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冤罪  作者: ニベア王子
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(第69回)(後日談)

さて、示談で片付いたので何も心配はいらにないと思うけど、本当に大丈夫かなあ

 今日は久しぶりに警部が職場に訪ねてきた

「設計課長。ご無沙汰しています。ご協力いただいた代議士の犯罪について

一区切りつきましたのでご報告に来ました」

「それはご丁寧に、無事有罪にできましたか」

「いや、それが相手の弁護士にうまく立ち回られ示談で幕となりました。申し訳ありません」「いや謝っていただく必要はありません。自分はシステムが正しく動作したのであれば、それが聞けただけで満足です」「やはり、技術者とはそういうものですか」「そうですね、世直しが私の仕事ではなく、偶然お役に立ったのであれば、それそれはとても嬉しいことです、、、、しかし、代議士はシステムの関与についてはご存じないんですよね」「それは勿論大丈夫です。但し、警察庁には例のシステムによる摘発例として報告してあります。なんせ、親会社には隠し事できないので」「そうですか、致し方ないですね」「おそらく今後警察庁から各警察本部に、システム活用の指示があると思います」「ああ、それで最近警察関係の方から、サポート契約のグレードアップ申し込みが多数来ているのですね」「おお、そうですか。課長のビジネスにつながるのであれば良いことですな」「ありがとうございます。急遽お客様サポート要員を増員すべく、教育を進めています」「なるほど、やはり、誰でもできるものではないでしょうからね」「幸い、親会社が本件開発に協力的なので、呑み込みの早い優秀なメンバを随分貸していただけました」「そりゃこれだけ知名度が上がれば協力したくもなるでしょう。ところで、警察以外では何か面白い展開は有りましたか」

「いや、まだ目立ったものはありません」

「そうですか、企業秘密もあるでしょうし、無理に聞き出すワケにもいきませんね」

「いやいや本当に何もないですって、まあ今回の件は弊社社長には報告してますので社長から親会社幹部には耳打ちしているでしょうね」

「なるほど、親会社社長と言えば経団連の前会長ですねえ。与党とは仲の悪い、何か取引材料にしなければいいですが」

「まあ、そこまで軽率な方だとは思いませんが、労組で問題でも起きていれば、可能性ゼロとは言えないですけどねえ」

「まあ、いま御社のグループは業績順調、春闘も満額越え回答をしていて

組合問題は起きそうもないのでひとまず忘れてよさそうですね」

「よくご存じですね、その業績にもこのシステムが微力ながら貢献してますので、ユーザーの皆様には感謝感謝です」

そういうと警部は引き揚げ時と感じたのか、簡単に挨拶して、県警本部に戻った。

「うーんああわ言ったものの、与党と経団連は犬猿だし、ちょっと心配だな」

などと考えながら移動していると、ポケットのスマホが振動、県警本部長からである「警部、すぐに県警本部に戻ってくれ」「何か事件ですか」

「いや、まだ起きてないけど、例のシステムが先日放免した代議士を、再度アラーム通知した、これで再再犯にでもなったら、先日の示談含め、大騒ぎ確実だ。対処を相談したいので、今いる場所からタクシーで直帰してくれ」「分かりました。幸い大通りに居ますで、すぐに戻ります。言葉通り、3分もしないうちにタクシーがつかまり20分ほどで、県警本部に到着した。すぐに本部長室に向かい、秘書室に呼び出されたことを伝えると、即入室が許可された

「戻りました」

「おお、早かったな。なにか案はあるかな」室内を見回すと刑事部長、警備部長が臨席しており、事の重大さが思われたので、発言も慎重になった「いえ、戻る事を最優先にしましたので、まだ状況もきけておりません」

「そうか、じゃあ私がかいつまんで説明しよう」と、刑事部長。

「1時間ほど前、例のシステムにアラームが有ったと警視庁から連絡が入った。対象は例の代議士、無論事件を起こしたわけではなく、自宅近辺を散歩しているときに近隣交番の防犯カメラがアラームを発した、それを所轄署が警視庁本部に報告し、刑事部長から本部長に連絡があり。30分前に私と警備部長もこの部屋に集合した。そんなところかな」

「ありがとうございます。ということは前回の様に張り付きを立てて、事を起こすのを待つ、でよろしいですか」

「確かにそれしかないんだけど、前回も事を起こすまで一ヶ月、毎日20名体制だったよね。あれが また必要かな」と本部長

「そうですね前回示談で済んだので懲りていない、と想像すると、警察をなめているという見方もできると思います、張り付きチームはもっと少人数で

とにかく見失わないこと最優先で、防犯カメラを使った自動追跡も使えば

張り付きは2名チーム4交代の1日8名体制、後はカメラで追跡する担当1名

こちらは3交代で1日3名体制と指揮本部、自分と刑事課長、警備課長で順番にというのが私の体制案です」刑事部長は思案顔だが本部長は「刑事部長、何とか人員捻出に協力してもらえないな、どうも代議士は所属政党を自主的に離党することになり、やけになってると思うんだ、逆に何か起こす可能性が高いんじゃないかな」

「本部長にそう言われれば、引き受けるしかありません。捜査の進め方は一任いただけると考えてよろしいですか」「勿論、前回みたいに囮捜査とかするなら事前に相談欲しいけど、通常捜査の範囲なら刑事部長の裁量でやってください」「承知しました。警部、悪いけど具体的な進め方はアンタが考えてくれないか」

「分かりました。明日中に案を練って、刑事部長に承諾いただいた後行動を開始します」

さて、厄介なことになったな、まさか再度囮捜査とかできないし、できたとしても都合のいい囮がそうそう見つかるはずもない。

 人間、窮地に追い込まれると不思議と頭が働くようで、あるアイデアが浮かび警部は再び設計課長を訪ねることにした。

一日に2度目の訪問であるが設計課長は驚いていない様子だ。

「設計課長、ひょっとして、私が来ること分かってましたか?」

「いえ、ただ例のシステムが代議士を検知したので、ひょっとしたらと思ったくらいです」

「そうなんですよ、これで再々犯なんてことになったら、示談にしたことが裏目になるとトップから対処を命じられて、ご相談に来た次第です」

「分かりました、相談内容は具体的になってますか」

「いや、まだアイデアレベルでなおかつ捜査方針は上司の承認が必要なので本当にアイデアを聞いてくださいという段階です」

「ふーむ、逆に興味をそそりますねえ、どういうアイデアでしょうか」

「このシステムで検知され、警察がマークしていることを、本人と弁護士に連絡しようと思ってます」

「え、このシステムの介在を認めてしまうのですか」「それで設計課長に迷惑が及ぶ可能性もあると思って、まずは了承いただけるか相談に来ました」

「なるほど趣旨はわかりました。システム介在を通知することで、防犯に繋げる目的ですね」「その通りです。」「私の一存で回答できませんので、今日一杯待って下さい。おそらく親会社含めて確認必要なので、もう少し時間がかかるかもしれません」

「そうですね、内諾だけでもいただきたかったですが、私も上司に許可取る時間が必要ですので、回答時期はお任せします」

「ありがとうございます。結論は直ぐにお知らせします」

やっと警部が腰を上げた。

こうなることは分かっていたので、すぐに事業部長に相談して既に許可はもらっているが「このシステムを捜査に使っていることを公表すれば」という条件付きなので、ちょっと時間稼ぎをしたのです。

さて、県警は公表の条件を飲めるのでしょうか。などと考えていると事業部長から電話

「設計課長さあ、いま県警本部長から公表するという返事貰ったから、警部に教えてあげて」

「ええっ!」

「ごめんごめん、この条件は僕が考えて親会社の承認貰ったから、少しは手伝わなくちゃと思ったんだ。余計なお世話だったかな」

「いえいえ助かりました、早速警部に連絡します」

直ぐに警部に電話「ああ、システムを使う件許可が下りました」

「連絡感謝です、しかし、公表とは課長も思い切った条件を付けてくれましたね」「ああ、申し訳ありません、上司から、ウチのうま味が無いと言われて咄嗟に思い付きで言ったら、思いのほか気に入られて、上司がそちらの本部長に直談判してしまったようで」「なるほど、逆に直談判してくれて良かったですよ。自分から公表が条件です、とは到底説明できませんからね。やっぱり偉くなる人というのは価値観が似てくるんですかねえ」逆に感謝されてしまった。

その上公表は今日16時の定例会見で刑事部長付きの秘書官が対応することまで教えてくれた。警部は公表前に、弁護士と代議士に説明するとのこと。その席への同席を求められたので止む無く15時に弁護士事務所に出向いた。

警部の説明を聞き終えた弁護士は「なるほどご説明ありがとうございました。

16時からの公表内容は、まさか代議士の名前は出て来ませんよねえ」

「勿論です。ただ、システムで検知された対象者について、内偵を始める、という説明をすると思います」

「分かりました。先生、ここまで警察が情報開示していただいたのですから今後どうすればいいか、おわかりですね」

代議士は「いや、全く見当もつかない」

「良いですか、あのシステムはドライブレコーダやスマホにも入っていて

先生が一歩外出して、それらで検知されたら、マスコミの餌食ですよ。

今後しばらく、外出はしないでください」

「ああ、わかりました」「食料品など、必要なものは私の事務所の人間がお届けします。マスコミが取材に来てもインターホン越しの会話だけにしてください」ここまで言って、弁護士は自分の方を向き

「設計課長さん、あのシステムは音声だけで検知する機能もありますか」

「いえ、あれは表情認識なので、音声だけでは何も検出しません」

「それを聞いて安心しました、先生、よろしいですね、マスコミ対応は可能な限り避けて、どうしても対応必要な時は音声だけですよ」

「分かった、胸に刻んでおくよ」

弁護士事務所の帰り道、警部がつぶやいた「いやあ、あのシステムの威力は絶大ですねえ。これで多くの性犯罪が抑止できそうです」

「いやいや、他ならぬ警察組織のご協力有ればこそですよ」

そのころ、弁護士事務所では

「あのシステムが使われていたとは、なるほど前回の逮捕時も、システム検出をもとに内偵を進めていたので、手際よく進んだわけか、囮捜査でごねなくて本当に良かった」「しかし先生、本当に大丈夫ですよね、前の様にお店に行って、というのは無理としても、自宅に呼べる風俗営業もありますから、決して使わないでくださいね」

「も勿論だよ、警察が内定していることが分かっていて自宅に女性を呼ぶほど自分は大胆じゃない」

「そうですね、警察もわざわざ知らせに来たということは、それで防犯しようとしているわけですからね」

やはり依頼人は懲りていなかったか、今後は定期的に顔写真を送ってもらい、自分のスマホでチェックしようと弁護士は決めた

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