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黄金比  作者: 空と雲
9/22

【9】 難駄様と雪臣様①

黄金比8コマ目、ちゃんとよんだ。



  YES           NOOOOOO!

   ↓               ↓ 

そのままギャオーっと    うん、全然おっけー☆

下へスクロール!      さっさと、backしやがれ♡



コレさ、まじ。

マジで8コマ目読まねぇとあらすじわかんねーぞ。

backすんなら今のうちだぜ。



いいのか?アイス食いながらちゃちゃっと読んでこねーか?


ふぅ…テメェもしぶとい奴だな。

よし、準備は整った。



お待ちかね、第9コマめ…はじまりはじまりィイイイ!!!



by…浅墓浮受


 

「ユキオミはもともと捨て子だったんだ」

 捨て子……?


「……あれは、酷い嵐の晩だった」

 難駄様は、整った薄い唇をかすかに動かした。視線の先には折り紙をして遊ぶ所長と雪臣ゆきおみ様がいた。

「俺は、ただ放っておけなかった。たったそれだけで」


◆◆◆◆◆◆


「難駄~今日のご飯なんにするー?」

 その日は友達との約束とかそんなんで、既に隆斗(さっきの女子、読みはリュート)は帰ってしまっており、家には深音と俺しかいなかった。

 コイツとは昔っからの馴染みで、学生時代よくつるんでた仲だ。勿論そん時は、俺がこんな大富豪であることは伏せてたんだが、その頃一時的にとはいえども付き合っていた女がばらしやがって、奴にも秘密が知れてしまったというわけ。

 時計の針はもう夕刻をさしていた。

 エプロン姿の深音は、いつもと変わらぬふわふわな笑みを振りまきながら俺に尋ねる。

「チャーハンは昨日だったでしょ~? やっぱイタリアンかなーでもね、フレンチも幅が広いんだよなーうーん……何がいいかなー?」

「あー? 何でもいいけど」

「それじゃ困るって言ってんじゃん。もー。早く決めてよ」

 そう言われれば言われるほど、俺は焦る。まじ正直どうでもよかった。奴の作るメシは何でもウマくて、いつだって満足してる。家庭科の実習のときも、奴のおかげで俺の班は居残りをまぬがれた。シェフになればいいんじゃないか? とふざけ半分で訊いたこともあったが、コイツは「そっか」としか言わなかった。勿論、あの優しい笑みをたたえて。

「早く決めろ」

 このセリフは、俺が割と頻繁に使うものだが、いざ言われる側になるとまた違う。いざ選んでと言われると、あれもこれも……と、選べなくなってしまう。人間ってのは所詮、欲深である。それでいて、それを相手に察してもらおうと必死になる。無言の時間は耐え難いが、分かってもらえるためならそれさえも惜しまない。

 俺って一体何なんだ……。自分で自分が重い。


「お―――い? 難駄?」

いかんいかん。俺はまた自分の世界に閉じ籠もっていたようだ。

きゅうっと目を(つむ)り、深音に振り向く。

「じゃあ…何と何と何があるんだ」

「何故に三択ー!? ……もー、仕方ないなぁ。じゃあ言うけどー」

 不意に真面目な顔で見つめられて、内心どきりとする。

「僕か、僕か……パスタ」

 僕? 僕かって……これはマジなほう? マジで?

「オイオイオイ。殴るぞてめ……」

「じょーだんだって! もーやだなーあはは」

「うっせぇ! ちょっとは自重しろ! 調子に乗るな!!」

「わームキになっちゃってェ。かーわいい☆真っ赤ーあはは」

「……っ」

「もー、決めらんないなら、マジでパスタにするよーいいの?」

「何でもいいっていってんだろ! 最初っからそうしろ!」

「わかったー」

 エプロンをひらひらさせてキッチンに消えた深音に、俺は出かけてくるとだけ伝え、外套を羽織って屋敷を出た。風はまだ、おさまっていなかった。


◆◆◆◆◆


 出かけると言っておきながら、別段行くあてもなかった俺は、アーケードをさまよっていた。こんなに雨風が強い夕暮れでも、立ち並ぶ店の客入りは悪くない方だった。うどん屋の店先の暖簾(のれん)越しに、にぎやかな話し声が響いていた。

「はあ、深音にも手を焼くもんだ。馴染みだからといって、何でも可なはずないだろう。それに、第一俺の家には華がない。俺と、料理を作る深音、それからメイドの隆斗。二人の十九の男と、一人の十七の女。たった三人で暮らしていたのか……今思えばどれだけ寂しい生活をしていたか」

 俺はボソボソと口の中で何か言いながらさらにまっすぐ続く道を歩いていた。

「そうだな、子供なんかがいればぱっとにぎやかになるんだろうな」

 子供なんて、今のひねくれた俺の前にはきっと一生現れることがないだろうけど。


 ビュオォォォォォォォォォォオオオオオッ


 突然……ではないが、冷たい飛沫(しぶき)が顔を殴った。気がついた頃には、手にしていた折り畳み傘が折れそうなくらいに風が猛威を奮っていた。

 空を見上げると、延々と続く鼠色の空に、ドドォーンと何かが轟く音がした。黒い、稲妻だったようだ。

「もう帰るか。パスタは……そうだな、もう茹であがっているだろうし」

 俺は、薄汚れたゴム長靴を家路へと急がせた。数分前に来た道を、ただ戻っているだけなのに、さっきよりも格段に人は減っていた。


改稿しました。第9コマ目はこれで完成です。

続きますよォ♪

by深音

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