第4章の9の2
ズームをクロトさんのもとに戻してみよう。あっ、よく見るとクロトさんの左手の薬指に指輪がはめられているではないか。これは、もしやあのイケメンからの・・・。
色々とあやしい想像は広がる。がそんなことを考える間もなく・・・映像のクロトさんはもう走り出していた。そう、今スタートを切ったのだ。砂埃を上げながら、みな猛ダッシュで駆け抜けてゆく。走っているメンバーがイカツイのばかりなので迫力は2倍だ。しかもこのレース、速度が半端なものではない。何と全員が100mを5秒切るくらいのタイムで走っている。
ここから長いので少し早送りをして見てみよう。2000m地点で参加者の3分の2が脱落、半分の4000m地点では先頭集団には6人しか残っていない。最初に飛ばしすぎた気の短い連中は、あきらめて露天で何か食べているようだ。
何と、残った6人の中には余裕の表情で走っているクロトさんの姿があった。他の選手が息を切らす中、彼女だけがまったく呼吸を乱していない。
さらに早送りをすると、最後の500mはクロトさんの独走状態となっており、沿道を埋め尽くす8000m走ファンに手を振りながら、余裕の笑みを見せている。そしてそのままゴール!
クロトさんが大会記録を大幅に塗り替えるタイムでダントツの優勝を果たした。
『すごいな、まるでアタランタの再来だ。」
『こんな才能がロシアに埋もれていたとは! あの英雄アキレスと戦っても遜色ないんじゃないか。』
など、ゴール地点では、観客達が興奮してお祭り騒ぎとなっていた。
「アタランタとかアキレスって神話に出てくる有名な韋駄天でしょ。クロトさんそれと肩を並べるってすごいことですよね!」
俺がそう言うと、クロトは何だかバツが悪そうに笑っていた。
その様子を横で見ていたティタさん。待ってましたとばかりに、ものすごーーーく悪そうな笑顔で、我々めがけてこうつぶやいた。
「ふっふっふ。これは俗に言うところの『クロトはほぼ無敵状態』ですよ!」




