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最終話:世界で一番贅沢な『推し活』
海斗がいなくなった後、リビングには再び二人の時間が戻ってきた。
「……ねえ、まりちゃん。さっきの、続き」
彼が、ソファを這うようにして再び私に近づいてくる。
今度はもう、逃げるつもりなんてない。
「恒一くん」
「ん?」
「私、これからもずっと、一番近くで応援させてね。……ファンとしてじゃなくて、あなたの隣にいる一人として」
彼は少しだけ照れたように笑うと、私の額に、愛おしそうに自分の額をコツンと当てた。
「応援じゃなくて、愛して。……俺も、まりちゃんのことを、一生かけて愛し抜くから」
そう言って、彼は私の指先に、誓いのような優しいキスを落とした。
かつて、画面の向こうにいた『推し』。
今は、私の髪に触れ、私の体温を感じ、私を愛おしそうに見つめる『最愛の人』。
境界線を越えた先に待っていたのは、想像していたよりもずっと甘くて、じれったくて、そして最高に幸せな、新しい日常の始まりだった。
(完)




