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第4章の6

「さあ、着きましたよ、ミズサキ」

「結構時間かかったけど、ここはどこなの、ティタさん?」


俺はティタさんにつかまり、空を飛んでここまでやって来た。我ながらよく未確認飛行物体とかで捕捉されなかったと思うわ。


「ここは、ロシアのウラジオストクです。日本海の北側、ちょうど札幌から真西にある都市ですね。シベリア鉄道の始発駅があると言えばわかりやすいでしょうか。」


「そうか、だから厚着してきたたほうがいいって言ってたんだね。でも、これだけ着こんでても寒いわー」


港に到着した俺達は、さっそく3姉妹がいるであろう場所の聞き込みを始めた。と言ってもでたらめに人を当たっていても回答はもらえない。居場所を知っているとすれば俺のような、あちら側のものと一緒に行動している人間しかいないのだから。


港から町に向かって歩いていると色々な人達に出会う。ロシア人と思われる人、俺のようなアジア人、南米系の人達。ああ、ここは人種のるつぼなんだなあ。狭い自分の町にいるだけでは感じられんわ、この感覚。


見知らぬ景色に見とれてキョロキョロしながら歩いていると、向こうから人が歩いて来た。


『あれ、あの人、何か黒いライオンみたいな獣連れてるけど・・・。

いや、よく見ると顔が3つあるじゃないか!しかもライオンより大きいし。』


「ああ、あれはケルベロスさんですよ。昔はよく背中に乗せてもらって隣町までお買い物に行ったものです。そうかー、あの横にいる方が新しいマスターなんですね。」


「・・・お買い物って」


俺が話しかけようとすると、先に向こうから話しかけてきた。無論話しかけてきたのは人間の方だが。


「привели хороший фея」

「ハ、ハロー・・・」


当然のことだが、まったく後がつながらない。たが、ロシア人と思われる男性はそれをわかった上で笑顔で対応してくれた。


『うう、全然わからないわ。まあ、場所訊きはティタさんがしてくれるからいいけど・・・。それにしてもよその土地に来て、言葉がまったく話せないのはちょっと情けないよなあ。』


俺がそんなことを考えている間、ティタさんとケルベロスは楽しそうに会話をしていた。


「久しいな、姫。しばらく見ないうちにすっかり美しくなっておられる。」

「あらあら。ケルおじさまもダンディさにさらに磨きがかかっておられますよ。」

「これは一本とられたな、はははは。」


『何だこれは・・・。この人達の会話は俺にも理解できるぞ。テレパシーみたいなものなのか。今までティタさんとしか話していなかったからわからなかったが、俺たちは言語とは別の何かで会話していたのか・・・。』


ティタさんは今度はケルベロスのマスタであろう男性に話しかけていた。


「私たちはモイライ3姉妹を探して日本から来たのですが、どこか心当たりはありませんか?」

「ああ、俺は知らないけど、そういうことならダコタ通りの角にあるアララ酒場で尋ねればいいよ。ダコタ通りはこの先の路地を・・・」


普通に会話している。やはり言語は関係ないみたいだ。


俺がボーっとその様子を眺めていると


「おい、そこの若いの。」

「は、はいっ」


俺はライオンよりも大きな獣に言葉を投げかけられ、背筋をピンと伸ばして反応した。


「お前が姫に選ばれた人間か。なるほど、面白そうなやつだな。だが・・・姫に選ばれたということは、お前はこの世界の半分を手にしたも同じこと。奢るなかれ、侮るなかれ。何事も慎んで行動するのだぞ!」

「はっ、はい。肝に銘じます。」


俺はその迫力に、声が裏返るほど緊張して答えた。


こわい人だな。ああ、人じゃないか。だが、こんな方がパートナーだったら俺は品行方正な人間になるんだろうな。毎日が軍隊にいるみたいな感じだし。

それに比べて・・・我らがティタさんはゆるゆるだ。毎日が日曜日みたいな人だし。でもまあ、それがいいとこでもあるんだけど。


「ミズサキ、わかりましたよ!この先の酒場に行くと3姉妹の情報が得られるそうです。ついでだし、おいしいお酒も飲んじゃいましょう!あ、ミズサキは未成年だからアルコール抜きですよー」


「おい、ついでの方が楽しそうじゃないか」


そういうとティタさんは笑顔で早く行こうと俺の裾をを引っ張った。


「では、僕たちはこれで。ありがとうございました。」


俺は2人にお礼を言うと、ティタさんにせっつかれながら酒場のある方へ向かった。



「ふっ、あれだけ楽しそうな姫を見るのは何年ぶりかな。久々の日本でもうまくやっているようだ。・・・もしかするとあの小僧・・・姫の力を最大限に引き出せるかも知れんな・・・。」


ケルベロスは、前を行く2人の姿が見えなくなるまで静かにたたずんでいた。

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