鼻で何とか追おう。

サウスにまとわりつきながらギャーギャーと騒ぐ一同を見ながら、取り出した煙草に火を灯す。

紫煙が空へと上がっていくのを見ながら人を斬った罪悪感と、白を取り戻した後の問題を頭に抱え、アジトに向かい出発するのだった。



~白救出に向かう馬車にて~


「何で撲殺なんですかねぇ?魔法使いましょう、魔法」


「使ってるじゃない魔法。ほら」

そう言って見せてきたのは先ほどの戦いでも使っていた杖だった。


「おい、まさか…」

「これが私のオリジナル!『ワンド』と『フラグ』よ!」

ドドーン!と効果音が付きそうなくらいのドヤ顔である。


「魔道士は杖を装備しなきゃいけないの。でもね?重いの。魔法を使うとき動いちゃダメなのよ!?そんな重い物持ってられないわ!そこでコレよ!重くない!魔力で出来てる!でも使ってても動けるのよ!あ、『フラグ』は応援用よ!」


アリーナンよ…

それは、もう鈍器でしかない。


魔道士が魔法を使っていない時点でいろいろアウトだろうよ…

いや、一応魔法なのだが…納得できん。

初めて見た魔法が撲殺用の鈍器って、応援用の旗って…


魔道士と聞いて結構期待していたというのに…

派手でなくともせめて魔法と納得できる物が見たかった!


こちらの感情等全く察していないのか、どう?誉めてもいいわよ?などと言いながら荷台から頭を突き出してくるアリーナン。


ソルファをチラリと見と、苦笑しながら頷いてジェスチャーで撫でろと言ってきた。


「はぁ、うん。エライエライ」

適当ではあるが撫でてやると嬉しそうに「当然ね!私は領主なんだから!」と。


ん?

…何だと?

本人は今の発言に気が付いてないのか、嬉しそうである。

何となしにお偉いさんではあるのだろうと思っていたのだが…


領主であることは秘密という設定だったのだろう、リンマードが前を進む馬の上でアワアワしている。

ソルファは相変わらす苦笑い。

ハーネはわざとこちらを見ずに口でヒュ~ヒュ~言ってるし。


良いとこのお嬢ちゃんであろうとは思っていたが、まさか『領主』とは驚きだ。

領主様が冒険者になってまで金策ねぇ。


「………」


よし、スルーだな。

今は白を取り戻すことが先決だしな。

面倒事(アリーナン)は後回しにさせていただこう。

アリーナンぇ・・・。


おねん書き足し-12/18

※900字ほど増えました。

修正前のモノはHPで読めますので、前の方が良いんじゃ!

という方は一報くだされませ〜

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