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7.惨劇回避…?

最近、私の義兄でありゲーム上での黒幕のキュイ・ノーヴェルは光の聖女であるヒロインから猛アプローチを受けている。

 

更に、何のバグか分からないが、事件が起こらなかったことにより、物語はゲームではありもしないハーレムエンドへと突き進んでいるように思える。

 

現に今、校舎から中庭を除くと、聖女を取り囲む3人の貴公子が見えた。

 

知的で上品だけど恋愛経験がなく、実は人一倍ピュアなセネル・ルーベント。熱血で何事にも真っ直ぐで、頼れるお兄さんキャラ、ロイド・シュバルツ。子犬の様な可愛らしさを備えるも、恋愛経験豊富でSっ気たっぷりのルカ・ノーベルライト。


見た感じだと、全員骨抜き状態、といった方が正しいか。流石主人公。恐るべきである。

 

ゲームでは、黒幕であるキュイが聖女を殺そうとする時に庇うのは一人に限られるので、個々のエンドしか存在しない。

だが、キュイが特に動かないので、システム的にも一人を選ぶ必要がなくなったのか知らないが、こうしてゲームにも存在しなかったハーレムエンドらしきものへと進んでいるという訳だ。


そして、未だに聖女が攻略できていないのが、私の義兄であり、ゲームでは爽やかな王子様の役回りだったキュイ・ノーヴェルである。


聖女も最早キュイを攻略するのに必死だ。


そして、今もそう。


「きゃあ!」


私とキュイが並んで廊下を歩いていると、聖女が足を躓き目の前で派手に転んだ。

これもゲームであったシーンだ。

転んだ聖女にキュイは優しく手を差し伸べる。擦りむいた膝にハンカチを当て、キュイが上目遣いで心配そうに眉を寄せているスチルは、数少ないキュイの平和なスチルだった。


しかし、最近心配になってきているのは、聖女のイベント自体ではない。


「……キュイ?」

「どうしたの、フィアナ」

「えーと、助けないの?」

「助けた方がいい?」


私はこくりと頷く。流石に見逃すのは可哀想だ。

キュイは一瞬困った様に眉を寄せたが、振り返り、声を掛けた。


「大丈夫?」

「あ……はい、キュイ様。でも」

「そうなんだ、なら良かった。今度から気をつけてね。じゃフィアナ、行こうか」


この攻略対象とは思えない淡白さである。

 

今の言葉も台本を読んでいる様な声色で、どうやらキュイは光の聖女に興味がないみたいだった。

ゲーム上では聖女を殺そうとしたとはいえ、実質的に一番聖女を愛し、執着していたのはキュイだったのだ。まあでも思い通りの人形の様な恋人を望んでいたことを考えれば、ちょっと、いやかなり歪んではいたけど。

 

キュイは呆然と床に膝をつく聖女を置いて、さっさとこちらに戻ってきた。

最早心配になって聖女をちらちらと振り返ると、「どうしたの?」と声を掛けられる。


「あ、えーっと、聖女様はいいのかしらって」

「なんで?フィアナは、僕が聖女の所に行って、くっつきながら甲斐甲斐しく手当した方がいいと思ってる?」

「えっと、そういう訳じゃない……と思うわ」

「なら良いよ。きっと聖女なんだから、足の傷ぐらい治療できるだろうし、なんなら聖女の周りの男がどうにかするんじゃない?」


その意見は尤もだ。

だけど、キュイが前を見る目が少し据わっていて、それはゲームでの彼と少し似ている。

なんだか最近、キュイは特に聖女に対して冷めた目をする事が多くなったような……

 

不安な顔をしたからだろうか、キュイはこちらをちらりと見て、自然に私と手を繋いだ。最近のキュイはスキンシップが多くなった。理由を聞いてもはぐらかされるけど、多分親に甘えたことがなかったからその反動がきているのだと思う。

 

でも、不思議と嫌な感じはしなくて。

繋いだ先から温かな熱を感じて、私は知らず知らずのうちに頰を緩めた。


そんな私たちを聖女であるヒロインがどんな目で見ていたかには、気付かずに。


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