オギノ コウタ様 4列目 A/B 代理店発券
昨日、彼女と電話で喧嘩をしてしまった。
きっかけはいつにも増してくだらないことだった。
朝から「なぜあんなくだらないことに腹を立ててしまったのか?」と後悔が渦巻いている。
これからせっかくの旅行だと言うのに。
待ち合わせの5分前、「怒って来てくれないかもしれない。」なんて不安を余所に、彼女はあまりにも大げさなキャリーケースを引いて現れた。
「えっ……向こうで一泊だよ?」
昨日の謝罪をするつもりだった僕の口は、無意識に疑問とツッコミを投げかけていた。
「……そういうとこ!」
怒っているのか笑っているのか、一瞬その理解に迷うトーンで口撃が返って来る。
いやまて、これは笑っている。強い語気の奥に、確かな笑みを感じた。あぁ、よかった。
僕の油断を見抜いて彼女はそのキャリーケースをコツンと僕の太ももにぶつけた。
ひとしきり笑い合い、ようやく謝罪を口にした僕は彼女のキャリーケースを引き受け、バスターミナルへ向かう。
安堵と期待からか、スーツケースも軽く感じる。我ながらゲンキンなやつだ。おーんせん!おーんせん!
バス乗り場でトランクにキャリーケースを持ち込むと、運転士らしき人が積み込んでくれるという。
そして、軽々とトランクに荷物を滑り込ませながら、「ご旅行ですか?このカバンならお土産いっぱい買えちゃいますね!」と。
彼女は「えへへ」と笑っている。
浮かれているのは僕だけじゃなかったようだ。




