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21/33

21.共通点

 

どうして、それを。

疑問は言葉にならなかった。

 

動揺、驚愕、困惑。様々な感情は声にならない代わりに、表情に表れていたらしく、皇太子はそれを見てにこりと笑った。


「当たりかな」

「……ど、どうしてですか」


やっとのことで言葉を出す。皇太子はきょとんと首を傾げた。なぜそんなに狼狽える必要があるのか、と表情が物語っている。


「僕も転生者だからだよ」


――皇太子様が、転生者。


その言葉は噛み砕けば噛み砕くほど、信じ難い衝動に襲われる。目の前で悠然と微笑む皇太子は、余裕がある。上に立つものとしての相応しい風格と、人間離れした容姿を備える皇太子は、とても同じ転生者とは思えない。


「信じられないって顔してるね」

「いえ……そんな、事……あります」

「あはは、素直だね」

 

皇太子は楽しそうに笑った。肩を揺らすたびに、艶やかな金髪が揺れた。


「意外と慣れるものだよ。前世がどうあれ、今世の僕は、エルドレッド・サリヴァンであり、この国の皇太子だ。君の言葉遣いだって、前世に比べたらきっと何倍も丁寧だろう?」

「そう、ですね」


そう言われると、同意せざるを得ない。

だが貴族の生活に慣れなかった私に比べ、皇太子という座に天職のように収まるこの人は、きっと前世も似たような境遇だったのではと思ってしまう。


「でも、良かった。君からみて僕は王族らしいってことだもんね」

「それはもう、全く違和感がありませんでした。言われても、疑ってしまうくらいですから」

「信じられないなら、前世の言葉遣いで話してもいいよ?僕は転生者だから、普通の王族では思いつかない言葉遣いだって出来るし。例えば――」

「いえ、大丈夫です。どうかそのままでいて下さい……」

「そう?ならやめておくよ」


猛烈に嫌な予感がして、私は慌てて止めた。

正しく、美しく洗練された『皇太子様』のイメージがガラガラと音を立てて崩れる予感が。


「で、君を転生者だと確信した理由は、ここがゲームの世界だって分かってるからなんだ」


言葉遣いで転生者の証明をするより、ゲームの世界だと分かっているそれこそが、一番の証拠なのでは。言葉遣いに関するくだりはなんだったのか。

突っ込みかけた言葉を、すんでのところで飲み込む。この人、結構適当だ。


「僕には前世、4人ほど姉がいたから。姉は皆、こぞってそのゲームにハマっていたらしくてね。それで、よくその内容について聞かされてたんだ」


皇太子は苦笑した。4人の姉、はスルーすることにする。


「だから、大方の内容は知ってるんだ。聖女とか、魔法とか、攻略対象とかね。大まかなストーリーも頭に入ってる。だから、ストーリーと何ら関係ない皇太子に生まれてからも、隣国の様子は注視していたんだよね」

「もしかして、そこでストーリー通りになっていない事に気づいた、と……」

「その通り」


皇太子は微笑み、足を組んだ。絵になるような優雅な仕草だ。


「闇魔法の使い手のキュイ・ノーヴェルって、確かどうやっても死刑だったよね。でも不思議なことに、フィアナ・ノーヴェルという『妹』と駆け落ちの様に行方を眩ました。そんな芸当、ある程度ストーリーを知ってる人間じゃないと出来ないんじゃないかって思ってね」


恐ろしいほどの洞察力だ。

皇太子は一呼吸置き、言った。


「だから、君は僕にとって特別な存在なんだよ」


なるほど、特別は同じ転生者であるという意味か。

だけど、キュイには別の意味で捉えられたに違いない。……頭が痛い。


「だから、なるべく君たち2人のことは全面的に支援したいと思っている。相談にも乗るし、ある程度であれば協力しよう」


――だから、闇魔法について調べさせておくれ。


美しいサファイアが一層輝く。この皇太子、闇魔法への調べる意欲が段違いだ。情報収集能力や、それを処理する能力も高い。

 

私は一つの確証を得た。


「皇太子様はもしかして、前世、研究者とかだったりします?」


皇太子は否定も肯定もせず、悠然と微笑んだ。


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