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推しの献血王子がなぜか家に通ってくるんだけど、距離が近すぎてもう好きになるしかない  作者: はりねずみの肉球
第2章:同じ帰り道の違和感

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パート1:終わらない夜の余韻

あの告白から、どれくらいの時間が経っただろう。

深夜の街灯の下で、私たちは冷えた指先を絡め合いながら、どちらからともなく私の家へと戻ってきた。

リビングの時計は午前四時を回っている。

いつもならとっくに夢の中にいる時間なのに、視界は驚くほど冴え渡り、心臓はまだ心地よい微熱を帯びたままだった。


「……なんか、夢みたいだね。こうして、まりちゃんの隣に座ってるのが」


ソファに並んで座る私たちの間に、もうクッション一枚分の隙間もない。

恒一くんは、私が用意した薄手の毛布を二人で分け合うようにして肩にかけ、ふにゃりと目尻を下げた。

メガネを外した彼の瞳は、少しだけ眠たそうで、それでいて私を離さないという強い熱を孕んでいる。


「私の方こそ。さっきまで、もう二度と会えないかもって絶望してたのに」


「あはは、俺もだよ。タクシーの中で、もし追い返されたらどうしようって、心臓が口から出そうだった」


彼は私の手をそっと持ち上げ、自分の頬に寄せた。

ひんやりとした私の指先に、彼の体温がじわりと伝わってくる。

画面越しに何万回も見たあの整った顔が、今は私の指の感触を確かめるように、ゆっくりと瞳を閉じる。


「……まりちゃんの匂いがする」


「え、なにそれ。柔軟剤の匂いだけでしょ?」


「ううん。なんていうか、安心する匂い。……ねえ、もう一回だけ、名前呼んで?」


「……恒一くん」


「もう一回」


「恒一くん」


「……あー、ダメだ。一生聞いていられる」


彼は私の肩に頭を預け、長い睫毛を震わせた。

じれったいくらいに甘い空気。

『献血王子』という完璧な偶像アイドルを脱ぎ捨てて、ただの寂しがり屋な男の子になった彼が、今、私だけに甘えている。

その事実に、私の胸の奥は、甘いシロップを注ぎ込まれたみたいにトクン、トクンと震えていた。

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