第1話 追放された聖女
「殿下!一体どういう事ですか!」
セルニグル王国の王都にある大神殿の大聖堂にて、細身の丸眼鏡をかけた褐色の肌の聖女・ローレル・フェルトンは思わず声を上げた
彼女の眼鏡越しの金色の瞳には、婚約者のセルニグル王国の王太子デューク・ヴィノグラードが映る
「言葉の通りだ。俺はお前との婚約を破棄し、レイラと婚約を結び直す」
そう言って横にいた黒髪のシスター、レイラ・アッカーソンを抱き寄せる
「ですから何故!?」
「お前よりもレイラの方が聖女としての素質があるからだ。お前が力を偽り、不正を行い聖女になった事は既に暴かれている!」
「そんな………」
デュークにチラリと視線を向けると、青い目を細め彼女を見つめていた
(確かにレイラにも神力はある………でもそれはこの国全体を守れるものでは…………)
今後の王国の行く末が気にかかり、ローレルは不安の眼差しを2人に向けた
――――レイラの方が相応しいなどと一体誰がそんな事を
そんな彼女の視線にデュークが気づくと、先程とは打って変わって目を鋭くさせた
「そもそも、本音を言うとお前の事が気に食わなかったんだ。暗く面白みの無い所や、その浅黒く透明感の無い肌も全て。隣に居るなど恥でしかない 」
金髪の頭を掻きながら、忌々しそうに吐き捨てられたローレルは唇を噛みしめる
性格はまだしも、生まれつきの肌の色を貶されるのは納得できないでいた
それに12歳で聖女に選ばれて以来、自身の身も顧みずこの国の為に祈りを捧げ、病や怪我に苦しむ人々を救ってきた彼女にとって屈辱的な言葉だった
するとレイラがクスリと笑う
「ごめんなさいねぇローレルさん。恨むのなら、貴女の能力の無さを恨みなさいな」
茶髪をフワリとなびかせ、勝ち誇った様にレイラはデュークにしなだれかかる
ローレルはそんな彼女を、半ば呆れたように見つめていた
(もっともらしい理由を並べているけど、一番の理由は彼女と結婚したいからなんでしょうね)
レイラは侯爵家アッカーソンの娘だ
アッカーソン家は神力のある者が生まれやすく、代々神職を担っていた
レイラもその1人だったのだが、彼女は神に祈りを捧げるよりも、男達とおしゃべりをする方が楽しそうな印象であった
何処でデュークとレイラが親密になったかは定かではないが―――気が付く頃には彼ら二人きりで行動する事が多くなっていた
そんな事が頭を駆け抜けると、鋭い声が響いた
「まがい物の聖女など、この国には要らない!お前は聖女と偽った罪で辺境送りとする!」
デュークがそう叫び合図を出すと、礼拝堂の扉が乱暴に開かれ、数人、人が入る
この国の憲兵だ
ローレルはそれに驚いていると、あっという間に取り押さえられた
「その者を直ちに『死の森』に送れ」
そう命じると、憲兵達はローレルを抑えながら外へ向かう
「お待ちください殿下!私は――――!」
ローレルは弁明の申し開きもさせてもらえぬまま、連行されて行くのだった




